■2017オリジナルコンサート総評

伝わる表現求めて

(木村 泉)
41団体により44曲が発表された。総じて、年々作品が良くなってきている。
テーマとしては、沖縄、中でも“やんばる”を歌ったものが目立った。日本のうたごえ第3次沖縄行動をはじめ、辺野古へ新基地を造らせないとの関心が高まる中、やんばるの命を守れと歌われた。一方で、原発を直接テーマにした曲はなかった。創られていないのでは無く県の発表会で選出される曲が無かったということだとしても、力を入れて行きたいテーマだ。
昨年は職場から出てくる歌が少ないと書いた。今年は、国鉄、郵便などの職場の他に、町のクリーニング屋さんを歌った曲が全国創作講習会で創られて発表された。この曲も含め全国創作講習会で創られた曲は5曲演奏された。4月に愛知県で開催された後も各地で歌われ県や産別の予選を通過するまでに歌い継がれていることになる。地域的には、九州からの参加が無かった。開催日が金曜日となり参加できなかった団体もあったようで残念。平日開催の影響か、少人数の演奏が目立ったが、1人や2人の演奏でも聴かせてくれる曲が多かったのも今までにはない特徴。時代を風刺する視点でコミカルな作品に果敢に挑戦した曲もあった。だが、最近の政治家は想定を超えるスピードで堕落して行く。ソングブックへの原稿提出からコンサートまで約一カ月、歌詞を時点修正し、しかも暗譜で“今”を歌った北海道の執念も素晴らしい。
作曲者の中には専門家も、それに近い常連の方もいるが、新しい方、若い方の中に才能や頑張りを感じる方もいて、今後が楽しみ。“いい詩”に出会うと曲が詩に振り回され易い。いい詩の中に曲としての主張をどう織り込んで行くか、こうした専門家や新進気鋭の方々の作品から学びたい。
詩が長くはないか。言いたいことが盛り込まれ過ぎていないか。出来た詩を、そこから削って行く作業は欠かせない。伝えたいことを伝えるのにふさわしい表現になっているのか。コンサートを終えた後も高め合って行きたい。

(石黒真知子)
今年も講評を拝命、沢山の作品に出会う機会をいただきました、ありがとうございました。みなさんの創作作品は回を重ねるごとにレベルアップされ、大変勉強になります。
今回は沖縄、やんばるの森をテーマにした作品がいくつかありました。森に住む動物、植物を通して平和を訴える歌詞はおのずから類似してきます。オリジナリティーをいかに生み出すか工夫が求められますね。視点を少し変えることも大切です。やんばるの森に伝わる昔話、神話のようなものにヒントがあるかもしれません。切り口を変えることは、他のテーマでも同様です。慣れた手法を一度手放して違う手法に挑戦することが私たちの創作の間口を広げることにつながります。
尚、愛知の創作は9月に講評したものを流用させていただきました。                             


■講評委員(敬称略)
木村 泉(山形センター合唱団)委員長
石黒真知子(詩人)
木下そんき(作曲家)
武 義和(作曲家
長森かおる(作曲家