【講評委員】
F :藤村記一郎(音楽家)
H :星 久美子(合唱指揮者)
K :木下そんき(作曲家)
Sa:斉藤 範雄(詩人)
Su:鈴木 太郎(詩人)
T :武 義和(作曲家)
N:内木 宏治(元校長)

★創造の翼やまがた(山形)

骨髄バンクを支援するやまがたの会+風とたんぽぽ(山形)           ピアノ/武義和
笑顔になる」 (作詞・作曲/骨髄バンクを支援するやまがたの会 鈴木裕子 編曲/武義和)

F:各すべての小節が休符で始まり同じようなリズムで最後まで歌われるので楽譜上はやや単調ま印象ですが、人と人をつなぐいのちのいとおしさにあふれた歌が、素敵な演奏によりさらに暖かくしみじみと伝わってきます。病とたたかうすべての人とその家族の皆さんの歌ですね。
H:ハミングと二重唱がとても美しいです。ふんわりとしたやさしさに包まれました。曲の終わり方…さりげなく終わって利き手の想像力を豊にしたいのですね。
K:明るい軽さ、が素敵な曲です。ただ、この歌に性格からして広く仲間達にうたってもらう事を考えると、いきなり下のG音がかなり出てくるのは用心したい。(音域を2度上げた方がいいかも?)あとは、思い切り声の出せる長い音も1ヶ所配慮してくれると100点。
Sa:詩も曲も心に染みてくる。素敵です。詩について
 ・眺めたくなる   → 感じていたい
               眺めていたい
   二つの間に微妙な主体の違いがあるのでご検討を
・1の最後の行「生きているから感じる 泣いて 怒って ほら笑顔」。2、3の「あなたの分まで ほら笑顔」、前の詩行を受け止める行なのでもう少しご検討を。「ほら笑顔」で終わる方法にも少しご検討を。
Su:歌の導入部分、女性のソロではじまったのが、とてもきれいな声でよかったです。そてて、男性とのハーモニーになって、それはそれで、またよかったです。歌詞もきれいにまとめれれいたとおもいました。「笑顔」のもつイメージのふくらみ、自然にひろがっている感じを受け取りました。新しい発想ということではないのですが、「生きているから感じる 泣いて怒って ほら笑顔」と、歌われると、気持ちよくなりました。曲も歌詞の世界を生かしていたと思います。
T:自作なので省略
N:語りを大切にした詞とメロディーがたいへんマッチしている。デュエットもバランスよく、やわらかい表情のうたの表現が印象的です。


アクエリアス+山形センター合唱団(山形)                   ピアノ/武義和
少しずつ」 (作詞/大野悦子 補作・作曲/滝口浩直 編曲/山形太郎) 

F:創作講習会の取り組みが実を結んだことに拍手。被災したふるさとを追われ、厳しい避難生活をされている人たちを優しく暖かく受け入れる人たち、暖かなふれあいの時間の流れを感じる曲でした。そんな人たちの愛唱歌になれば、と思います。 
H:最初の部分があまり聞こえず残念でした。詞)はどれでしょう?整然とまとまっていますが、もう少しメリハリがあると曲全体が生き生きと輝くでしょう。一番大切に歌いたい言葉(歌詞)はどれでしょう?
K:詞も曲もまとまりもよく,すてきな雰囲気。その味は一応、いいとして、率直にいうと 出だしのメロディはBbの音をはずせば、有名な「ひろしまから」の歌におなじ。詞も結局、雰囲気しかない?たとえば、このタイトルのあいまいさ!なんとなくわかってもらうのがいまの流行りだとしても…。せめて「笑顔よよみがえって」などのタイトルにしたい気もするが…。やはり、いいたいことを確かめ、につめながらとくにタイトルには工夫もしてほしい。
Sa:詩の言葉が私の心にとどかず曲に合わせて次々と流れていってしまします。1行1行が何か象徴しているのですが、広い言葉のイメージと広い言葉のイメージの繋がりなので、聞いている方が心に描ききれないのです。詞の言葉の一つ一つ、1行1行を構成、流れetc、ご検討くださるとさらに良くなっていくと思います。
Su:男性のソロがいい声でした。やさしい雰囲気がまわりをつつみこんでいく感じでした。作詞もうまい展開をみせていました。「少しずつ 少しずつ」のリフレーンをもつことで、次から次へとイメージが広がったかんじがしました。「今を生きる 色とりどりの朝」などに新鮮さを覚えました。「忘れないで笑顔」とというよびかけもまた、大切なことだと思いました。
T:自作なので省略
N:詞と旋律が自然で、心に染みてくるものがある。Soroとchorusとのバランスもよく心に和むものがある。


小国ラララ合唱団+作業所まんまる(山形)                  ピアノ/武義和
君の笑顔に会いたくて〜作業所まんまるの歌〜」 (作詞/横山とよ子 作曲・編曲/武義和)

F:まんまる作業所だけでなくどんなところでもまんまるな笑顔を生み出す仲間たちの応援歌として学校、地域、幅広く歌ってほしい曲。3つの部分の構成がまとまりよくさわやかでおしゃれな曲でした。
H:作業所の愛唱歌でしょうか。oラララが印象的です。4部の和音、響きは綺麗です。「○あめ○あがり」はもう少し深い響きで、「えがお」のえは上からポンと入ると明るくなります。
K:良い着眼の生かした詞、だが少し切り詰めた方がいいかも?曲も、実用的にはもう少し短い方がよさそう。
Sa:「きみの笑顔に会いたくて」の@をもう一度見直してみてください。私の勝手なイメージですが、一応書いてみました。
きみの笑顔に会いたくて
ラララ青い空 ラララ白い雲     最初の方にもってくると
きみの笑顔に会いたくて         「きみの笑顔に会いたくて」が僕にはもっと心に響いてくるのですが。
私の心はいつもまんまる       
とても素敵な曲でしたが、少し物足りなかったおんでなぜか考えてみたのです。悪しからず。
Su:リズム感があり、力強いうたいかたが印象的でした。作曲のよさだと思いますが、ピアノの演がまたよかった。歌い手のほうが負けているくらいに感じられました。「ラララ青い空 ラララ白い雲」のリフレインは、予想の範囲内で新鮮味にとぼしい感じがしました。「私の心は いつもまんまる」という表現はすてきだと思いました。「青い空、白い雲」も違った世界の表現がほしいところでした。
T:自作なので省略
N:弾けるようなリズムのメロディーとpianoに乗って明るい言葉からちりばめられている曲です。所歌としても最適ですね。シンプルで明るい発声が印象的なchorusです。


かとうまさよ(保育)                                ピアノ/小林康浩
「精一杯のやさしさで」 (作詞/かとうまさよ 作曲/小林康浩)

F:キュートなラブソングです。お孫さんとのデュエットで一層キュートさが増します。
H:お孫さんとのデュエット、とても楽しそうでした。言葉に合う音色、表現に好感を持ちました。
K:幸せなたのしいうた。軽くてポップス系のノリのよさと、どこかで聞いたような感も…。伴奏ピアノは大きすぎでないの?
Sa:作詞者の視点の優しさが伝わっています。私の心が気になったところ
1の2行目  幸せが始まっていく→こんなにも言い切って幸せすぎるのでは
1、2とも、1連目2連目を受ける詞行として気になったところ
         ワハハ〜〜って笑いながら
         生きてゆければいいね
         あなたを愛する大切な誰かと
                    ↓
  私の視点が朗らかに伝わってくるのに、ここで「誰か」としないで、私の視点(こころ)を表現したいと思うのですが。
Su:孫といっしょに登場されました。かれんちゃん、どきどきしていますか、と聞かれて、していません、とこたえていました。ほほえましい光景でした。「心ワクワクするような」「涙ポロポロ流れるときも」など、素直な気持ちで書かれた歌詞だと思いました。ここでも「ワハハ ワハハって笑いながら」というフレーズに出あいました。「笑い」「笑顔」が大切な時代になっていることの証のように思えました。
T:私もいつかこんなふうに孫と(いませんが)歌えたらいいなあーと思いながら、楽しく聞かせいただきました。ことばの作り方がいつもながらいいですね。ワハハ、やワクワクがメロディと溶け合っています。
N:温かい心情が詞にあふれていて素敵です。メロディーは出だしのスタッカートが印象的でとても説得力がある。2人の歌、とても明るくて素敵でした。


コンブリオ(宮城)                          ピアノ/石垣就子
今 わたしは」 (作詞・作曲/石垣就子) 

F:悩みつつ必死に生きようとする姿が、飾らずそのままうたわれていますね。ただ、詩を読んで語りながら始まりのメロディをつけようとすると、今のような滑らかに歌うような出だしではなく、もっと言葉を生かした形になるのではないか、と思うのです。転調した部分の「それでも夢とつながり求めて」というところ、「つながりもとめて」が下がってしまうので、もう少し感情が込められるよう、メロディの流れを考えると引き締まってくると思います。
H:今の状況が良く表現されています。短調の部分は少し深い発声、くっきりした発音で、メリハリをつけましょう。最後の「出会い」からは明るく芯のある音色、音量でしっかり締めくくると曲全体がまとまるように感じます。
K:いいたいこと、感じている事はとても共感する。隅々に実感がこもっていて良いと、思う。反面、やや、そこに籠ってしまうせまさ、も感じる。“何回言っても言いたりない思い”である事はわかるが、小さな事から想いをつなぎ そこからていねいに思いを羽ばたかせ拡げるのが(理屈では、もうとどかないのだ!)歌の仕事だ。これは、良く観察し、作り手の感覚をみがき、着眼の自由さに大胆に架けることが大事だろう。この詩で描いた思い出は今の半分位でいいのではないか?三番ではしょった事をもっと別の視点から自信をもって問いかけてほしい。おそらくまずは、多くの人との会話や先人にまなぶこと…かな。
Sa:被災者の心がよく伝わってきました。
Su:石巻の女性たちの歌、きれいにうたっていましたが、もっとパンチ力があってもいいのでないかと思いました。ピアノ演奏も作曲者がされていたので、とてもいいと思いました。「出あい大切に」という主題が明確にあって、「今こうして生きる」という姿勢は大切なものです。「お寿司さんだったはずのこの場所」などの情景描写も大切なことです。ここでは「お寿司さんがあった場所」くらいにまとめたほうがいいかなと思いました。
T:石垣さんのこころの中から生まれた珠玉のうたですね。「たしかお寿司屋さん」で始まる詩の入り方もいいなと思いました。なってとか、しまったなどの「っ」の処理の仕方は、私もいつも悩むところですが、今後の課題かと思います。全体の構成ですが、マイナー部分が終わるとあっけなく終わる感じがするので、このマイナーの位置をもう一度考えてみるのもいいかもしれません。できればこの部分の記譜ですが、♭4つにしたほうが良いか。
N:ふるさとに寄せる深い想いが詞から伝わってくる。住んでいた所の固有名詞なども少し言葉にあってもよいかな。うたはdnrとmollをうまく対比させて印象的でした。


佐々木伸介(宮城)                         ピアノ/小林康浩
わたしにも できること」 (作詞・作曲/佐々木伸介) 

F:言葉を大切にしたいところで、同じ音を続けてしまい、言葉に乗せる感情のニュアンスがうまく出せていないのが残念です。わたしにもできること、というタイトルになっているメロディ「わたしにも(↓)」と「も」が下がったほうが。ほかにもイントネーションをもう少し大事にすることで伝わりやすくなるのでは、と思います。伸介さんは歌唱力があるので、それでカバーできてしまうことが逆にマイナスかもしれません。
H:混声合唱で聞いてみたいです。美声で発音もきれいです。全体が大きく三つの部分に分かれるでしょうか。中間部分んはちょっと早めのテンポで「いやす力に〜」からは思い切ってクレッシェンドしながらゆっくりしていって「あなたは〜」に入りますね。表現に工夫されていると感じました。
K:気持ちは正直、この通りだろうな…。“こんなうたが できてしまった”と、いう所か,と推察する。でも、ここから詞も推敲してほしい。ことばの推敲でなくて自分の生活の推敲かも?そうしたら、メロディももう少し、魅力的になるはず…とおもう。
Sa:1行1行を短くすることはできないでしょうか。このように優しく丁寧に説明されて曲がつくと、かえって理解がどんどん進み流れ去っていくと感じたからです。言葉には意味とイメージ、感情があります。意味がよどみなく流れていくと、イメージ、感情が湧いてこないで流れていくのです。心に留まらないで。短くしてメロディーと結びつくことによって、聞き手の意味とイメージ、感情を心に届けることが、歌曲の表現だと思います。決して悪い歌ではありませんので悪しからず。
Su:東北の誇るエンターティメントと紹介されていましたが、まさに力作、力演だと思いました。しかし、あえて申し上げれば、ソロで、精一杯うたわれていることの存在そのものが、辛くなってきてしまいました。作詞も物語性をもたせ、叙事詩の趣きで構成されていました。大震災と原発事故のもとで、生きることへの励ましは大切なテーマです。「あなたはひとりではない今までもこれからも」など実感もこもっていました。合唱団としてうたわれるとまた違った感慨がもてたと思いました。
T:詩のテーマがいいですね。私も同感です。あなたは一人ではない、からのメロディは素晴らしいです。最初の「あの原発事故から3年」の歌詞は、あえてこだわるなら別ですが、別の言葉にしたいと私は思いました。これはわかっていることなので。ほかの良い言葉はないでしょうか?曲でいうと、後半の「それはけっしてひとごとではない」の部分がFだけで進行しますが、ちょっとつまらない感じです。ただつないでいるような感じがしますので、別のメロディ、あるいはコードはないでしょうか。
N:大震災の後の時間の流れが心の動きと共に私たちに大きな課題となって投げかけられているのがひしひしと伝わってくる。語りのうたとして、とても実感が持てるうたと声でした。


D51.伸(国鉄)                                   ピアノ/小林康浩
ぽっぽやの誇り」 (作詞・作曲/佐々木伸介)

F:誇りを持って生きる第2の人生が、素直な、でも味わいのあるメロディでつくられています。
H:男声合唱で聞いてみたかったです。題名に入っている「ぽっぽや」をしっかり聴かせたいです。歌詞の内容そのままの誠実な歌い方に好感が持てます。
K:こちらの方が骨がある、おもしろい。もう少し、視野をひろげて次代の若者への思いもあると今日的なにも意味のあるものになるのでは…。
Sa:この歌ももう少しだけ短くできたらと思います。言いたいことが本当に伝わるには表現にすることが大切です。説明を大切にしながら詩の表現にまで高めることに努力してください。詩人は嫌になるほど直しているんですから。
Su:国鉄の作業服がよく似合っていた佐々木伸介さんの姿に誇りを感じました。その誇りを歌にされたことはとても貴重な作業だと思います。「ぽっぽやの誇り」とは何かということ、「列車の安全ささえてきた」こと、「パンダグラフや架線を」みてきたこと、「生きてる電車のいつもの音」、労働者ならではの感性が満ちています。ただ、最後の連はやや観念的になった感じがしました。ここにも、ぽっぽやの誇りの具体化されたイメージがあれば、と思いました。この曲も合唱団として力強くうたってほしいものと思いました。
T:この歌は伸介さんならではの歌ですね。なるほどそうなのか、そうなのだろうな、とうなずきながら、しみじみ聞きました。佐々木さんは、歌つくりの「勘どころ」をしっかりつかんでいる気がします。D51でもう一度聞きたいです。いつか。
N:日本の産業を支えてきた誇りが印象的に表現されています。職場の仲間との日々の頑張りがとても適切な言葉選びと共に表現されている。素敵なバリトンで歌いあげている姿勢に感動しました。



