■2016オリジナルコンサート総評

表現を獲得しつつある
35団体により40曲が発表された。類型的な言葉で表現が湧いてこないような作品が少なくなり、創作を自分の表現の手段として獲得しつつあると感じる演奏会であった。
しかし、“もうちょっと”という曲が多く、出来上がってから更に吟味する粘りが欲しい。出てきた詩に全部曲をつけなければならないのか、詩で全部書き切ったら、曲の役割、聴衆の役割はどうなるのか。創作とは何かを考えてより良い高みを目指したい。
詩を短くする、練ることが大事だと感じた中で、「いのち育む大地―十勝野の明日へ―」、「こんなに悲しいときは」、「かぜのでんわ」は詩が練られており、曲も成功している。会場を沸かせた「わたしの声」だが、“わたしの声がイヤ”と続けてきて最後に“好き”となる“まとめ”は成功しているか、議論したら面白い。「大臣様の流行語2016」は昨年に引き続き風刺と表現の見事さに感心。シリーズ化すれば“平成の亜蝉坊”との期待も。
「吟詠“雨ニモマケズ”」は詩吟とピアノの融合といううたごえならではのアイディア。演奏が上手いと曲の良さを引き上げるという側面もある。「シュプレヒコール(沖縄レクイエム)」はだれもがそこまでうたえるとは限らない。「いのち いとおしいもの」には作曲者の進化を感じた。「めざせ100点」、「Minato〜私のふるさと〜」、「心のマフラー」は初参加と考えられるが、着想や曲想の新しさに今後も期待が持てる。
今年は、沖縄うたごえ合宿などの取り組みもあり、沖縄や戦争をテーマとした曲が多かった。全国創作講習会、愛知、京都、岡山、北海道、教育など集団創作の積み重ねが反映していると感じたが、働く職場から出てくる歌が少なかった。働く人の強さに目を向けた作品を望みたい。
「あきらめないで」は個人の創作であるが、熊本のうたごえとして発表された。地震が続く困難な状況の中、“前を向いて あわてずゆっくり 一歩ずつ”と歌い上げた曲が支え合いの力になっているとすれば嬉しい。

 木村 泉

■講評委員
木村 泉(山形センター合唱団)  
石黒真知子(詩人)
木下そんき(作曲家)
武義和(作曲家) 
山本忠生(京都ひまわり合唱団)

■講評委員の皆さんによる推薦曲
3人の講評委員が推薦した曲
「こんなに悲しいときには」「かぜのでんわ」
「シュプレヒコール(沖縄レクイエム)」

2人の講評委員が推薦した曲
「小さなこの町で」
「いのち育む大地―十勝野の明日へ―」
「わたしの声」
「大臣様の流行語2016」

1人の講評委員が推薦した曲
「扉の向こうには」
「めざせ100点」
「クワンジュよ、5月の風よ」
「いのち いとおしいもの」
「吟詠“雨ニモマケズ”」
「紫陽花」
「私は日本語学校の生徒です」
「命の海 命の森 命の山々」
「響かせよう海と空の歌」
「記憶されるべきもの」
「あきらめないで」