60周年記念2008年 日本のうたごえ祭典in東京
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はたらくもののステージへの期待
なぜ、いま、「人間の歌」なのか

二見伸吾(シンガーソング・チューター)

●秋葉原、派遣社員、ネットカフェ難民… 

 今年六月、秋葉原で無差別殺傷事件が起きました。無関係の人をトラックでひき殺し、ナイフで刺し殺す…。異常な犯罪です。犯人についての生い立ちや性格、ナイフ、携帯サイトなどが問題として取り上げられていますが、この事件を労働問題として捉える必要があるのではないでしょうか。

  犯人の青年は、トヨタの子会社である関東自動車で働く派遣労働者でした。「六月いっぱいまで」といったんクビを通告され、ひとまずそれは延期されたようですが、「別に俺が必要なんじゃなくて、新しい人がいないから、とりあえず延期なんだって」と青年はみずからの携帯サイトにかき込んでいます。

  派遣、パート、アルバイトなど非正規で働く労働者は全体の三分の一を占めるようになっています。青年層ではほぼ半分です。人間を人間としてではなく、「モノ」として粗末に扱うことによって大企業がボロ儲けするという構造がつくられたことがこの事件の大きな背景になっているのです。

  大変なのは非正規労働者だけではありません。「正規」で働く労働者、正社員も「勝ち組」などでは決してない。「成果主義」が広がり、競争があおられ、職場はギスギスし、心を病む人が増えています。

  「生産者米価はペットボトルの水より安い」ということが話題になりましたが、農民の一日あたりの稲作労賃は三千円以下です。自営業者も「商品が売れない」「下請単価が安すぎて、仕事をするほど損をする」と悲鳴をあげています。お年寄りは、後期高齢者医療制度によって年金から保険料を天引きされ、新たな負担に苦しめられています。

● 「人間の歌」が創られてから二〇年後の日本社会

 このようなかたちで、「人間として『生きるな』」というメッセージを、日本の政治は国民に発し続けてきたのです。年間自殺者の昨年の統計が最近、発表されました。三万三〇九三人(警察庁発表)です。三万人を超すようになって一〇年、その合計は三二万五〇六五人にものぼります。

  東京では、ほぼ毎日といっていいくらい電車での人身事故(飛び込み自殺)が起きています。あまりに「日常的」になっているからでしょうか、ニュースにすらなりません。おぞましいことです。

  これが、「人間の歌」が創られてから二〇年後の日本社会のすがたであり、創られたときよりも、さらにこの歌が求められ、届けられければならない理由だと思います。

●「生きさせろ」という叫びと「人間の歌」

 しかし、それだけではありません。今まで述べてきたような状況があるからこそ、人間らしく生き、働くことを求める運動が、新しい段階、飛躍のときを迎えている。そういう段階の中で、「人間の歌」が 運動のなかで 歌われ、広がってゆくことが求められているのです。

  変化はすでに始まっています。青年たちが労働組合に飛び込み始めています。首都圏青年ユニオンが有名ですが、それ以外にも個人加盟労組(ユニオン)が地域や単産につくられ、非正規労働者の組織化と運動が前進しているのです。

  「反貧困」の運動も昨年あたりから盛りあがりをみせていますね。昨年は「もうガマンできない ! 広がる貧困−−人間らしい生活と労働の保障を求める」東京集会 ( 三 月)や、「まともに生活できる仕事を」「人間らしく働きたい」を掲げた全国青年大集会 ( 五 月)が開催されました。一二月には「反貧困たすけあいネットワーク」 ( 一二 月)が結成され、今年三月に「反貧困フェスタ」が開かれました。このフェスタには全労連や連合といった労働組合の全国組織をはじめ、多種多様な団体が参加しています。 

  「反貧困」「新しい労働・生存運動」の若きリーダーの一人、雨宮処凛さんは、『生きさせろ!難民化する若者たち』(太田出版)を昨年出版しました。「生きさせろ!」というタイトルはだれに向けられたものなのか、という問いに雨宮さんは、次のように答えています。

  「国でしょう。企業でしょう。あと、バッシングをするいわゆる大人。あと、フリーターの娘・息子を持つ親、その周りの友達とか。正社員になっちゃったら、フリーターをバッシングする友達とかいるじゃないですか。憎たらしい、何かどうしようもないやつが」。ここまでは、まあ想像のつく普通の答えです。しかし、そのあとがすごい。