岩手のうたごえ(岩手)                       指揮/高屋修 ピアノ/小山みどり
潮風を吸って」 (作詞/渡邊眞吾 作曲/高屋修)

F:最初の3段目までの哀愁に満ちた歌は見事ですね。高屋さんの歌作りの真骨頂という感じがします。でも、後半の転調に願いや希望をたくしていますが、少し唐突な感じもします。転調しないで歌ってみましたが、そのほうが全体として情緒たっぷりに演奏できるような気がしました。
H:独唱や女声のみ、また混声の斉唱や合唱と表現に工夫が見られ、それぞれの部分でのメリハリの効果もあります。曲は三つの部分に分けられるようでしょうか。それぞれの部分は美しいメロディやハーモニーなのですが、その展開の仕方にもう一つ何かが加えればスケールの大きな曲になるように考えます。
K:いくつかのこの間の事件に思いをよせているのか、そうでないのか?詞の練りが足りないのではないか?曲はロシア民謡の親しみやすさが魅力。作者がどこにいて、なにを伝えたいのかもどかしい。
Sa:ピアノ伴奏が平板な気がします。「声もなく〜うねりの中へせつなく消えた声」までが一つの心のテーマのまとまりになっていると思いますが、これを受け取けて展開していくうえで
 潮風を〜生きてきた        
 潮風を〜生きる           の部分、曲想が変りますが、前段の曲想をもっとうけつぐように
 ともに同じ潮風の香りを吸って    していった方が私にはイメージと感動が流れてくると思いました。
 歩き始める
          この言葉の位置もとても大切だと思います。勝手ながら感じたことを書いてみました。悪しからず。お許しを。
Su:作詞の渡邊眞吾さんは現代詩の分野で活躍されています。うたの詞を書かれているのを初めてしりました。詩人の感性にもとづくことばが息づいていると感じました。「潮風吸って生きてきた」のリフレィンが効果的な作用をしている思いました。詞の展開はまとまりをみせていたと思いますが、個人的な感想でいえば、「声もなく飛ぶ 鴎」という「鴎」で切ることに多少の違和感を感じました。ここは「鴎たち」とか「鴎鳥」とか、3文字でなく5文字にしたほうがよかったかと思った次第です。舞台では女性の合唱に元気がなく弱く感じてしまったことが、惜しいと思いました。
T:この歌は伸介さんならではの歌ですね。なるほどそうなのか、そうなのだろうな、とうなずきながら、しみじみ聞きました。佐々木さんは、歌つくりの「勘どころ」をしっかりつかんでいる気がします。D51でもう一度聞きたいです。いつか。
N:「海は前よりも蒼くなった」というキーワードが詞の中で生きている。「潮風の香りを吸って」全体の中で結びの言葉として、とても印象的です。Chorusもシンンプルで説得力があり素敵です。


万華鏡(奈良)                      ピアノ/柿本淳子 ギター/柿本一志
うつろい」 (作詞・作曲/柿本一志 編曲/小林一尚)
 
F:ご自身の人生で感じられた思いのままに、丁寧に描かれていて共感します。演歌っぽい節回しもいいですし、ギターも美しくアレンジもいいです。
H:なつかしい雰囲気です。無理のないスムーズな音の流れで心地よいメロディとなっています。「明るく」「ゆっくり」「世界も」をもう少し強く訴える工夫をしてはどうでしょうか。(ステキな言葉なのに勿体ないです。)全体的に心地よい響きでした。
K:とりあえずの自分のためのつぶやきのうた?「…よわさによりそいながら、いきるもよし」??動き出すための,前夜…茫洋・混沌のいま??音としては各フレーズの終止音にソG音が多く流れを悪くしているのでは?
Sa:詩の各行は理解できるのですが、心の内の中身がもう一つ伝わってこない。例えば、懐かしい友と語り合う内に/なえてた心に/あかりが灯る。 と表現していますので、その語らいのなかで、どんな言葉の響き合いがあって、あかりが灯るのか、そこの言葉が表現されてこそ、この行はもっと生きていくのではと思うのですが、いかがでしょうか。心情の説明ではなく心情の真実を言葉として表現してほしいと思います。
Su:盲人として生きてきた人生観がこめれれていました。「なえた心に あかりが灯る」と立ち上がって生きていく姿勢が、叙情的にうたわれいました。きれいな曲に仕上がっていたと思います。前向きな姿勢はとても貴重だといえます。ただ、ことばのイメージが一般的に流されてのが惜しいです。たとえば、「風や草木や空と」「花や小鳥や月に」「山や大地や海に」という歌詞です、ここに、ちょと違ったイメージが入ってくると、異化効果が生まれるような気がしました。
T:詩とメロディがとけあって、しみじみとしたいい歌ですね。ピアノのアレンジもおしゃれでいいです。前奏、後奏もすてきです。私は心は移り変わる、の部分が特に好きです。
N:ひとの心の内面をみつめた内容の詞が印象的な言葉選びと共に生きている。語りを強調したうたが素敵です。Piano、特にギターの撥弦が心に迫る雰囲気を生み出している。

福島教育のうたごえなごみ〜ず(教育)                   ピアノ/佐藤香
何故に〜福島の地から」 (原詩/大橋幸雄 作詞/山本忠生・藤村記一郎・大谷敏彰・金野洋子・勝然たみ子・渡辺ルリ子・佐藤香 作曲/佐藤香) 

F:1,2番から3番への転調、4版のさらなる広がり、など佐藤さんの曲作りの力が如何なく発揮されたと思います。決して先の見えない中での思いの丈をしっかりと表していますね。
H:それぞれのフレーズは良いのですが、展開が不自然に感じる部分もあります。ハーモニーもしっかりして、声も美しいので強弱やあくせんとなど工夫してメリハリをつけると良いでしょう。
K:詞は未整理ちょっと舌足らずながら、気持ちはわかるし、うたは気持ちがまっすぐに伝わってくる。大事に歌ってほしい。
Sa:よく、声を荒げずに静かに訴えていきたいという人がいますが、声を荒げずには賛成しますが、静かに穏やかに訴えるはずの作品を見ると視点があいまいになていたり、ずれていっている事があります。この歌は原発事故を告発する視点がモチーフになっていると思いますが、表現が抽象的になっています。福島の声は何故にかき消されると問いかける「何故」であってほしいと思います。「何故に音もたてずに降り積もる」という問いかけが誰に対してか、この何故は必要なのか、もう一度ご検討を。「音もなく 目にみえず 放射能が降り積もる 愛と生命の福島の大地に」その恐ろしさを静かに表現すれば、訴えることができれば原発のある地域に、染みわたっていくのではないでしょうか。「人間をかえせ」という原爆の詩がなぜあれほど伝わっていくるのか、もう一度ご検討を!
Su:原発事故の現実を見つめた集団創作ということでした。歌はわりあい静かな調べでした。「降り積む雪より なお軽く 福島の大地に降り積もる」と、放射能の悲惨さを抽象化したイメージに触発されました。実感から生まれたことばとして、うまいと思います。しかし、三番になって「悔しくて 悔しくて 怒りの声は」と直裁ななってしまったことは残念です。ここは、やはり、一、二番のイメージをさらにふくらませたものに仕上げて欲しいと思いました。
T:佐藤さんの思いがあふれたいい歌だと思いました。くやしくて、くやしくて、怒りのこえは、のメロディとコードの関係が特にいいなと思います。演奏も良かったです。
N:大震災の中でも特に福島の方との切実な想い、悔しさが心に響いてくる。しかしそこから立ち上がるエネルギーのようなものが裏うちされていると思います。Chorusも力強く、印象的でした。


埼玉合唱団(埼玉)                   ピアノ/加集希世子
祈り」 (作詞/浅子保子・大野悦子 作曲/大和幸子 編曲/武義和 伴奏編曲/加集希世子) 

F:身近に被災された方々がいらっしゃって、その方々に、また被災地に心寄せて、しっとりと心の底からの思いを美しいメロディにのせ歌い上げ共感を呼びます。ただ、美しすぎるメロディによって言葉が流されてしまわないように、とも思いました。
H:安定した豊な響きです。
K:演奏がやや荒い感じだったせいかうたのリズム配分がきになった。もう少し落ち着いたうただろうと思う。うたいためしてほしい。
Sa:歌にこめた思いは漠然ですが、伝わってきます。思いがたくさんありすぎて表現しきれなかったのではないかと思います。作者の祈りの視点が鮮明に浮かび上がってくるともっと素敵な歌になると思います。
Su:加須市に避難してきた双葉町のひとたちとともにつくられたといいます。「忘れないから あの町愛している」という気持ちはよく伝わってきます。しかし、状況が状況だけに、説明的なことばになってしまったきらいがあります。詩的なイメージに昇華できればもっとよかったかなと思いました。合唱発表も情緒的で、流されていたように思えました。もっと気迫が欲しいと感じてしまいました。
T:いい歌ができましたね。加集さんのピアノアレンジもすてきです。見てていてね、のメロディと和音と言葉がそれぞれピッタリで、この歌を引き締めています。後から詩を作ったので仕方がないのですが、2番は言葉に合わせて、ちょっとメロディをいじっても(微修正)いいかと思います。
N:巧みな前奏部から始まるピアノがとても印象的です。双葉町の方々との生活を通しての交流が切々ととらえられている。合唱も朗々と歌い上げられている。終わりの(>)デクレシェンドは綺麗です。静かな語りの部分は言葉をたてると説得力が増すでしょう。出だしの(oあ)は、十分準備をして歌い出しましょう。

L.P.F(千葉)                   ギター/吉田勝彦
笑顔とともに」 (作詞・作曲/吉田勝彦 編曲/L.P.F)

F:メランポジウムという名前のようにかわいく優しい歌です。変更されたメロディの2,4,6小節目がすべてソで終わると、詩を読んだ時に感じる自然な語り口が停滞すると思いました。詩を語り、その語ったイメージを意識すると詩の中味が生き生きと伝えられると思います。
H:ふんわりと温かい歌声で心が和みます。楽譜と違う音が何か所かありますが…より美しいサウンドを求めて変えたのでしょうか。伸びやかな美声、大切にしてください。
K:さわやかな心やさしいいいうたです。障害をもつ子ども達とうたうのかと思ったのですが…。
Sa:とてもさわやかで素敵な曲でした。ただ、少し平板で物足りなさがあります。
君の笑顔とともに反が咲きました      これを入れ替えてみました。これだけでも、心の流れができてきます。
君の笑顔とともにみんながほほ笑む  
それからこの2行の@です。いろいろやってみてください。それから「あふれる笑顔」のイメージを「君とみんなのあふれる笑顔」のような少し、鮮明なイメージが伝わるようになればいいかなと思いました。詩人としては歌を聞きながらも自分のイメージが浮かんでくるものでして、書いてしまいました。悪しからず。評点☆
Su:障害の重い子どもたちにおくるうたといいます。メランポジウムという小さな黄色の花への思を託しています。「ベランダに咲く小さなひまわり」というイメージがいいのかどうか、ということがあります。メランポジムウムはキク科の花で夏の暑さに強いということなので、独自に表現ができなかったと思ったりしました。また「秋の空」ということばが使われていますが、夏の花のイメージで押し出したほうがよかったのでは、と思いました。しかし、フォーク調の曲によくマッチしていたと思います。君の笑顔」が障害のある子どものイメージだと受け止めることができました。
T:演奏がすてきで、さわやかなこの歌にピッタリでしたね。楽譜とメロディが違うところがありますが、そちらのほうが楽譜よりずっと良かったと思います。メランポジウムやサファイヤブルーなどの言葉が、うまくいかされています。
N:メランポジウム(小さなひまわり)の花を通して人と人との繋がりが表現されています。(私もこの花が大好きです)ギターの撥弦の音が心に響き、3人のうたもソフトで優しく心温まるものがあり感激しました。Sopのアドリブをもう少し工夫してもよい。

すずきさんち(茨城)                                 ピアノ/鈴木尚子
へいわってすてきだね」 (作詞/安里有生 作曲/鈴木潔)

F:子どもの作文・思いによりそい、とても丁寧につくられていていいですね。「平和って・・」から特にステキですね。ただ、次々にちがうメロディになるので、統一感はありません。前半に出てくる「平和っていいね」と後半の「平和ってすてきだね」が同じメロディになるともう少し統一感が出せると思いましたが。
H:詞の心がよく表現された曲と、そして歌い方です。沖縄のメロディも取り入れて、長いけれど飽きないステキな曲でした。評点◎
K:長い詞をていねいにうた作りにいかしていて、しかも子どもの言葉らしくうたいあげてびっくりです。演奏もピアノ(奥さん!)のささえもバッチリ。ただ、この長さではみんなで歌えないので、作者に了解をもらって短いうたに整理してほしい。どこを重点にするかな?
Sa:沖縄の子供自身による詩はとても素敵でした。曲も素直に寄り添うメロディーで良かった。子どもの合唱で聞きたいと思う。評点☆
Su:これは、沖縄の子どもの詩です。沖縄の慰霊祭で朗読され話題を呼びました。たしかに、いい詩です。この詩に曲がつけられたのです。曲をつけてうたわれるのはいいことだとは思いました。しかし、懸念したことは、著作権のことです。子どもの作者にも了解を得られていることは当然とは思うのですが、いかがなものかと感じてしまいました。東京にうたごえでも「港区平和都市宣言」に曲をつけてひろめようとされています。それにも、多少の違和感をもったものです。創作曲という以上は、やはり自分たちの力でつくってほしい、という気持ちを強くもっているからです。「平和ってすてきだね」と、訴える力を十分に発揮されていただけに、余計な危惧をも感じた次第です。
T:まずなにより、このテーマで作られたという着眼点がすばらしいですね。1曲というよりは、組曲のような仕上がりです。暖かで、主張もあっていいメロディだと思います。私は特に、8段目「平和っていいね」のところや「ああぼくは」の部分が好きです。曲頭の入り方もいいです。一方、壮大ないいテーマであるがゆえに、メロディや和音づけなど、再考の余地がある部分もあるかなと思いました。6段目「港にはフェリー、」の段、3段目「お腹がいっぱい」や、最後の段「できることから」などのメロディにやや無理を感じます。また、和音で、これだけの長さの歌にしては、Cm(6度)の和音が少なすぎのような感じを持ちます。転調した戦争の部分ですら、登場は最初に2回だけですね。このことなどが、やや全体の単調感を作ってしまっているようで残念でした。伴奏はとてもよかったです。
N:子どもの心で捉えた「平和って何かな」というテーマが生き生きと語り、歌われている。ピアノの表現が描写を伴って印象的です。ストレートに素直な歌い手の訴えがとても感じられる。


岡山合唱団(岡山)                               ピアノ/真島優美子
戦争」 (作詞/笠木透 作曲/石原みゆき 伴奏編曲/真島優美子)

