■2018オリジナルコンサート総評
テーマに迫る積極性まず評価
(木下そんき)
創作発表会の第一回は1956 年15 団体。63年後の今年、各地の創作講習会の成功とあいまって,北海道、東北、愛知、東京、関西とともに教員、鉄道関係、中国、北信などの作品.37 曲が演奏された。
永い間の偏見を打ち破った長野・ハンセン氏病裁判の勝利をうたう「太陽は輝いた」北海道「大間原発大間違い」カジノ賭博場反対の「アイアールがやってくる?!」東京の「都心低空飛行反対ソング・品川を守ろう」など身近な暮らしの中に見過ごせない問題をとりあげる積極性をまずは評価したい。
うたごえ運動は本来、ある程度の集団活動を前提としているので作品のテーマも職場や地域のみんなの願いや要求に根ざす事が求められたしかし、近年の一人の弾き語りや少人数での演奏活動は創作も個人の感性の範囲で完結することも多くなり(それ自身は、悪い事ではないが)よほどの幸運に恵まれない限り、着想されたテーマが必要な深さと普遍性をもって実る事はない。
集団創作の方法は、個人の発想をより多くの感性で深める事からその本質を豊かにできる大事な取り組みなのだが、反面、饒舌に過ぎたり曲としてまとまりを欠く事もある。
今年の作品には前出の他にもいい着眼をもちながら、このような未消化な部分を残すものも多く、歌いながら作品としての力、事柄の本質にまで迫る伝播力や分析にもうひとつの努力が望まれる。
日程、遠方会場の関係か演奏は概して小規模で聴衆も少なかったが、関係委員の奮闘がうれしかった。
以下は講評委員の支持を集めたもの。
「あなたがいたから」(高畠 賢 詩曲)
「19才の叔父・短歌、岡崎泰行による」(服部泰詞、井野口敏子曲)
「いのちの海よ!永遠に」(鬼崎良弘詞、たかだりゅうじ曲)
「父の置土産」(田畑つる子詞、たかだりゅうじ曲)
他に3票「雨の日に」、2票7曲、1票8曲。
(石黒真知子)
今年も講評を拝命、沢山の作品に出会う機会をいただきました、ありがとうございました。みなさんの創作作品は回を重ねるごとにレベルアップされ、大変勉強になります。
今回は沖縄、やんばるの森をテーマにした作品がいくつかありました。森に住む動物、植物を通して平和を訴える歌詞はおのずから類似してきます。オリジナリティーをいかに生み出すか工夫が求められますね。視点を少し変えることも大切です。やんばるの森に伝わる昔話、神話のようなものにヒントがあるかもしれません。切り口を変えることは、他のテーマでも同様です。慣れた手法を一度手放して違う手法に挑戦することが私たちの創作の間口を広げることにつながります。
尚、愛知の創作は9月に講評したものを流用させていただきました。
■講評委員(敬称略、五十音順)
石黒真知子(詩人)
大西進(作曲家)
木下そんき(作曲家)
武義和(作曲家)
増田康記(雑花塾)