  「でもいま、生きること自体がすごい難しいというか、条件付きというか、何らかの基準を満たしていないと生きられない社会ですよね。だから、すべての人ですね。全部。自殺しようと思っている人に対しても言っているかも、『おまえは死にたいけど、おまえの肉体を生きさせろ』みたいな。『生きてちゃ行けない』と思わされている人があまりにも多いけど、でも、全然そんなことはないと。私なりいろいろな人が、『とにかくあなたの生存はもう一〇〇%肯定します』と。無条件の生存肯定としての『生きさせろ』」なのだというのです(『雨宮処凛の「オールニートニッポン」』祥伝社新書)。

  「生きさせろ!」という言葉に込められた思い、「無条件の生存肯定」と、「生きて生きて生き抜いて/生きて生きて生きとおして」と呼びかける「人間の歌」のメッセージは同じ。それはまた、生命と自由を享受(エンジョイ)し、幸福を追い求めること(第一三条)や、健康で文化的な暮らし(第二五条)をすることは基本的人権なのだ、という日本国憲法の考え方とまっすぐに結びついています。

●「人間の歌」の可能性 私の経験から

 
私は「労働者教育」に携わっています。労働組合に呼ばれて、講演をする機会も少なくありません。講演の始めと終わりに必ず歌っているので、シンガーソングチューター(歌う講師)と自称しています。締めくくりの歌は、「人間の歌」のことがほとんどです。

  千葉の自治体の労働組合では、講演終了後、役員の人が駆け寄ってきて、「ぜひこの歌を自分の組合の集会でうたいたい。自分の組合にもギターの弾けるのがいる。譜面が欲しい」と言われました。もちろん、「メーデー歌集に載ってるので、それを買ってください」と答えましたよ(笑)。

  神奈川の建設労働者の組合でのこと。司会者が「質問のある方はどうぞ」と呼びかけると、講演が終わる頃に現場からかけつけてくれた労働者が、「講演は全然聞けなかったけど、今の歌に感動した。CDを出していないのか」と言ってくれました。「僕は出してないけど、広島国鉄ナッパーズのCDが音楽センターというところから出てますよ」と答えると「それはどこで売っているのか」「CDのタイトルは…」とすごい反応。

  講演の感想文をまとめたものをもらうこともよくありますが、そのなかでも「人間の歌がよかった」というのがけっこうあります。講義の中身については書いてなかったりして、講師としては喜んでいいのか悲しむべきなのか…。 

●労働組合運動の原点

 
私は「新しい労働・生存運動」にも期待を寄せていますが、長年にわたって人間らしく生き、働くためにがんばってきた労働組合、組合員にも大いに期待しています。弱点をあげつらい「今までの労働組合はもうだめだ」なんてバッサリ切り捨ててしまう人がいますが、私はそうは考えていません。

  「人間の歌」のなかに労働組合の原点、「他人を思いやり、支えあうこと」、人間らしく生き、働くことを求め、ともに歩み、ともにうたい、ともにたたかうことが歌われています。

 「職場の仲間を信じているか 死を択んだ組合員(なかま)の思いをこころにあたためてたたかっているか」という「人間の歌」の問いかけを真摯に受けとめ、「痛み分けあい 楽しさ分かち 歩いてゆきたい 人間らしく」というねがいに共感を寄せる組合員(なかま)に私はたくさん会いました。

●「人間の歌」の出前を

 だから、「人間の歌」は、新しい運動のなかでも、従来から頑張ってきた運動のなかでも広がる可能性があります。さらにいえば、新しい運動と長年にわたって続けられてきた運動をつないでいく役割も果たすかも…。うたごえ運動に大いに期待したい。

  最近は労働組合から「歌いに来てくれ」と呼ばれることが減っているのではないでしょうか。それならば、うたごえの方から働きかけてみるというのはどうでしょう。職場、労働現場におしかけ、「人間の歌」「ありがとう」などを「出前」する。この「出前」の数がどのくらいになるのかが、「はたらくもののステージ」成功の最大のカギを握っていると私は考えているのです。

  ですから、もっと厚かましく、労働組合に働きかけてほしい。「『人間の歌』」という歌がある。組合の集まりがあるときに歌わせてほしい」と。でっかい集会でなくたっていい。むしろ小さな集まりで歌ってほしいですね。必ず、労働者の心に届き、「人間の歌」とうたごえ運動への支持と共感が広がります。

  今年の祭典は東京ですよね。首都圏にはたくさんの労働組合があります。しかし、職場にうたごえサークルがあるところばかりではないでしょう。いままで行ったことない組合、最近、とんとごぶさたの組合、どんどん働きかけて「人間の歌」ブームをつくりだして下さい。祭典成功の力になるし、飛躍のときを迎えている日本の労働組合運動にも大きな力を与えることになるでしょう。(おしまい)





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