F:笠木透さんが亡くなり、あらためて彼の詩の素晴らしさを感じます。前半のメロディがその詩にふさわしく格調高くつくられています。そのとおり!と言いたくなるうたで、合唱曲としてもいい歌になりそうです。ぜひ!
H:出だしのメロディ、歌い方が印象的です。※「戦争で死んでいくのは〜」の部分はもう少し膨らませても良いでしょう。最後の最後のピアノの音(和音)は効果的です。
K:いい歌です。演奏もピアノもいいね。ややぶきらぼうな詞の語り口と曲の雰囲気とがぴったりです。石原さんヤッタネ!
Sa:「いつだって〜知らないひとが戦争をはじめる」    この言葉を支える表現がもっと欲しいを思いました。
「いつだって〜もうける人が戦争をはじめる」    
Su:全体に当たり前のことばになっているのが気になってしまいました。詩としてもなにか説明的になっているのではないかということです。「たとえ正義のためだろうと 戦争はしない」ということは、訴えなくてはならないことではありますが、もう一工夫がほしいのです。イメージに発見も飛躍もないことがさびしいです。歌の途中でちょっとバラバラになった感じがしました。
T:作者の願いどおりに、伝わるものがありました。ピアノアレンジもgood!一か所、4段目、8段目の「九条と」のメロディと和音が今一つか。再考の余地ありです。そこまで1小節単位で和音が変わるのに、そこだけ2小節Gコードが続くので、やや「もたもた感」が残ります。わたしたちは、から下に音が下りずに、上に向かうほうがうまくいく気もします。
N:世界と日本の戦争の悲しい歴史が詞に歌に表されていて、切実な思いに迫られる。訴える力がとても強い。うたはとてもしっかりしている。


フレンドカプリコン(長野)                     指揮/佐々木昌 ギター/佐々木昌
若者よ君こそは」 (作詞/明日の平和を愛する人 作曲/佐々木昌)

F:少々理屈っぽい感じですが、格調高い詩です。メロディはそれに対して少し負けているかな、という感じがします。また、1,2番の詩の文脈の切れ方が違っているので、2番を歌ったときに2行目が終止形になることが少し違和感を感じる部分でした。
H:ハーモニーはもう少し練習すると良くなるでしょう。ともすれば固い難しい言葉をリズミカルに明るいメロディと軽いテンポで歌いあげました。
K:演奏が調子に乗らなかったのは残念。やや格調たかい詞ですが、若者達がうたってくれるかな。 
Sa:若者に呼びかけるわけですから、若者が殺し合いに駆り出される当事者になることや子供が犠牲になったら、その会社に未来はないことなどがもっと表現されてもよいのではないかと思います。憲法9条は素晴らしいのですが、それは戦争の悲惨さと残酷から生まれたことが伝わらないと9条の価値が輝かないと思いっているのですけれど…。
Su:「信濃のうたごえ祭典」に向けての集団創作といいます。4人のグループ(男性3人、女性1人)でうたっていたが、なにか迫力に欠けていたし、アンサンブルに工夫がほしいと思いました。歌詞も未消化な域を感じました。「平和憲法護り抜くため」とか「平和憲法の目指す道をゆこう」など、そのとおりではあるのですが、ここから、イメージをふくらませたことばが欲しいと思いました。「輝く永遠の平和への道」はことばどおりですが、うたっている人たちからはその気持ちが伝わってこないのが残念でした。
T:このうたはいい歌です。よくできています。最初の「わかものよ君こそは」のテーマが秀逸です。それが最後に「うたごえの力で」を載せるところが特にうまい!と感じました。盛り上げ方もいいですね。歌つくりのセンスの良さを感じます。私もこのうた歌いたいです。
N:世界に誇る日本の憲法第9条に寄せる強い願いが若者に託されていることが切々と訴えられている。アコーディオンとギター(少し音量がオフか)の伴奏が効果的です。3人の歌もよく気持ちが合っている。女性パート、少しピッチがゆれて惜しいです。


荒川のうた合唱団(埼玉)                                    指揮/大西進
アンネの木」 (作詞/高野美代子 作曲/大西進)

F:シンプルな4行詩に無駄のないメロディがつき、後半に向かって徐々に高まり最後の「忘れない・・」のクライマックスが印象的でした。アンネについて書いてと言われてすぐにこういう歌ができるのはすてきですね。
H:美しいアカペラで難しい8分の6拍子に挑戦しましたね。言葉をたててお互いの声をよく聞きましょう。
K:いま、アンネをうたうことの意味をもう少し書き込んでほしい。でないと今日的なインパクトのあるものでなく、なつかしいものになってしまいそう。演奏は丁寧だが、地声の低男声の8va下のメロディはかなり気になった。
Sa:アンネを知らない人でもはじめてこの歌を北ときに、アンネを見続けた「木」の視点を通じてファシズムの戦争の悲しみがひしひしと伝わってくる表現になるといいなあと思いました。再創造、構成することを期待します。モチーフとテーマがとても素晴らしいので。
Su:すでに150曲くらいを創作しているといいます。この曲は、作曲家の大西進さんのおもいにこたえて作詞されたということです。合唱団としてのまとまりがあり衣装もかっこよかったです。詞はまだ説明長で冗漫な感じがしました。核心的なものが弱いように感じたのです。1番から5番までありますが、うまく調整すれは、まとまりのあるイメージが豊かな構成になるように思いました。無伴奏の旋律は美しいものでした。
T:一つのテーマに歌つくりを続けられることに拍手を贈りたいと思います。アカペラでもぐいぐいと歌の世界にひきこまれました。ことばとメロディが力を持っているからでしょう。心に残る歌でした。
N:アカペラのすっきりとしたうたが印象的です。原点のアンネの思いが投影されている詞です。Chorus、メロディーを浮き立たせるようにしたい。ピッチ少し揺れて惜しい。


わたぼうし(秋田)           デジタルホン/佐藤実 ギター/佐藤義雄 タンバリン/佐藤厚子
黄色いハンカチ」 (作詞・作曲/さとうあつこ 補作/さとうよしお)

F:最後の2行の歌いやすさと広がりがいいですね。オブリガートもなかなかすてきでした。4,5段目がAm,Em,のくりかえしですが、3回目の「あしたに・・」あたりは、明るさを出してFにすると変化が出て効果的だと思いますが。
H:美しい声と自然な和声の流れで聞きやすいです。思わず合いの手を入れたくなります。タンバリンは、どの部分を、手のどの部分で、どのくらいの強さで叩くと一番美しい音になるでしょう。評点◎
K:わかりやすく、うたいやすく地域の必要にすぐこたえてゆくのはとてもすばらしい。歌い試しながらものたりないこと、などもだんだん出し合ってまた、つぎの作品にみのらせてください。
Sa:原発反対で闘っている人達とは響き合う歌だと思います。反対に至らない人達にも響き合うためには「黄色いハンカチ」は何を象徴しているのか、そこを豊にしかも鮮明にするのが詩の表現方法なのです。是非、考えてみてください。
Su:秋田原発アクション100日、「原発反対、再稼動反対、すべてを廃炉」とよびかけていました。「幸せ色の 黄色いハンカチ」のイメージはとてもいいと思いました。「明日に祈りこめて 青空になびけ」という優しさが伝わってきます。しかし、どこか一般的なイメージになってしまっているのです。「がんばろう 負けないで」「がんばろう くじけずに」というよびかけは大切なことだとは思いますが、このことばでない、ありきあたりでないことばは、生まれてこないのでしょうか。そのことを強く感じました。
T:聴いているこちらも元気が出てくるような、いい歌ですね。これからも秋田で、ぜひ歌い続けてください。
N:「黄色のハンカチ」の表す平和への願いが込められている。デジタルホンの響きがとても印象的です。


ドライフラワーズ&うたごえ・なん(神奈川)          指揮/吉川敏男 アコーディオン/内田与明
アガパンサスの花のように」 (作詞/江成兵衛 作曲/吉川敏男)

F:アガパンサスという響きもふくめ、詩がなかなか新鮮な感動を持って書かれています。それに対してメロディはやや詩をなぞっているようなキレがないかと感じました。最初のモチーフがとてもいいので、もったいないなあと思います。
H:「どうぞ〜」の話言葉の部分はソロにするとか、もう一工夫ほしいです。全体が平らな感じです。曲の構成にメリハリがあると印象に残るでしょう。出だしの2小節の音程は難しいのによく歌えています。
K:変わった視点で近づいた平和憲法のうた。その着眼がいいね。曲もすっきりまとまっているよ。(詞、ちょっと、カッコよすぎるかな?)
Sa:アガパンサスの花のイメージと堂々と署名をする女声の姿を描いていて素敵です。ただ、「どうぞ〜しないために」の二行(1〜3とも)で終わっていますが、何かとても物足りなさを感じてしまいました。アガパンサスに象徴的に重ねた女声の姿の内面と最後の二行との響き合いがもっと聞き手に伝わってくる表現方法はないものか、深めて下さい。モチーフとテーマがとても素敵なので、期待します。憲法と女声とアガパンサスの詩としての言葉の響きあいです。それに曲がつくと数倍も感動が伝わってきます。
Su:憲法と女性たちに捧げるといいます。「アガパンサスの花のように」のというのは、どのような花なのか、ということが前提になってきます。「青い花火のようね」という表現は情緒的です。和名は「ムラサキクンシラン」(紫君子蘭)で、さわやかな涼感のある花を多数に咲かせます。たしかに「青い花火」のようです。また、立ち姿も優雅で美しいです。いい花を題材に選んだと思います。それに「どうぞ署名をしてください」というような、よびかけることばの部分に音符がつけられたのはよかったと思いました。男性4人の合唱はソフトで、なまのことばやわらかくつつみこんでいたのが印象的でした。
T:きっとこの歌を聞くと、迷っている人でも署名をしたくなることでしょう。いい歌です。特に私は、最初の「梅雨の晴れ間に咲いた」のメロディがとっても好きです。アガパンサスの花が、音としても、内容としてもいい役割をしていると感じました。
N:「アガパンサスの花」を通して平和への強い願いが込められている。Chorusもしっかり歌いこんでいて立派です。


緑と海の合唱団(三重)                                                              
戦争で平和はつくれない」 (作詞・作曲/松井高純)

F:戦争で平和はつくれない、というメッセージはまったく同感。その部分は説得力がありますが、前半はやや地靴っぽいので、もう少しその内容を詩的にうたえたらと思いましたが、難しいですよね?
H:CDの伴奏と歌のテンポのズレが残念です。
をしっかり歌いたいです。早口になりがちな部分は、リズム唱や手拍子でリズムうちの練習も効果的でしょう。
K:面白い詞、理屈っぽいのがつらいが、いいたいことを言切っていてこれはこれで、おもしろい。ただ、曲は最後までつぶやいているようで、後半でまとめ方がうまくいっていない。例えば、5段目でG音にしないで、Aとして(前小節のオモミをchaでなく、chgになるが)、「母と子の」のメロディ部分をリフレインのように再度あつかう…(歌詞は少し短く整理が必要だが)この方がうたの印象がすっきりするのでは?参考まで。
Sa:作者はとても学んでいる方だと思います。「アジア太平洋戦争」という言葉にそのことを感じます。とてもよくまとまっている詩ですが、作曲の方、流れるようにメロディーが説明的になっていると思いますので工夫を望みたいと思います。
T:最初の4小節が特に印象的でした。日本国憲法で始まるのもいいですね。全体的にもなじみやすく、いい歌だと思います。ちょっと5小節目以下の言葉が多すぎ、やや無理がある気もします。詰め込まずに、簡潔に内容がわかるような言葉を探すことも大切かと思います。ことばについては門外漢で申し訳ありません。
Su:そろいのТシャツで男性1人に女性が7人が登場、かっこよかったです。ピアノ曲はCDでした。作詞は「日本国憲法は知っている」など、当たり前の認識をことばにしたもので、固さがいっぱいありました。それでも「戦争で平和はつくれない」のフレーズは届いてきます。全体にイメージをひらがなのようにすれば、また違った世界がひらけるように思いました。うたっているメンバーにアンバランスなところがあったのは、練習不足だったからでしょうか、惜しいと思いました。
N:憲法9条を世界に誇る気持ちがよく表されている。使われている言葉が少し固い。感じが中心で少し気になる。もっと柔らかい具体的な言葉も使ってほしい。8人の歌は堂々としていてよい。


乙訓教職員合唱団杉の子クレッシェンド(教育)           指揮/藤井幸枝 ピアノ/盛永由乃
明日につづく生命」 (原詩/佐藤恵子 作詞/杉の子クレッシェンド 作曲/盛永由乃)

F:人間のおごりへの警鐘がテーマで、前半後半の対比がいいと思います。ただ、後半の最後のインパクトがほしいです。「残したい・・」の「したい」は3度上に持って行き、次の「残したいのは」の「いの」をミファと1音あげたら、引き締まってくると思います。
H:ステキナメロディもフレーズもたくさんあるのですが変化が多くてどことなく違和感があります。全体を通して流れる何かがほしいです。
K:詞のいいたいことは、正しいし私は賛成だ。意欲はおおいに買うが、聴き手が共感してくれるかどうか?詞が切り口上ということもある。演説はききたくないと言う人もいるだろう。歌にするということはそれなりに聴き手の興味を引きつけながらひとつの世界に誘い込む事だから、工夫も必要。曲もメロディをつければ、というものでもない。好きな歌の仕組みをまねながら、 まずは、みんなに歌ってももらい、意見をもらうことから。経験をつんでほしい。
Sa:「長い年月の流れ」がひっかかります。最初に2万年前と言っているので。例えばここに「途切れることなく生命はつづく」というイメージをもってくるとか、便利に暮らす背景に原子力発電があることなどの複線を張っておいて、2に行くと作者のテーマが鮮明につながっていくのでは。また、「姿を消す」と言い切ってしまっているので「人数の歩んできた〜」からはもっとイメージ豊かな言葉と論理で表現してほしいと思いました。2万年を楽々と超えるモチーフはすごいと思うので何回でも挑戦してみてください。
Su:原発廃棄物が出す放射能は二万四千年でやっと半減するといわれています。という認識のもとに、放射能のない世の中への思いからつくられた曲でした。女性5人の合唱でした。「今いまから二万年前 私達の祖先は…」と「今から二万年後 私達の地球は…」という1番と2番の対比の着眼点はよかったと思います。「人類が歩んで来た時間」の長さの表現として受けととめることができます。その上で、「苦しめる核のゴミ」などの表現には、気持ちがわかる分だけ、もう一工夫をこらしてほしいと思いました。
T:壮大な、そして大切ないい詩に、すてきな歌がつきました。ピアノ伴奏、よく工夫されていていいですね。ただ、好みの問題かもしれないですが、和音の付け方に、もうひと工夫があるといいのになーと感じました。ややドミナント(C調のG、F調のCコード)が多すぎるかなと。もう少しほかの可能性も考えて、吟味してください。推敲は大切です。18小節から19への和音の推移は、新鮮さ、オリジナルを感じますが、やや無理のような気がしました。ここはむしろ普通のほうがいいか。Dm→G7→Cで。細かいことばかりですみません。
N:かつて経験したことのない原発の問題が人間の歴史の中でどんなことなのかを問いかけている。5人の歌もしっかりしていて素敵です。

合唱団北星&私鉄池袋ターミナル合唱団(東京)                      ピアノ/新井知子
大船渡線」 (作詞/十三与太郎 作曲/平井克己)

F:テーマがいいです。また歌いやすく哀愁もあり地元のねがいを愛唱曲にして広げられると思います。ただ、ここ!というところにそれまでとは違うリズム感の長めの音をつかったメロディがほしいと思います。2段目の「単線・・」は最初のモチーフと同じものをもってきたほうがまとまると思います。次々と違うメロディを続けると、せっかくのいい発想の詩が生かされなくなってしまう危険があります。最後の「レールを・・」のクライマックスはいいですね。
H:沿線の景色が目に浮かぶようです。和声の動きが自然なので聞きやすいです。合唱団のテンポは、もう少し合わせましょう。地名は難しいですね。リズム唱、リズム打ちの練習もしてみましょう。評点◎
K:のびのびしていて、しかもながい詞をよく纏めあげて地味だが曲の魅力もある、いい作品。だた、3番まであるから3回目はすこしだけ変化(オブリガートを)をつけたい気もする。もちろんこれは私の感想にすぎない。ところで、良い歌なのに 「単調さがぬけない」のはなぜか?と調べてみたら、二小節のフレーズがみな同じリズムでつながっている、整然としすぎている所が原因とおもう。(ほんとうはそれでいて、破綻していないのは平野さんのキャリアのなせる技だが)できるなら、一ケ所、流れを替えてみるーー24小節目で「れきし」の「れ」を、8分音符はやくでて、「れきーしを」とリズムを替えてみる、それだけでも曲のへそができるとも思うが、いかが? 
Sa:鉄道マンの心意気を3で特に感じて心から嬉しくなってきました。欲といえば、1は全体として2、3の序章となっていますので、もう少し2、3に繋がっていく鮮明さがほしいと思います。2は「あれから3年」という言葉。「あれから」は分かる人には分かりますが、分からない人には分かりません。「震災」という言葉が入ってもいいのではないかと僕は思います。仮設のイメージもレールに沿って表現でいないか。「里の民」のイメージ、「仕事は喜び」の位置、この行は「必ず抜け出す」が「トンネル抜ければ」と巧みに結び合っているので考えてみてください。歌の場合、言葉が 次々と通り過ぎていくので、できるだけ、繋がって、さらなる思いに高まっていくようにする必要があると思っています。
Su:大震災のあとの復興をと願う気持ちがうまくとりあげられていて、感動的な作品となっていました。今回は「東京のうたごえ」のときの発表よりは迫力に欠けていたのが残念でした。一ノ関から気仙沼を経て盛(さかり)を結ぶ大船渡線。だが、気仙沼から盛までの間は、BRТ(バス高速輸送システム)の区間です。だから、「レールは切れても大船渡線」とうたわれると切ない思いがひろがってきます。沿線の風景や駅名を取り入れた作詞もなかなかよく出来ていると思いました。「陸中松川」はわかるとしても「猊鼻」(げいび)は難解です。「千厩」(せんまや)も同じことですが、それもローカル色の特性としていかしていけばいいものだと思います。当日の舞台では、線路と駅名のカードをもって登場したはよかったです。しかし、東京のうたごえ祭典のときほど、元気さもインパクトも弱かったのが惜しく思われました。
T:東京に引き続いて2回目ですが、前よりもしっくりと、しっとりと聞かせていただきました。いい歌ですね。印象に残った歌の一つでした。ほんの少し、ゆっくりのほうがいいかと思いました。
N:ふるさとに寄せる復興への願いが大船渡線に託され、切々と歌われている。Chorusみんな堂々と胸を張って歌い上げている。



★東京のうたごえ創作もっとうたい隊(東京)

港新婦人コスモスコーラス(東京)                 指揮/酒井崇 ピアノ/町澤恵
アイドル今昔物語」 (作詞・作曲/秋野さくら 編曲/町澤恵)

F:まとまりのないメロディの連続なのですが、発送が面白いので聞かせてしまいますね。楽しい演出もすばらしい!
H:楽しいパフォーマンスで会場が明るくなりました。主旋律と服旋律のバランスが不安な部分もありますが、お互いの声を聞き合うと良くなるでしょう。「○たてば〜」「○そーよー」のミの音は怖がらずに上からポーンと入りましょう。
K:アイディアはいいよね。こんなうたがうまれてくるサークルはきっと、いい仲までしょうね。さて、曲はアルトのメロディが高すぎたり、低すぎたり、ちょっと配慮がほしいところ。せっかく、こんなリアリズムで迫るんだから、「この 年期がはいった 歳だからいっておく!」といばって「平和のこと戦争のこと原発ノウ!」とバシッ!と言ってほしいです。そうしたら、より存在感が増しますよ。
Sa:とても面白く聞かせていただきました。「立てば〜歩く姿はバータバタ」にも関わらず「今だってみんなアイドルよ」と胸を張れる、言い切れるのは“なぜ”なのか。そこのところをもう少しコミカルに表現できたらもっと笑えてさらに面白いアイドル今昔物語になると思います。
T:こういう楽しい明るい歌もいいですね。聴いている私たちも気持ちが明るくなります。間奏もよく考えられていておかしいです。2番をぜひ作って下さい。
Su:パワフルで明るく、けなげな私たちをみてください、と、コスモスの花を描いた白い衣装を揃えていたことに注目させられました。合唱にも勢いがあり、うたいこまれてきたことが伝わってきました。「今は昔の物語」とはなんでしょうか、と思わせてしまいます。それが、かつての「立てば芍薬、座ればボタン、歩く姿はユリの花」も、いまでは「立てばよっこらしょ、座ればどっこいしょ、歩く姿はバータバタ」というのです。この対比の面白さが功を奏していると思いました。しかし「今だってみんなアイドル」、たしかにそうです。振り付けもよかったとおもいました。
N:ユーモア一杯のうたの遊びが素敵です。音楽映画「サウンドオブミュージック」のタイトル風のうた、とても素敵です。1人1人の声が明るくて洗練されているのでとてもすっきりしていて、ユーモア一杯です。


合唱団この灯(東京)                指揮/長久真実子 ピアノ/岩崎結
生命を生きる」 (作詞/牛山鈴子 作曲/廣野未来 編曲/長久真実子)

F:戦争によって若くして奪われた命にかわって生き続けながら歴史の真実を証言し続けることの大切さをうたう力作ですね。ただ、証言そのものでは、作曲するとやはりこの曲のように重苦しいものの連続ですから、聴いていてつらくなります。次回はもう少し誌の編集作業をし、音楽としての力が発揮され、音楽がものを言う作品にしたらどうかな、と思いました。
H:スケールの大きな混声合唱です。場面展開も見事です。全曲精一杯でなく、抑えた表現も必要です。強弱の弱の部分を効果的に表現したらどうでしょう?評点◎
K:数十年前の戦争の真実にせまった作品、詞もここまでたどりつくのは並み大抵のことではない。作曲も演奏もまじめに真摯なものだが、聴き手の“現在・今日の”感情にまで食い込むには音楽も感傷を排したつよさと創意が必要。歌唱の切実さ・リアリテイと導入部の構成力にもっと工夫・インパクトがほしい。(これは“作詞と歌の作曲”というよりは“音響を含む音楽と現代演劇の手法、その日常性からの飛躍“ドラマつくり に学べるのではないか。)証言として貴重な取り組みだ。
Sa:戦争と伝えるのに前説が歌われていて、僕はとてもよいと思います。今やこうい表現方法をうまく取り入れないと伝わらないからです。私もいつも苦労しています。1、2、3、空襲がモチーフになっていますが、4はアジア・太平洋戦争(こういう表現をする人は歴史確認が正確で深い方です。)の馬の話ですので、1,2,3は国内の悲惨を歌い(年齢を示して、今と戦争を結び付けた視点はとても優れている)、もう一つ、アジア太平洋戦争で飢えて死んでいった兵士、病気で死んでいった兵士とその残された妻と子の話を4も含めて数曲作って下さると、面白い組曲になると思います。(笑うという意味ではありません)
Su:合唱団結成21周年の歴史をもち、団員が創作している曲が多いということです。この曲も、東京大空襲の体験者からの取材を重ねて創作されたものです。それだけに、事実のもつ重さを感じさせてくれます。「1945年3月10日、東京に空襲があった。2時間半で10万人の生命(いのち)が奪われた」という地の文のところから曲がつけられていたのは、うまい処理だと思いました。「コッペパンを握って死んだ妹 いまでも8歳」という状況がからはじまっているのです。次に「千葉で空襲があり、ひろ子は東京と千葉で空襲をうけた」と説明されています。この悲痛な声を届けようとしていましたが、物語性をもたせるためにはもう少し深みがあればということです。事実は事実としても大切さはありますが、その事実から触発された心の叫びが「詩のことば」してほしいと思いました。「戦争を決して許さない!」という直接的な表現でなく、その気持ちを、イメージにしてひろげられればいいと思いました。
T:心に深く響く、印象的な歌でしたが、年齢が出てくるところが特に心に残ります。よいアイディアでした。歌詞に合わせて、拍子が変わっていくところもうまいと思いました。27歳の父、悲しいですね。
N:語りついでいかなければならないことを歌に見事につづったことは、とてもすごいことだと思います。1、2、3、4番の場面が見事に歌い分けられています。Pianoの描写も優れている。Chorusは堂々としていて1人1人がしっかり歌いこんでいるのが分かる。ラストのハーモニー少しピッチ合わない。惜しい。


うたごえサークル青梅麦笛(東京)         指揮/三浦伸明 ピアノ/峯崎道子
囲炉裏」  (作詞/たいらもとむ  作曲/三浦孝 編曲/青山義久)

F:歴史を伝えること、その切り口がうまく描かれたと思います。オシャレな曲と、中味を語るピアノがよかったと思います。
H:フォークソング風にやさしく語るように歌いました。バラード調は上手ですが、猪狩の部分は言葉をたてる子音をきちり発音するなど、工夫してはどうでしょうか。
K:東京で聞いた時と、私が受けるこの曲への印象がおおいに変わった。前回は「くどい詞を…」と思い、思い出の量にたいしていまそれを思う自分のことはなにも語っていない。これが、私には納得がゆかなかった。作品全体,演奏にその疑問を解消できる熱意・熱量を私は感じることができなかった。…が、今度、良い演奏をきいてみて、“この詩の最後の二行が不要なのだ”ということが解った。本当は「何が名誉だ!」と「火箸を突き立てた」をもっと歌い手の感情にする、詞もその手立てを考えるべきだったのだ。(ちなみに、縦書き詞には“父らの魂”が“父らに魂”となっている。重大なミス!)奥行のある作品です。
Sa:戦争の惨さが出ています。語る人がいなくなった今、このような曲の形で表現されることを私は評価します。片足をなくしてなお名誉だと言い張る友と父の怒鳴り合いのところ、イメージがすんなり浮かび上がるようにすると、もっと良くなると思いました。「寂しげに〜」が切なくさらに心に響いてくると思います。また、「満州」も今ではわからぬ人もいるので「満州の戦争」と最初に言い切った方が、後の言葉のイメージがより鮮明に伝わってくると思うのですが、いかがでしょうか。私にはなくても充分理解できるのですが…。
Su:東京うたごえ祭典でもうたわれていて、好感をもった曲のひとつでした。詩のイメージがひろがってくるからです。父親は満州から帰ってきた戦友と、酒を酌み交わすうちに、意見の違いで喧嘩になってしまいます。幼い子どものころの思い出を素直につづられたものです。「名誉の片足」という事実が戦争のもつ恐ろしさを表現しています。当日の舞台では、どうしたわけか、声が客席まで届いてこなかったのです。しっとりと、うたいすぎたからでしょうか。そのことが惜しいと思ってしまいました。
T:東京での演奏よりも、今回のほうが内容がよくわかり、気持ちが伝わったと思いました。いい歌ですね。前回も書きましたが、突然あらわれるピアノ左手の半音が効果的です。少し平板に流れそうになるメロディがここで引き締まっています。最後、このテーマとしてはややあっけない感じが残るのですが、いかがでしょうか?
N:詞の内容が戦争の語りつぐべきことを表していると思います。父から子への態度で示したメッセージなのだということがよく分かる。伴奏も洗練されている。Chorusもやわらかい発声で、そのsotto voceがかえってメッセージ性を強めているのかもしれない。


統計オンチコーラス(東京)                    指揮/高橋一美 ピアノ/澤山早苗
働き続けたい」 (作詞・作曲/統計オンチコーラス創作合宿)

F:前半の職場の実態への怒り、後半の決意、という構成はいいのですが、外に向かってアピールしようとすればもう少しリアルな職場の様子、言葉などがないと、やや一般的すぎるかなと感じました。したがって、後半の決意を歌う部分の訴えの力が弱くなります。対旋律はうまくできていました。
H:わかり易い詩ですが、歌になるとまた別かもしれません。最後の盛り上がりはもう少しほしいです。
K:いいたいこと、不満やねがい、でうめると職場の集団創作の現場ではあれこれ詰め込みたくなる。そんな詞をとにかく歌にした。なんか、とてもよくわかります。まずはここから出発して次の栄養にしましょう。今度はもう少し工夫して余裕を持って同じことを言いましょう。他の職場の人とも話合ってみると別の視点も生まれるものですよ。
Sa:職場に様々な人達がいても仲間たちとして呼べることに、人間として拍手を送ります。それだけに3の詩をもって、1、2を受け止めた内容と言葉にしたら、もっと素敵な歌になると思います。私、昔、住宅公園というところにおりまして、やはりオンチコーラスがありました。もしかして政労協というところに組合は加入しておられませんでしたでしょうか。とても懐かしく、今なお続いていることに感銘を深くしました。
Su:来年は国勢調査の年です、と挨拶されました。ああそうか、統計局というのはそういう仕事があるのか、と思い知らされました。創立60周年という長い歴史をもっています。けっしてオンチではありませんでした。働いている人には伝わることでしょうが、一般の人たちには、どのように届くのか、ということが気になりました。表面的なことから内面的なことばの模索も必要と思いました。
T:しっかりと伝えたいことが伝わる、いい歌だと思います。東京の時よりも心に響きました。途中の転調もうまいなあと思います。3番のアレンジもいいですね。何より固そうな職場(失礼!)で歌を創作しながらみんなで歌っていることが素晴らしいですね。
N:今の日本の産業の縮図が浮き彫りにされている。本当のワークシェアはいつ来るのか。Chorusはしっかりとハモっています。



★ありがとう 大阪のうたごえです!2014(大阪)

いずみの森合唱団(大阪)                         ピアノ/安達裕子
素晴らしい約束」 (作詞/三好栄代 作曲/前田光男 編曲/樋口幸恵・安達裕子)

F:歌いやすくまとまりもあり、よくできていると思います。が、ちょっと平盤かな?「素晴らしい約束」という歌詞の「しい約束」の部分を倍の長さにしてみると、タイトルの言葉らしく強調されインパクトが出てくるとおもいますが、どうでしょうか?また、楽譜の表現のことですが、詩のコンパクトさと比べ歌が長く見えるので、1,2番を一つの楽譜で表現し、とっつきやすい印象をつくることも大事かもしれません。
H:洗練された歌声でした。こまかいリズムもよく練習されていますし、言葉もしっかり伝わります。
K:理屈はあっているよという歌詞、だが、感情のながれはちょっとちぐはぐ、とおもう。曲も自然にながれるよりやや強引さがめだつ。ピースナインの歌はひつよう。だから、ありふれた日常の暮しから出発して飛び立ってほしい。ピアノ前奏部分はいいね!
Sa:詞はよくまとまっていると思います。少し注文をつけてよろしいでしょうか。「PEACE9」という言葉、一般の人は何のことだか、イメージをもてない人がいると思うのです。「〜素晴らしい約束」の後に、せめて「憲法9条」を入れて「PEACE9」にイメージを送っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。また、この約束は誰と誰とのどんな大切な約束なのか。だから私たちは「護り続ける」というつながりのイメージがあったらもっと「9」は広がると思うのですが。
Su:詞が上滑りしている感じがしました。一般的なイメージからどこか抜け気っていないからです。「護り続け伝え続けよう PEАCE9」はそのとおりなのです。「素晴らしい約束」とは、平和、9条をもまっていくことになるのです。ここから、詞のイメージをひりげてほしいと思うのです。女性のコーラスが届いてこなかったのが残念でした。
T:いい歌ですね。すてきな詩にピッタリのメロディが印象的です。演奏も力強くてよかったです。細かい点ですが、ややEmが多すぎるかなーという感じもしました。どこかはほかの和音(たとえばA7とか)にしたい気もします。39、43、どちらかはそうして、試してみてください。世界が少し変わります。
N:平和を受け継いでいく決意のようなものが詞によく表現され、うたも語り風の調子で切々と訴えられている。「peace9」への願いが出ている。Chorusも響きが充実していて素敵です。


友よ闘ってこそ明日がある合唱団(大阪)            ピアノ/三阪仁見
あの日あの道」 (作詞/西崎勇次 補詩/やまねひろゆき 作曲/やまねひろゆき 編曲/三阪仁見)

F:なかなかいい曲ですね。よくできていると思います。どんどん歌って広げてください。2つほど。3段目「6月の」のコードGは、ここで解決した感じになるよりはCのままにしておいたほうが自然に流れると思いました。5段目最後の「進む」はもう1小節伸ばしたほうが、ぐっと力が出てくるのではないでしょうか?
H:歌い易いわかり易い曲の作りで団員の声ものびのびと響きました。
K:職場のたたかいに直面しての創作、すばらしい。だから、人間の歌に影響うけたのは当然かもしれない。味もあるいいメロディ。だけど、そこからはばたきたい。13小節から別の音域にゆくこともできるはず、また、22小節の音を3度上げるだけでも、変わるはず。大胆に気持ちを開いてがんばってください。
Sa:闘う仲間の歌として共感できます。ただ、なぜ闘うのかを一般の人たちにはなかなか理解できないところがあります。そのためにももう少し表現を加えてください。「ある日突然首を切られ〜」の所、楽譜集を見ましたら、会社の不当なやり方が書いてあるではありませんか。そこを歌にしてほしいのです。TVで見ました。IBMで働く人がノルマ達成のために、どれほど追い込まれていることか。達成しなければ職場にイスはないという脅し。「人間らしく働ける職場」とは本来どうあるべきなのか、問うてください。そういう歌があると闘いの輪はもっと広がっていきませんでしょうか。
Su:「日本IBМと闘う仲間に心よせて」の副題がつけられています。闘う仲間に送るという気持ちはよく伝わってきます。「仲間の笑顔求めて 私は進む」こと、連帯感、意思の強さがこめられています。要領よくまとめられていると思いました。「夢奪われたあの六月の」ということばから、なにかが六月に起きたことは想像できますが、これが社員40名が不当解雇された日であったのです。多くの人たちへの支援をひろげるためには、別の工夫が必要かと思いました。
T:よくまとまっていて、しかも訴える力もあるいい歌だと思いました。ことばとメロディがよくハーモニーしていますが、特に19小節のF和音の使い方がいいですね。3番は半音か全音あげて歌うというアイディアもありそうです。ソロの方の事情もあるでしょうが、A調(カポ2)ぐらいが合唱としてはちょうど良いかと思います。
N:職場の仲間との大切な財産を奪われた気持ちが切々と歌いこまれている。うたも1人1人がしっかり声を出して迫力がある。Soloも素敵です。


榊原あきひろ(大阪)                               ピアノ/安達裕子
合唱と独唱のための叙事詩『黄色い風』より 四章」 (作詞/赤木正賢 作曲/榊原あきひろ)

F:どんどん新しい進化を続ける榊原さんの力作です。とにかく演奏の場を作りきいてもらいながら練り上げてください。散文形式ですが、全体を貫くキーワードやキーフレーズ(モチーフ)があると引き締まってくると思います。
H:力作ですね。ピアニシモでも言葉がしっかり伝わり、響きを失わないことが大切です。Fで声がスーッと伸びるように(力で押さない)
K:むつかしいテーマに挑んだ作品。詞も曲も その内容によくせまり作曲者の歌唱もりっぱだった。ただ(詳しくは知らないのだが)折角この大テーマに挑むのだから、どんな章立てをするのか、うたでこそ有効な形象テーマはなにか、など2. 3人で煮詰めながら、その超テーマをも深めつつ取り組んでほしかった。読む詩と歌う詞は生きる世界が違うのだから。全曲をききたいものだ。
Sa:組曲は全何章からなっているかわからないので、四章がどの位置にあるのかわからないので、全何章のうちの四章という風に表示していただければと思います。というのも、組曲は一章一章、独立しながらもつながっていき、その繋がりのなかで役割があるからです。組曲における各章の構成というのはとても大切です。ある意味、構成で組曲全体の良し悪しが決まるのです。さて、四章、前半。感覚、感情の想うままに流されてはいないでしょうか。1行1行が何を表現し、その連なりで何をどう表現していくのか、母さんの心が聴く方で1つの流れとしてイメージが結びつき、「この子に食べ物を」に流れ込んでいくようにしてほしいと思います。後半、「風よ 教えてほしい」から始まる一連の詩にも違和感を感じます。1行1行、1連1連を積み重ねていくと、鮮明な母の姿、黄色い風に込められたイメージが、心に響いてくるように作りたいと思うのですが。
Su:長い曲の一部分だと思います。モノトーンの雰囲気で聞かせるソロがよかった。聞かせてくれました。日本兵たちの性暴力による悲惨さを物語りのように展開されていきます。「風よ 黄色い風よ 勇気を生き抜く黄色い勇気の風よ」というイメージが鮮烈に響いてきました。ただし、物語の主題がどこにあるのか、ということが、この章だけからは受け止めることができませんでした。「合唱」と「独唱」の部分があるようですので、いるか、全体の曲をきいてみたいと思いました。
T:この壮大な叙事詩に歌を付けたということに、まず大きな拍手を贈りたいと思います。ことばと歌、和音のつながりもよくできています。ただ長いので、どうしても音楽的にはやや単調になりがちで、そこにとらわれてしまうと、後半の言葉が今一つ心の奥に届かない気もします。難しいですね。また、歌を評価しつつも、私が震災原発を歌にするときに思う気持ち、「これを歌にしてよいのか?」と、似た問いを持ちました。これも難しい課題ですが、そのことを深く考えさせられるに値するテーマであるということでもあります。
N:soloの力量、たいへん優れている。とくに語り風の部分には説得力がある。伴奏はシンプルなのがかえって無駄の無い効果をあげている。


新婦人中央支部うたごえサークルルンルン(大阪)                    ピアノ/安達裕子
いのちのほほえみ」 (作詞/神田智代美 作曲/たかだりゅうじ)

F:すべて失った中での新しい命の誕生の喜びがしっかりと伝わる曲です。「あなたの手を取る…」の部分と「ひとりではない・・」の最後の繰り返し部分が同じような音の構成になっているので、「あなたの手を取る・・」のところのメロディを少し変えると最後の繰り返す部分がより新鮮に生きてくるのでは、と思いました。
H:詩もメロディも心地よく流ていきます。手話も効果的です。ウの発音、もう少し深く響かせると良いでしょう。歩き始め―
K:詞も曲も、はじめの二行の詞の扱いがとても気になる。事実だとしてももっと丁寧にあつかってほしい。おそらく、はじめにくるべき二行ではなかったのではないか。全体はソングとしてよくまとまっている。
Sa:詩の表現が少しシンプルすぎると思いました。
街が消えた 海に消えた   とても大きな恐ろしいことですが「そして」の接続詞一つで
人が〜 海に消えた     「あなたは生まれてきた」と続けるのはいかがなものでしょうか。
「海に消えた」と「生まれた」の間にドラマはないのでしょうか。この間こそ大切な人間の存在があるのではないでしょうか。
何もなくても愛がある   の「何もなくても」にもとてもひっかかります。
何もなくても人がいる  
少なくとも私は何もかも失くしてしまった被災者の方々の前で歌うことにためらいがあります。是非、ご一考のほど、お願い致します。
Su:Tシャツに9の文字、手話を取り入れた合唱は魅力的でした。大震災でなくなった命もあるけれども、新しい命の誕生もありました。その、新しい命への賛歌としてつくられています。「あなたは生まれてきた ちいさなほほえみ はこんできた」と素直なことばがいいと思いました。「歩き始めた」ということばで未来への希望を託しています。やさしいつつみこむような展開ですが、少し一般的な範囲で消化された感じもしました。もうひとゆ飛躍したイメージがどこかに生まれればよかったかな、と思いました。
T:いいテーマを捕らえましたね。メロディも言葉にぴったりで、いい歌になりました。欲を言えば、もう一つ突き抜けたものがほしい、という気もしました。一人ではない、からが特に印象的です。うまくいれられれば、その部分に、後追いのメロディ例えば、一人ではない(ひとりではない)あなたがいる(あなたがいる)と入れる方法も効果的かと思います。
N:街と人々の再生が新しい生命の誕生を中心にして力強く立ち上がっていく様が歌いこまれている。明るい洗練された声が素晴らしい。パフォーマンスも適切です。


関西紫金草合唱団(大阪)                指揮/本並美徳 ピアノ/森二三
街の灯」 (作詞/高元豊子 作曲/たかだりゅうじ)

F:味わい深い名曲です。最後の「私はくちびるかむばかり」の抑えたメロディが心にしみます。
H:歌い慣れた安定感はあるのですが、ハーモニーの中で音(声)のうすくなる時があります。なぜでしょう。
K:ひかえめだが言い過ぎずに、感情の襞をよくとらえた詞ですばらしい。現地との交流のなかで生まれた自然さだとおもえる。曲もわらべ歌風の味わいが作品に奥行をあたえている。良い曲ですね。
Sa:被災地の方を思う歌として、とても心に響いてきました。被災者の心に寄り添う心の距離感がすごく良いのです。とても響いてきました。曲の紹介の時、現地に支援をしているとのこと、そして最後に「うたわせていただきます」という言葉。なんて素敵な人たちであり作者だろうと思います。評点☆
Su:陸前高田への応援歌としてつくられました。被災地の今を伝えていて、とても感動的でした。作詞もうまいと思いました。「波がさらった故郷に 今はしんしん雪が降る」と始まりは、演歌のイメージする世界ですが、そこは、曲もよくできていて、流されていないと思いました。「あったかい明るい街の灯が そこにもここにもあったのに」、そして「くちびるかむばかり」、複雑な心境をそのままことばに乗せています。街の雰囲気も伝わってきます。「笑顔が戻るまで」心をこめて歌いつづけていくことの大切さが、いとおしく思われてきます。しっとりと歌ってくれましたが、もう少し、快活さがsっても、曲はいきてきたと感じました。しかい、今回のなかでは水準の高い作品のひとつと思いました。
T:詩がいいので、音楽がより自然なピッタリのメロディになっています。しみじみとした、そして暖かさのあふれる良いうたですね。ピアノの伴奏も秀逸でした。
N:復興を街の灯に託した秀作。ピアノ伴奏もシンプルで日本風の節が散りばめられていてよい。Chorusも1人1人の力がそろっているので完成度も高い。


福井のうたごえ創作合同(福井)                      ピアノ/中村はるな

F:福井の創作、どれも素敵です。こういう作品を生み出し続けるみなさんの秘密が知りたいと思います。

虹の色」 (作詞・作曲/そんな街いいな合唱団)

F:虹の色は「あだきみあおあいむ」という発想が楽しいですね。そしてそれが幸せの合言葉、なんて素敵な曲だと思います。メロディもぴったりですね。
H:「よっ!!」が効果的で、曲を生き生きとさせています。明るく楽しいリズミカルで親しみやすいです。
K: なんだか調子も良く、幸せなうたですね、出だしのことば「あだきみ…」 わたしには意味ふめいです。
Sa:何かとってもほっとする歌でした。私だけかもしれませんが「あ・だ・き・み・あお・あい・む・幸せの言葉」といわれてもすぐに頭にピンときません。最初にもう虹の色を全部歌にして次に「あ・だ〜む 幸せの言葉」の2行にして歌い上げ、一から三の一行を「あ・だ〜心唱えれば」と連結するとピンとこないモヤモヤなしで、この歌楽しめると思ったのですが。詩人はイメージの流れをとくに重視する人です。あしからず。
Su:そういえば、虹の色の覚え方がありました。「あ・だ・き・み・あお・あい・む」というのは、はじめて知った感じです。これは、たしかに「しあわせの言葉」になるのでしょう。やさしい気持ちにふれさせていただきました。すべてに完璧でなくてもいいのです。できることを少しでもおこなって、進歩していけばいいのですから。
T:4曲の中では、この歌が一番印象的でした。いい歌です。ちょっと不思議な、おまじないのようなことばですが、新鮮ないいメロディがついて、すてきなうたになりました。
N:虹に託した人々の交わりがロマンティックに表現されている。

雨とわたし、きみは光」 (作詞・作曲/miki)

F:ふつうは嫌いな雨が「私のことをかくしてくれる」という発想、一つの世界観があり、自然体の詩とメロディが魅力です。
H:やさしい歌で心が和みます。「嫌いじゃない」「どんなでもいいや」にほっとしました。
K:おもしろいタッチのうたですね。だらだら長いかと思うと先きをよませてしまう。結局、現在進行形のタッチですね。音域が低くてマイク歌いでないと聞こえないとはおもうけれど、この詞にしては低すぎでないかな?
Sa:青春のうたとして新鮮な感覚で良いと思いました。気になったこと。「このままこうして〜いてもいいけれど」の行。もう少し深めてほしいなぁ。だって「私だけの時間」から「やっぱりさみしくて君に会いたく」なる私の間にあるとても重要な一行だから。そしてそこから「重い扉を押し開けても歩き出す」わけですから。重い靴、重い扉を支える言葉があったらもっと良いと思う。評点☆
Su:この曲はタイトルもよかったし、詩の心がこめられていて印象に残りました。「雨の音はきらいじゃない」「雨の香りきらいじゃない」、どこかフォークの世界に通しているようです。「重い扉押し開けて 光の中へと歩き出す」「きらいじゃない 素直に『好き』と言えないの」など、若い感性がイメージを広げていきます。
T:タイトルからして印象的です。詩もメロディも良くまとまっていて、耳にすっと入ってきました。演奏も良かったです。
N:雨によせて「私の心情」を見事に歌いあげている

眠れないあなたへ」 (作詞・作曲/山田文葉)

F:発想がいいですね。いろんなところに眠れない人がいて、それぞれへのメッセージがよくわかります。特に4番は秀逸だと思います。欲を言えば、後半2段のリフレーンがなかなか素敵なので、前半の音域やイメージが後半との差をつけられたら、メリハリが効くと思いました。
H:三分の四拍子にうまくのれていて、全体的な流れ、それぞれの声もよく伸びています。主旋律とオブリガートのバランスに注意したらもっと詩が生きるでしょう。
K:作詞の情況が不明ですが、もしもう少しユーモアかウイットに富んでいたら、この種の歌も有りかもしれませんね。ただ、これではなんとなく真面目で茶化しているわけでもない。かといって心うたれるわけでもない、作者の意図が知りたいです。歌ったみなさんの反応もしりたいです。
Sa:「眠れないあなた」が描かれていますが「そんなあなたに眠りが訪れますように」といきなり歌うのはシンプルすぎませんか。眠れぬ人の内面の心をくみ取る言葉があった方がいいなぁ。そうでないとますます眠れなくなるかもしれません。四番だけは皮肉になっているので良いのですが。
Su:世の中には、眠れない人たちがたくさんいるようです。この曲の発想はよかったと思いました。「夜勤を終えて家に帰って」きた労働者、「教室のなかでは一人ぼっち」の子どもたち、そんな人たちへのよびあかけになっていますが、四番、五番までくると、一般的なことばの捉え方になってしまいました。「理想の国…」などでなく、もっと身近なひとたちへの共鳴が大切だと思いました。
T:「夜」「眠れない」をうまく捕らえて、スケールの大きな歌になりましたね。メロディの音域が1オクターブの中なのですが、どこかその枠を突き抜けるところがあってもよいのかなと感じました。目が覚めてしまうかな?
N:大切な仕事を支える人と仲間の情景が見事に歌いこまれている。

うたごえ広場」 (作詞・作曲/山田文葉)

F:歌いやすく魅力的ないい歌ですね。皆さんの元気な笑顔を生み出すこと、間違いないです。
H:テーマソングでしょうか。ここから始まる楽しい時間が目に浮かびます。
K:ウエスタン調のノリのいいうた。よびかけるのにはとてもよさそう。もうひとつ、歌い足りないきもするが…。その時は、長い音で一声を。
Sa:楽しい雰囲気が出ていました。2の「会場づくり〜きれいに出来る」のところ「心ワクワク〜顔がほころぶ」に繋がるイメージの言葉にしたら広場のイメージもっと広がると思うんだがなー。
Su:軽快なリズムで明るい雰囲気がいいと思いました。若い人もうて、「ここに来れば気取らなくていいんだよ」という精神がいいのです。作詞としてみた場合、まあ、当たり前のことといえば当たり前のことですが、ここから、上達していってほしいと思いました。
T:歌いやすい、覚えやすいメロディで、オープニングでこのように歌ったり、テーマソングとして歌うには最適ですね。そのままの私とあなたで、一緒に歌いたくなります。
N:グループの団歌風のイメージ。明るくシンプルで素敵です。


山上茂典とその一座(広島)          ピアノ/加集希世子 ギター/山上茂典 ハーモニカ/田中活
戦争やめろ!」 (作詞・作曲/山上茂典)

F:ストレートなメッセージが上滑りにならずにリアルに伝わる曲と演奏でした。日韓音楽交流はじめ、様々な場で試されてきた山上さんの本領発揮の作品ですね。
H : パンチがあり、簡潔な詩にメロディがマッチしています。間奏でのピアノとギターとのバランスは難しいですね。同じ言葉やメロディの繰り返しには強弱や和音が効果的に使われていて説得力があります。評点◎
K:言いたい事をスパッ!とぶっけて、ストレートソングと言うそうな。街頭の集団的威示行動などでは有効な歌だろうとおもう。最近めずらしいうたで、あの歌唱力が必要だろう。
Sa: まさしく声をあげている人が一緒に歌える歌でとってもいいですね。ロックの魂がうたごえで蘇る思いがして嬉しい。評点☆
Su: ストレートソングの誕生です。ここまで、ロック調にたかめて、勢いのある熱唱になってくると、拍手ものだと思いました。歌詞もまさにストレート、直球勝負です。「戦争がまたやってくる/足音たてないで」の冒頭から圧倒されました。「戦争!やめろ!」その通りです。「人を殺すな ころされるな」の繰り返しも強烈でした。これは、作者自身が作詞・作曲・演奏・歌とやってこその魅力になっています。普通の合唱団ではできないと思います。だから逆に、インパクトを与えたと思います。
T:今回のオリコンの中で、私が一番心に響いた歌です。「戦争をやめろ」は、この音楽のスタイルがいいですね。フォーク調クラシック調ではこの力は出てきません。ぜひ、何度も歌ってください。
N:平和への強い意志が誇り風うに歌い込まれている。伴奏のリズムが戦争への行進曲にならないように祈りたいですね。広島の方々の平和への叫びが感じられる。デュエットの部分のバランス気をつけて。


どすこい(広島)               ギター/栗栖慎一 アコーディオン/高田龍治
戦へいくな」 (作詞/二見伸吾 作曲/栗栖慎一 補曲/たかだりゅうじ)

F:説得力のあるメッセージと力のこもったメロディが魅力です。合唱団でうたうと一層多彩な表現が可能になると思いました。
H : 楽器の音量が大きかったでしょうか。録音を聞いてバランスを考えるのも良いでしょう。Fを活かす為には静かな部分も必要です。「わたしたち〜」の和音は、もう一工夫ほしいです。
K:戦争の歴史を歌い込んだユニークな詞。いいと思う。同時に、このうたがみんなにとどくかどうか、もしんぱいです。
Sa: 詩と曲の迫力で、中身が頭を過ぎて行ってしまいました。
行くな〜殺されるな  に呼応するように一〜三の詩があると思いますが、もっと心に染み
行くな〜戦にいくな  るように言葉のイメージを整理して練ってください。
戦争は殺し殺されること、戦場になれば誰もが巻き込まれていく。そのことが、イメージとして鮮明に描かれていくと心に残ると思うのですが。事実と虚構から生まれる感情とイメージをもっと組み立てて表現して下さるよう。
Su: コミックソングがつくりたかったという話でした。できなかったので直球勝負に出た結果が、この曲でした。たしかに、直球です。ことばも硬質です。そして、歴史を回顧しています。男性2人、女性1人の構成でうたわれれいて、男性の声はとてもよかったと思います。「行くな 殺すな 殺されるな」のフレーズは当然のようにつかわれていますが、この導入部ですくわれた思いです。戦争の歴史をさかのぼっていますが、ただ並列しただけでは、今日性が生きてこないのではないかと感じました。現代にも「戦へいくな」というよびけてみたい現象はいくつもあると思います。迫力のある歌い方は魅力的でした。
T:この歌も心に響きました。歌も良くまとまっています。最初の4小節が特にいいですね。朝鮮戦争から始まる戦争の羅列は、評価が分かれるところだと思います。それがいい(必要)という人もいるでしょう。私はちょっと盛り込みすぎの気がしました。申し訳ないけれど日清戦争などは実感がないので、ここで世界がやや遠のくような。もちろんその後の中国に対する侵略は盛り込みたくなりますが、行間ににじませる手もありそうです。恐怖ではなく〜生きる私たち、の部分は、希望につながるようなメジャーの和音で行くアイディアもありそうです。自由を をD7→Gとか。次の「なくゆたかさを」も、そんな色で。
N:どんな戦にも強い意志と団結で対抗。人々の思いが表されている。20世紀は経済の戦、21世紀は民族や宗教の戦と言われているが、これからは世界の平和を祈るのみ。


広島合唱団(広島)              ピアノ/田中香月 アコーディオン/高田龍治
我らの生きる道」 (作詞・作曲/中野勝 補曲/たかだりゅうじ)

F:明るく格調高く宣言する歌になっていますが、前半がやや説明調なのがもったいないという気がします。心に訴えてくるメッセージがほしい。
H : 健康的で明るく親しみ易い曲です。整然とした作りでこのままでも良いのですが、最後のくり返しはアクセント生かし、テンポも思い切って揺らしてみてはどうでしょうか。
K:ストレートの直球の感。言いたい事の結論だけをかたっていて、これで説得力があるかどうか?この歌の前になんらかの 説得材料があれば その時はこのうたも生きてくるだろう。曲は歌いやすくまとまっている。
Sa: 堂々と正論を主張する曲だと思います。一般の人との交流で是非、感想などを聞いてください。この歌の“生きる道”はそこにあると思います。
Su: 合唱団入団一年目という作者です。歌詞はやはり硬いです。書かれていることはそのとおりなのです。どこかで、使われてきたことばのように思えてしまいました。ことばにふくらみがほしいところです。それでも、行進曲風の曲になっていたのが、救いといえるかも知れません。
T:元気があって、未来へつながるいい歌ですね。良くまとまっています。ぜひ、たくさんこれからも創作をしてください。
N:マーチ風のうたが平和への願い。私たち日本の進むべき道を大らかに歌いあげられている。しっかりとした発声で力強く歌いこまれている。

希望の明日」 (原案/広島合唱団 作詞・作曲/緒方一夫)

F:まとまりがあり、うまくできていると思います。が、もう一つ何か新しいもの、発送、言葉など期待します。
H : 無理のない音域で歌いやすくまとまっています。1番と2番の歌い分けは面白いです。最後の部分はもう少し音量があると印象が変わるでしょう。
K: コンサートお開幕にも使えそうなうたですね。うたいやすくて大きすぎずにちいさなサークルでもすぐにとりあげてほしですね。
Sa: 不思議な歌ですね。この歌はどんな時、だれに向かって歌うのでしょうか。「何か、うたい歌があったら言ってください」といっている歌のように聞こえてきます。希望の明日を拓く歌をみんなで出し合って歌えばそれが喜びとならないでしょうか。
Su: うたごえ運動をテーマにした曲です。「生きる喜びをうたいます」という、喜びの具体的なことばが出てきてほしいところです。表面的にきれいな言葉でかざっても、核心を追求する意思表示にはほど遠いのでないかと思います。「今日という日の向こう側」というような、豊かなイメージがひろがることばをつくりだされているのです。うたいやすいことばでつくられていると思いました。
T:この曲も良くまとまったいい歌ですね。最初のことばから印象的です。いま歌いたいからのメロディが伸びやかで特にいいです。欲を言えば、音楽を引き締め、ぐっと力を与えてくれるような仕掛けがひとつ欲しいと思います。たとえば、「今日という日の」の2小節、頂上の一歩前ですが、その前から続けてGコードではなく、G7→Cとか、E7→Amとか、ちょっと違った味つけをしたい気がしました。
N:全曲とは対照的に大らかに明日への希望を歌いあげている。Chorus、明るく力強い仕上がりです。


吾亦紅(広島)             ピアノ/田中香月 ギター/山上茂典 アコーディオン/高田龍治
パーキンソングを歌いながら」 (作詞・作曲/鎌田俊三 編曲/たかだりゅうじ)

F:感動です。いい歌が生まれました。全国に広げましょう。まずタイトルが衝撃的!「生きて生きて…」のエネルギーに圧倒されました。
H : 行基なんか吹き飛ばしそうな明るいメロディとリズム、そして歌声に好感が持てました。会場からも共感の手拍子が出ました。最後のOh、Oh、Ohからも丁寧にしっかり声を出していきましょう。K:むつかしいと言われる病気とのたたかいのうたがはじめてできて、きっとそこにはドラマもあったろうと思わせる あかるくてすてきな歌です。元気づけられます。
K:むつかしいと言われる病気とのたたかいのうたがはじめてできて、きっとそこにはドラマもあったろうと思わせるあかるくて すてきな歌です。元気づけられます。
Sa: パーキンソンの方々が自身でこのような歌をつくり歌っている。曲も歌もとても素敵でした。困難な病気を抱えていながらも勇気を持って歌いながら前へ進もうとする心がよく伝わってきて素晴らしい。評価☆
Su: パーキンソン患者の仲間10人でつくったという曲です。なんとも、おおらかで、元気で、勢いがあって、会場からは手拍子もおこるという、とてもいい曲に仕上がっていました。病気を苦にしないで「がんばってうたうけんね」という意気込みもよかったです。歌詞はかなり説明的で長いですが、病気の状況などは出てこないのです。だとすれば、もう少し単純にまとめたほうが、みんなでうたえるかとも思いました。しかし、演奏を聞いていて、「生きて!生きて!生きて!/笑って!笑って!笑って!」という繰り返していくことばの積み重ねが必要だったのだ、と納得のできるものでした。
T:すばらしい歌ができましたね。心に深く響きました。詩も歌も、良く洗練されていて非の打ち所がないです。「生きて生きて生きて」からのメロディが特に好きです。これからも歌い続けてください。
N:大変な病をパーキンソングと(笑い)歌い流しているパワーに感動しました。「うた」は生きる力そのものだと思います。明るくて素敵なうたでした。



北の国から合唱団と全道の仲間たち(北海道)       指揮/高畠賢 ピアノ/岩井沙織
ガンバレ!・・・わ・た・し」 (作詞・作曲/新日本婦人の会応援ソング制作チーム
(佐藤幸恵・佐藤みどり・桑田康徳・高畠賢))

F:毎年創られる日々の暮らしの応援ソング、これも素敵な歌ですね。こういう歌作りの積み重ね、応援します。
H:女声合唱でストレスの多い日常をあえてさわやかに歌い上げました。セリフも頑張りましたね。(セリフもタイミング、発音、音色等、習が大変ですね)最初のア・カペラでグッと引き寄せられました。
K:未だ小さいこどもに心を残しながらはたらく若いかあさんの気持ちが良く出たいい詞です。集団創作でここまでいったのはすばらしいです。でも、このうたは詞の段階でなにを言いたいのか(ことばに現れている表面上のことだけでなく)全体として“なにを歌うことで、お母さんを励ますことになるのか“その芯になるものをはっきりさせた方がいいと思います。その意味ではひとことたりない、日常性はうまくとらえてはいますが…。この曲では、そのあたりがあいまいなまま詞のながれに引っぱられて曲としてのまとまりがなくなっています。できれば、この詩をもう少し話合って(おなじメンバーがむりでも)つくり直してほしい気がします。失敗作というより未完成作です。いいうたになるはずです。
Sa:仕事を持つ若い母親たちの気持ちが痛いほどわかってきます。それの痛さをストレートに出してしまった方がよいと思います。「ふっと思い出すあなたの笑顔」はとってしまい「泣きたいぐらいのストレス胸に溜め込み」「仕事半ばで席を立つ」姿こそ真実なのですから。そのかわり「わかっちゃいるの〜そっと灯り消す」の連はストレスや不安を鎮めるところなので、もう少し考えて、心が軽くなっていく表現がほしいと思いました。
Su:若いお母さんたちを励まそうとしてつくられた曲です。歌詞は、現代詩の領域に入るようなイメージで、日常生活の一部をきりとっています。生活実感がかなり取り入れられていますから、観念的なところは感じさせません。ただし、台詞がはいってくる部分などに深みがほしいところでした。タイトル「ガンバレ!…わ・た・し」はわるくはないですが、もう少しイメージがふくらむようなタイトルにする工夫がほしいところでした。
T:ちょっとかわいらしくてせつなくて、いい歌ですね。アレンジも秀逸です。ただ、メインテーマが今ひとつわかりにくいので、もう一連、リフレインとして、一番伝えたいメッセージがあるといいのかなとも思いました。
N:家族を支えるパワーがほほえましい情景と共に歌いこまれている。全員の素直な明るい発声がとても素敵。ハーモニーを醸し出しています。

私は日本国憲法です」 (作詞/永井和子 高畠賢(台詞) 作曲/高畠賢 編曲/高畠賢・佐藤幸恵)

F:憲法の素晴らしさを見事に語りと音楽で表現されました。説得力のあるうたです。ただ、4部合唱の、特にベースの音の配置が気になります。
H : 平易な語り口、動きの少ないなだらかなメロディラインに重みを感じます。朗読劇に近いでしょうか。(3)の入り方が少し不安定に感じました。あえて穏やかな音の流れの中で深い思いを表現しようと創作者の挑戦を感じました。
K:詞の着想がとてもすばらしいとおもいます。曲もこれをよく生かしています。歌いやすくするためか、同じメロディをくりかえしていますが、結果としては変化に乏しく、平板にきこえます。それに後半はいつも四部で曲の印象も似てしまいます。以下は、私の希望です。
1.この歌の緊急性から言って、歌いやすい広すぎない音域で、メロディだけか、精々二合唱どまりにする。(もちろん、大きなステージのために四部の用意もあっていい) 
2. 曲の印象をはっきりさせるために、一番大事なところ、と、歌い始めの魅力 を徹底的にだいじにする。
3.ナレーションのバックを ハミングでもできるように配慮をする、など。いずれにしろ、平和憲法のうたの あたらしい、すばらしい、切り口だとおもいます。
Sa: 「9条を守る」とか「憲法を守る」という言葉をただそのまま歌っても知らない、分からない人にはイメージが湧かないものです。私はこういう方法でアピールする事も大切だと思いますのでコミック的な笑いも居れてどんどん作って試してもらいたいと思います。とても良い試みだと思いますので、改良していってください。
Su: 憲法が身近にあることを詩にしています。作者は詩歴のながい詩人で、うたの詩にも定評があります。この作品も力作です。「私は日本国憲法です」という立場にたって、27条なら「職場の差別」などのときに「思い出してください、私のことを」というように展開されていきます。全体に長いです。それは、憲法の条文からの事柄が台詞として使われているからです。「憲法27条には、労働者の権利・義務、…」といい、「宮城県の最低賃金は現在710円ですが、この時給で年間2000万円稼ごうとすると、なんと2817時間働かなければなりません」というように、です。その着目点は面白いし貴重だと思いました。しかし、このような会場でうたうには、時間がかかりすぎたと思いました。
T:今歌われなくてはならない大切な歌です。27、25条をまず持ってきたこともいいですね。低いところから、少しおさえた出だしが印象的です。朗読の部分ですが、ピアノよりも、ハミングのほうがよいのではないでしょうか?(3回のうちの少なくとも1回は。)ピアノがちょっと勝ってしまって、朗読が聞き取りにくいときがありました。(音響の問題もありますね)あと、欲をいえばですが、8分にもなろうという長大なこの歌が、延々八分の六で、ハ長調というのは、音楽的にやや飽きる感じです。最後の連とか3番は違う調で(半音upでもいいですし、違うアイディアでも。)はどうでしょうか?ほかにも、音楽的にもっと深く拡がる展開がありそうです。このドドドドの主題が、違う音から出てくると、それだけで希望がさらにわいてくる気がします。
N:私たちの暮らしの根本の願いが具体的事例を通して訴えられている。セリフの部分がとても効いている。

つながっている〜第50回矢臼別平和盆踊りによせて〜」 (作詞・作曲/高畠賢 編曲/高畠賢・佐藤幸恵)

F:「矢臼別・・」以降の気持ちの入るメロディと言葉、いいですね。つながることの意味がよくあらわされていると思います。これも、上記の「私は日本国憲法です」と同じく、4部合唱のベースラインが気になります。
H : 人狩りを感じる安定感のあるメロディとハーモニーでとても心地よく響きました。23小節目〜28小節目は上手に盛り上がりました。47小節目からは、もう一工夫してみてはいかがでしょうか。
K:よく考えられて、うたいやすい うたです。が、盆踊りの発想があってもいいかも。なお、「つながっている」のことばが、今や うつろに使われすぎていて、これを乗り越える深い観察が欲しい気もします。せめて、タイトルを変えてみる事も…。
Sa: :矢臼別でこの歌をうたえば本当に熱い心がみちてくると思います。矢臼別の歌ですね、これは。
Su: 「つながっている/空はつながっている」というイメージにひろがりがあります。そして、矢臼別のたたかいと、沖縄、福島ともつながっているというのです。うたいかたや曲のはこびはとてもいいと感じました。詞のポイントになっている「つながっている」ことからの発展がほしいところでした。「堂々とゆるぎなく/歴史をつないでいる」というのは、うまくまとまりすぎた感じがします。
T:高畠さんのメロディつくりには、天賦の才を感じます。これもいい歌ですね。まず最初の4小節がすばらしいです。馬がいななくという詩が新鮮ですばらしいです。そこの同じメロディに2、3番歌詞もうまく乗りました。成功作ですね。
N:矢臼別のフェスティバルのテーマソングとして最適です。Chorusの出来栄えもとても優れている。


文化集団このゆびとまれ(千葉)           ピアノ/石塚早恵
伝えよう」 (作詞・作曲/石塚さえ サポート/武義和・山本忠生)

F:「伝えよう」の繰り返しが多いですが、伝えたいことをうたうことができれば必然的に伝えようという意味が解るのだと思います。調子を出すために「伝えよう」と繰り返していると焦点がぼけて今うかもしれません。「伝えよう」は最後の一言だけにして、そこまではカットして作られたほうが引き締まるような気がします。
H:テンポよく明るくさわやかなメロディーです。もう少し印象的なやま場があり、曲全体のメリハリを効かせるともっと良くなるでしょう。
K:詞はそれなりに 実感もあるがメロディ発想の方向がまちがえたかな、とも思う。うたいやすいが、曲のモチーフの段階でもっとねばってほしい。
Sa:伝えたい内容が言葉として表現されているか、気持ちが先だってないか。そんな想いが私の気持ちに残りました。
Su:男性2人、女性1人の3人の構成で、マイクをつかってうたっていましたが、ちょっとさびしい感じがしました。音程も多少ぎこちなくききづらいところもありました。「核兵器はもう いらないの叫び/伝えよう 伝えよう」というのですが、歌詞は一般的で、個性が感じられなかったのが残念でした。曲の展開も難題のようでしたが、もっと、明るくしてもらったほうがよかったと思いました。
T:詩を良く練り直した結果、より良い歌になりました。いい歌です。つたえようのメロディもいいですが、私が好きなのはその後、あの夏の日からの反復進行での上行です。ここがいい。詩もいいですね。ぜひみんなで歌いたい。6小節はGよりBmのほうがいいか?この歌は演奏のかたちをもう少し変えると、100人でも200人でも歌える歌になります。まず、ピアノ伴奏が今のままでは重い。これならギターのほうがいいです。打楽器も入るといいかな。次に調、この調では低すぎる感じです。会衆と歌うにしても、2度上げてA調、合唱ならBb調でも良いと思います。(最高音がEb)
N:平和への願いが世代をつないでいくことの大切さを訴えている。3人の素朴な声がそれを表現している。


フリーダム(岡山)        ピアノ/原田義雄
花降る惑星」 (作詞/石黒真知子 作曲/原田義雄)

F:壮大な詩を見事に美しく鮮烈な曲に仕上げられたことに拍手です。ピアノもいいですね。合唱団で歌えたらいいですね。
H:詩の発想が面白く、音楽ともよく合っていて紙芝居のような…次の場面を想像するのが楽しいです。題名も綺麗です。(花降る惑星)声(ハーモニー)もうまく調和しています。ナレーションの声もそれぞれに美しいです。利き手の想像力も育てられます。評点◎
K:まず、詞の自由な発想がすばらしい。意表をついたあたらしい着眼で今の人類が直面している危機の本質にせまろうとしている。石黒さんの代表作に一つといえるのではないか。曲も演奏も(わずか、3名だが、)充分に練られていてすばらしい。今年、一番の収穫。
Sa:前半に人の寿命は一分と強烈なイメージを受け取りました。「制限時間は一分、一分間」としなければいけないのでしょうか。「たった一分」の一言で十分伝わってきたと思います。「席を蹴る」どころか「突き立てたまま果てた」となってしまうのではないでしょうか。「それぞれ暦をめくり部屋をでていく」というところ、暦と一分の人生との象徴する言葉があったなら、最後の連に出てくる花ではない暦が人間の花びらのように散る死と重なって一見美しく実は恐ろしい風景がもっと聞き手の心に描かれると思うのですが、いかがでしょうか。もう一つ、「娘さん〜大声で啖呵を切ってやれ」の一分の人生の象徴的表現として弱いと思いました。(実際寿命の表現としても)ただし、「一枚だけのあなたの暦」が実際の一生分の時間の象徴だとしたら、それを表現する言葉があったらと思います。どちらにしても限定された人間の花が花ふぶきとなっている恐ろしい光景を思い浮かぶからです。
Su:原田道雄さんは視力が不自由中なようでしたが、声はよかったです。それにしても、石黒真知子さんの詩がとてもよくできています。「花降る惑星」のタイトルは地球と宇宙そのものだったのです。スケールの大きな詩の世界です。「50億年の地球の年齢を 100年に縮めると」という発想はおもしろいし「ヒトの寿命は一分」という発見はするどいものがあります。「世界がもし100人の村だったら」と共通するところがあると思いました。「窓の外は花ふぶき…風に舞っているのは たくさんの 暦」と結ばれていきます。ここまでは曲がついていました。そして、最後の3行が語りになってしまいました。ここはなにか付け足しの感じですし、「銀河のテラスから女神が暦をまいている」には感心できませんでした。せっかくの美しいイメージのなかに「女神」はいらないと思った次第です。
T:会場で聴かせていただいたときには、演奏がすばらしいとか、原やんがピアノ弾いてる!とか、脇のことにも心を奪われたせいで、「いい歌だ」というぐらいしか感想がかけなかったのですが、あらためて録音を聴き、この歌は名曲だとあらためて思いました。壮大で身近な詩がすばらしいのはいうまでもないのですが、音楽が詩の深い世界をしっかりと捉え、新鮮な音使いの中に、スケールの大きさはもちろん、しっとりした感性も併せ持ち、名曲に仕上がっています。何回か聞くたびに新しい発見や感動があります。合唱曲としても歌えますね。
N:たったひとつの地球。その歴史を辿り、これからの全ての生き物、存在を存続させるための大切なものを訴えている。素敵なバラードです。3人のうたの生きがぴったり合っていて、良いハーモニーが生まれている。


コンパ DE わかくさ(奈良)     ギター/浦西寛
Only one」 (作詞・作曲/一村好郎 編曲/コンパ DE わかくさ)

F:「新しい人生をスタートする若者に」というサブタイトルがあり、その若者のことをOnly one と言っているのだと思いますが、「君」と「僕」の関係がちょっとよくわからないのがもどかしく思います。一般的な内容ですので、Only one の君のことがもう少し具体的に語ってもらえたら、と思いました。
H:さわやかな応援歌で2人の音質も合っています。クラス合唱などにも向いていそうです。
K:結婚式のおくりものらしいあかるいソング。もりあがるでしょうね。
Sa:only one実に悲しい歌だと私は思いました。
Su:甥ごさんの結婚式のためにつくられたといいます。ギターをひいて、男性2人でうたっていましたが、声が小さく届いてこなかったのが残念でした。「オンリーワン 君は 僕の夢」とうたうラブソング、やさしさは伝わってきますが、どこか、ありきたりです。「さみしい」「かなしい」「くるしい」その中身がほしいのです。もっと独自の特色のある世界がを描いてみてほしいと思いました。
T:出発する若者へ贈るのにふさわしいいい歌だと思います。しみじみと心に届きました。Only one の部分、たとえばEEFとハもらせるともっとひろがりそうです。11小節は、やや無理がある気もします。その小節はいつもきみが、だけにして笑ってるを、次の小節の3拍目までに入れる(たとえばシシシドレとして)いかがでしょうか?
N:「only one」の言葉が繰り返され、効果的に歌い散りばめられている。2人のいたの息もぴったりです。


宇治作業所分会コーラスななかまど(京都)    ギター/村田昌志 ギター/中倉嗣久
うたいたい うたがある.」 (作詞/宇治作業所のびのび班 作曲/うた草)

F:リフレーンが歌いやすく魅力的で素敵ですね。仲間たちと職員の確かな絆を感じる詩の中身とのびやかなメロディでした。「オーイ!」が効いています。
H:歌う喜びが伝わり広がって、そこに居る皆が笑顔になるようなステキな愛唱歌ですね。演奏だけをゆっくり聞くとまた違う味わいでしょうか。
K:作業所を巻き込むようなあかるい活気がいいですね。詞はややかんさつ不足で作業所の個性がもうひとつ感じられないのは残念。
Sa:歌いたい気持ちが伝わってくる歌です。声をあわせて歌ってください。仲間と一緒に。
Su:障害をもつ人たちとともに過ごし、いっしょに仕事をしている、歌の好きな仲間たちです。明るくて元気があって、さらに手話を振付けて、軽快にうたってくれたのよかったです。「うたいたい うたがある/うたいたい ゆめがある」と、すべて、ひらがなにして、やさしいことばをつなげています。途中で「オーイ!」と掛け声がかかるのもいいです。
T:元気が溢れる、歌いやすい良い歌が生まれましたね。リフレインの最初の4小節がとてもいいです。5段目のB7→Emの使い方もうまい!
N:毎日の生活の中で「うた」の大切さを問いかけることの大切さを痛感します。7人の息がぴたりの演奏でした。


仙台合唱団若星Z☆(宮城)           ピアノ/小林康浩
明日を目指して〜秒速500mで〜」 (作詞/春日裕史 作曲/小林康浩)

F:「秒速500mですすむ明日」という表現はじめ、どの部分も手あかのついていない新鮮なことばになっていて素晴らしいと思います。今を生きる若者の思いがうまく引き出されていると思いました。毎年の「若星」の作品と演奏を楽しみにしています。こういうレパートリーを全国の若者に広げたいと思いました。
H:前奏からのピアノの音が綺麗です。オブリガートのハーモニーだけの連取で音色を合わせてみましょう。
K:詞も曲もねらいがやや一般的だが、いまふうのスピード感をもりこんだ面白さがある。
Sa:秒速500mというインパクトのある言葉が青春のどんな心を象徴しているのか。そこの所を深めて、整理してつないで言葉にするとワクワクするような青春の歌ができそうな気がします。だって秒速500mですよ。「僕の心は1万ボルト」なんていう歌もあったけど、それどころじゃない。詩における象徴、表現に是非取り組んでください。
Su:合唱団の名前は「ワカスターズ」と読み、若い人たちの集まりという意味だそうです。男性4人、女性3人、マイクを使っていました。「秒速500メートルで進む明日をつかみにいこう」という、この「秒速500メートル」の示すものは何か、です。地球の自転で一日分ということだったのです。面白い発想に若い感性が満ちていて、新鮮さがあっていい作品に仕上がっていたと思いました。「モノクロの日々駆け抜けていく」や「両手でフレーム作り/今をきりとった」などもうまい表現でした。しかし、「胸(ここ)に」という読ませかたには疑問が残りました。「胸」(むね)でもいいのでは、と思うのです。路上ミュージシャン的だなと感じたのと、歌がちょっとついていかなかったようでした。合唱の問題です。
T:歌も詩も、演奏も心地よく響いてきました。わげすたーずならではのいい歌です。ただ、年齢の離れているおじさん(お爺さん?)としては、「秒速500メートルの明日」の実感が持てずに、未だに少々戸惑っています。
N:選び抜かれた言葉を組み合わせてのいいイメージ、雰囲気が出てる。ハーモニーが厚い。マイクのバランスもう少し工夫して。


うたう仲間TOMO 男声合唱(静岡)    指揮/菅ヶ谷巌 ピアノ/西野早苗
漁師のせがれ」 (作詞/橋本弘 作曲/菅ヶ谷巌)

F:「エンヤサー」が素敵です。こうした労働の歌、家族の歌は味わいがありいいですね。テンポはもっと遅くしてみたら?静岡の合唱発表会でもコメントしましたが、3段目のメロディを4段目と同じ形にしたら全体が引き締まり生き生きとしてくると思います。
H:砂の音が印象的です。全体的におとなしく、真面目な演奏でしたが最後のかけ声で曲が生き生きしました。これから歌いこんで、テンポを揺らしたりハーモニーを加えたり曲を成長させていくのも楽しみです。
K:今どきめずらしいうた。ロシア民謡風だがなかなかすてがたい味もある。菅谷さんがんばって!
Sa:魚が獲れなくなって漁師の数もどんどん減っているとTVで報じていました。歌を聴くと漁師のせがれという言葉がとても心に染みてきて素敵な曲だと思います。評点☆
Su:7月の創作合宿でつくられたといいます。12人の男性が勢ぞろいした舞台、格好よかったです。演歌の世界の歌詞に仕上がっているのようなので、どうなるのかな、という期待をもちました。駿河湾の風景を背に民謡調にうたわれたが、やや、平凡な域のように思いました。歌詞がうまくまとまりをみせていたことが、逆にドラマ性の薄いものになったのかも知れないと思いました。「親子の絆」を表現する、なにか強く響くことばがほしいと思いました。
T:毎日駿河湾の海鳴りを聴きながら少年時代を過ごしたものとして、光景や海の匂いまで漂ってくるようで懐かしかったです。いい歌です。こんないい歌なのに、あっけない感じがしました。2番の後とか、3番の後にもリフレインとなるべき部分(ちょっとだけ明るくなるのもいいですね)が入ると、さらによくなる気がします。ことばではなくエンヤさっさの繰り返しでもいいですが。
N:力強い詞、かけ声が効果的(エンヤ〜)。シンプルな言葉が無駄なく情景を生み出している。力強いユニゾンが素晴らしいです。


再生の大地合唱団(東京)   指揮/安藤由布樹 ピアノ/戸梶江吏子
合唱朗読構成『再生の大地』より 序曲『大地』」 (作詞/大門高子 作曲/安藤由布樹)

F:国境を越えて演奏し続けてきた成果を感じます、力作ですね。(こうした組曲をまとまって演奏できないため毎年少しずつ発表というようになると思うのですが、今後のオリコンの課題なのです。)
H:指揮者のもと、心ひとつに練習した様子がよく表れていました。組曲の他の曲も聴いてみたいです。
K:ここ数年この組曲の部分を少しずつ拝聴しています。「奇跡ともいわれるであい」をうたった…と楽譜にありますが、わたしの理解では、テーマは「中国での日本兵・戦争犯罪者の人としての“再生”」をとりあげた壮大なそしてある種、哲学的なものです。限られた演奏時間で,組曲のどの部分を演奏するか?きっと毎年苦渋の選択をされたこと(今年は、序章のみ)でも、演奏してくださったこと、感謝します。(以下、このテーマの大事さから、私が聴くことができた幾つかの部分を重ね合わせて、感想をのべます)
旺盛な創作意欲に感心し、敬意を表します。詞も曲も手慣れた力量を感じます。演奏もまずまずの出来、やはり、全曲を聞きたいです。さて、実際にあったこととはいえ。むつかしいテーマだとおもいます。「殺戮を命じた者と、命じられて実行したものはどう責任をわかち合うのか?」”罪を許す”“罪を認め悔い改める“という難しい行為を集団としてなしとげた両者の人間を深く追求してほしいとおもいます。そうでないとどうしても予定調和的なハナシの運びになってしまう、”物語の筋は見る前からわかっている“わけでこの場合、この場合、お話し・ストーリーは あまり大事な要素ではないのです。中国の人が”どうしてそんな発想になりその葛藤を乗り越えられたのか”逆にいうと、日本兵が加害者である時の葛藤をしっかり描くことに、そこに、相互理解に通じる道その秘密もあるのでは…という気がとてもします。大切な事は「人間を描く事がテーマで“物語をなぞる事”ではない」ということです。聴き手の人間性の本質にするどく問いかける執念がいるのでしょうね。まず台本、歌詞の切り込む矛先、超テーマの設定と構成力が決定的に大事です。こころ許せる複数の創作者の協労があるといいですね。方向を間違うと、その善意と努力にもかかわらず「説明的連曲」(=善意の押し売り=お説教)になる。大変なお仕事ですが、その前進とご成功を心から期待しお祈りします。私も勉強するつもりです。Sa:実は私は撫順戦犯管理所に入っていた元憲兵の話を脚本にしておりまして、大いに興味を持ったのですが、全12曲の合唱朗読構成ということですので、序曲だけでは講評はできないと思いました。申し訳ありません。
Sa:実は私は撫順戦犯管理所に入っていた元憲兵の話を脚本にしておりまして、大いに興味を持ったのですが、全12曲の合唱朗読構成ということですので、序曲だけでは講評はできないと思いました。申し訳ありません。
Su:12曲構成のなかの「序曲」のみの参加でした。東京のうたごえ祭典では「満州国撫順」「平頂山事件」「覚醒(めざめ)」の3曲をきいています。そのときも感じたことですが、長い構成の組曲の場合、やはり全体像をみてみないと評価するのがむづかしいということです。戦争中の中国大陸での日本軍兵士たちが、シベリアに送られ、ふたたび中国の撫順の収容所に収容されます。そこでは戦犯たちと職員たちとの交流があり、「人間の証」として、自己批判をして、鬼から人間へと変化していくことなどが主題になっているようです。この「序曲」は、その導入部にすぎませんので、評価はできないように思いました。音楽は「壮大なオーケストラのように」響きのある壮観さがありました。
T:東京での感想にも書いたとおりですが、この壮大な合唱朗読構成劇を作っていった過程に、心よりの拍手をお送りしたいと思います。
N:全12曲の中の序曲らしい、全曲の内容を暗示する雰囲気が出ている。


この灯を永遠に25周年星野村の復興を願う有志合唱団(千葉)   指揮/安藤由布樹 ピアノ/戸梶江吏子
よみがえれ星野村」 (作詞/星野中学校生徒 作曲/安藤由布樹)

F:魅力的な曲ですが、今一つ輝く特徴のあるフレーズがほしいと思いました。
H:星野村の空気のように澄んだ美しいハーモニーが心地よく響きました。歌い出しの「よ・み」は言葉をたてて深い響きにすると説得力が増すでしょう。
K:自然なながれでとてもすてき。これでいい、と言う気もしますが、こんな祈りもあっていいが、曲も詞も円満すぎないか、と気になる。生徒達の言葉で編まれていたとしても、彼らがいいたくても言切れない想いをさぐってくれたかどうか?評者の心のせまさかな…。
Sa:静かに心に響く曲でした。
Su:この曲の東京のうたごえ祭典の発表できいていました。福岡県の星野村、「原爆の灯」で有名ですが、2年前に集中豪雨の被災にあいました。そこから、「星野中学校の生徒たちの言葉をもとに」安藤由布樹が作詞、作曲したものです。中学生たちのことばをつかったことで、わかりやすい世界がつくられています。「ひとすじの灯り」や「平和の灯り」などのことばが多く登用されています。本来なら、ここからイメージを羽ばたかせほしいと思うのです。「平和の灯りに/いのちを注いでおくれ」という訴えはとても大切なことだと思いました。懸命にうたっている姿は感動的でした。
T:これも前回と重なりますが、とてもいい歌だと思います。中学生たちが喜んで歌う様子が目に浮かびます。
N:星野村へのふるさとの憂いがあふれている詞とその音楽です。復興への願い、切ない祈りが選びぬかれた素敵な言葉に込められている。伴奏も無駄がなくシンプル、それに乗って大らかに旋律が歌い上げられている。



★2014愛知の創作大行進(愛知)

愛知子どもの幸せと平和を願う合唱団(愛知)   指揮/藤村記一郎 ピアノ/夏目順子
とんでけ紙ヒコーキ」 (原詩/三浦節子・清水則雄 作詞・作曲/清水則雄・林明子・佐伯知保・平松美磨・脇谷裕乃・風間秀樹・藤村記一郎 編曲/藤村記一郎)

F:自分の関わった曲につきコメントなしです。
H:子ども達への願いがよく伝わる曲です。親しみ易いめろでぃと言葉でどこかなつかしい響きでした。テンポのずれた部分があり惜しかったです。副旋律の練習を増やすとハーモニーが安定するでしょうか。
K:とても楽しい演奏だった、が少しかげりのある明るさ?と感じた。単純な詞だが、おもしろいうたになっている。大人達はちょっとタジタジの感もあったな。
Sa:福島の子供たちと交流しているとのこと。紙ヒコーキのイメージに福島子ども達のどんな心をのせていくのか。子ども達の声を、心をくみ取ってもう少しありきたりでない言葉はありませんでしょうか。
Su:福島の子どもたちとの交流からうまれた集団創作のひとつです。たくさんの人たちの思いがつめこまれたのだ思いました。「紙ヒコーキ」に願いをたくして飛ばすというイメージはひろがりがあっていいと思いましたが、いますこし単純すぎたきらいもありました。それでも、うたいやすくひろがるために、曲にも工夫がこらされていて、歌う姿勢もなかなかよかったです。
T:ここからは当日は演奏を聴けなかったので、録音での感想となりますことをお許しください。ことばにうまく乗って、紙飛行機のように軽やかないいメロディですね。歌いやすいです。Cmの部分、またFへの転調も良くできています。欲を言えばどこか、もう一つ突き抜けた部分も欲しい気がしました。主メロディが、やや全体に低空飛行気味なので。
N:福島の子どもたちの交流の願いがよく表現された詞です。たくさんの世代のうたごえがとても素敵でした。


名古屋青年合唱団うたの学校昼のコース<アガトス>11期(愛知)       指揮/武藤佳子 ピアノ/小関記久子
ふうちゃん」 (原詩/小川志寿恵 作詞・作曲/小川志寿恵・小森輝世子・長田尚彦・宮地志津子・高橋三男・
加藤信子・勝初美・猪子瞳・水野節・酒井俊一・伊藤景子・井上友子・武藤佳子)

F:短い命と言われたにもかかわらず、その後みんなの中で元気に成長していくふうちゃんの姿が自然にいきいきと語られていて感動があります。「短い命と言われた娘」「力いっぱい生きていく」のメロディがあまり沈まないほうがいいと思いました。
H:成長を見守るあたたかい眼差しがそのまま歌になったみたいです。言葉に合わせた表情や発声ができるともっと素晴らしくなるでしょう。
K:そぼくなあじの暖かいうた。詞がうまれた情況が少しわかりにくいので、理解につい手間取ってしまう。詞の整理や配慮があってもいいね。
Sa:3連目にも「短い命と言われた娘」を入れてほしい。例えば「みんなに笑顔を振りまいて/短い命と言われた娘/力いっぱい生きていく」といったように。なぜかというと「短い生命と言われた娘」という言葉が強いイメージをもっていることとそれの反語として他の行があるからです。「短い生命といわれた娘」がそれを乗り越えて「力いっぱい生きていく」という鮮明なイメージにした方が私には響いてきます。
Su:「ふうちゃん」とよばれる赤ちゃん、そして成人式、さらにケアハウスに入所、という3つの時代設定のなかで、短いいのちといわれてそだてられた、ふうちゃんが、いつも笑顔をふりまいて生きてきたことが伝わってきます。最後の「がんばれ ふうちゃん/ありがとう ふうちゃん」は普通の詩の作品ならカットすべきところです。しかし、うたう歌には必要だったのかも知れませんね。
T:感情をちょっと抑えて、しっとりと暖かいいい歌ができましたね。みんなの笑顔が、のメロディが特に印象的です。ピアノ伴奏もぴったりで良かったです。
N:ふうちゃんをとりまく人間模様が微笑ましく綴られた詞が素敵です。ふうちゃんがみんなを逆に力づけているような感じが素敵です。やさしいうた声。とても感動的でした。


トヨタ労働者うたう会(愛知)  アコーディオン/入江文子
彼のつぶやき」 (原詩/藤山幸男 作詞・作曲/トヨタ労働者うたう会)

F:重い現実、簡単には変えられない現状への思いが伝わります。でも、このままこの歌を歌っても現状を変えるエネルギーになりません。難しいですね。
H:切実な詩ですが、曲とうまく調和しているように感じました。少し単調に聞こえる部分もあります。何か変化をつけるなど工夫してはいかがでしょうか。
K:カッコつけないで心寄せて書いた詞のよさがある反面、おわりの二行がなぜ?感ものこる。ここからはじめるとしても、さいごの二行をカットして、言葉でなく、かけごえ、うめき声などの、力ある音にする方法もあったのではないか。言葉にできない事を伝えるのは、本来の歌のいのちなのだから。
Sa:一、「仕事はとても辛かった/だけど住む所だけはありました/正社員だったら働きつづける」最初の2行は過去のことを言っているのでしょうか。今の所も正社員に「「なれなかったらやめる」ということなのでしょうか。二の「帰っても仕事がありません」は何を示しているのでしょうか。故郷に帰っても仕事がないということでしょうか。一、二、三のつぶやき、それぞれ置かれている状況が分かるともっと生きて伝わってくると思います。「頑張るつもりもありません、明日の事は分かりません」とっても重く感じます。そのようにしか言えない労働者たち。「彼らに心重ねて」ということですが、どんな心を重ねているのでしょう。前向き明日につながる心が届くような歌にしてください。聞いている私たしにもそれがわずかでも見えてくるような歌だと少しは救われます。
Su:トヨタの労働者の合唱団が、取材して得たことばをもとに集団創作したものです。タイトルにとおりに「彼のつぶやき」の形で構成されています。うたのなかでは「仕事はとてもきつかった/だけど住む所だけはありました」とか、「帰っても仕事はありません/がんばるつもりはありません」というように、心情を吐露する形でなっています。現代の労働現場にいる人たち、しかも、下請けの非正規労働者たちの本音をしらされた思いです。しかし、まだ、きれいごとの歌詞にとどまっているように思えてしまいました。最後に「彼のおもいに心をかさねて/俺は今日もはたらく」と結ばれています。この「俺」の立場は正規労働者の立場なのでしょうか、それとも、同僚に立場なのでしょうか、ということを感じてしまいました。連帯の気持ちがこめられたと思いますが、少し安易な感じがしてしまいました。
T:厳しい現実の世界にある仲間への応援歌と捕らえると、もう少しどこか「遊び」「希望」があってもよいのかとも思います。現実をそのまま音にするとこうなるのかも知れないのですが、(私などにはわからない世界なのかもしれませんが)明日につながる力を最後は感じて終わりたいと私は思います。最後の行、「おれはきょうも」を、このメロディではなく、一段上の「かれのおもいに」のメロディに重ね、はたらくを上に向かって終わるというのはどうでしょうか?最後の音は上のDで。
N:働くことの意味。その厳しさが納得できる言葉のつかい方に共感できます。働き続けることをつぶやきから学んでいる姿が見える。うたが揃っていて素晴らしく、かつ力強い。


名鉄わだち合唱団(私鉄)   ギター/脇谷直樹
2014私鉄のうたごえ祭典恋とあのヨ〜の片道切符より リニアは夢の超特急
(作詞/舟橋幹雄 作曲/中村はるひこ 編曲/名鉄わだち合唱団)

F:<名鉄わだち>らしい目の付け所とコミカルな作りがいいと思います。
H:子どもが語る夢と現実との対比が面白いです。「ちょっと待ってよ、考えようよ」はもう少し重みを感じさせる(テンポ?リズム?メロディ?など)工夫をしてはどうでしょうか。後半の半音の使い方は不自然に感じる事もあります。
K:とても良い問題提起だが、やや未整理のままで残念。音楽ももう少しくふうしたい。もうひと練り解りやすいものに完成させてほしい。
Sa:リニアモーターに対する不安な言葉。もっと的確に「だから反対なのか」と腑に落ちるように表現して下さると、もっともっとこの歌、広がると思います。
Su:鉄道に関わる人たちだけに、「リニア」にも関心がたかかったのかも知れません。「夢の超特急」へのあこがれから、「ちょっと待ってよ かんがえようよ」と問題提起をしていきます。「ほんとにほんとに大丈夫かな」という、批判的な姿が描かれていくます。しかし、少し安易な姿勢が気になりました。もっと強く、必要がないことを示唆できなかったのか、と思いました。うたいかたも少し頼りなく思えました。力強さがほしいところでした。タイトルにも一考してほしいと思いました。肯定的な感じでなく「ちょっと待ったリニア超特急」というような感じのほうがいいのではと思った次第です。
T:特に愛知の人はこのテーマにこれから向き合わなければならない、大切なテーマの歌ですね。もちろん賛同しますが、失礼を承知の上で歌にはちょっと注文を。まず最初の2小節はいいと思いますが、このメロディがここに一回しか出てこないで、次々に新しい要素が登場するので、全体のまとまりがなくなっています。3小節目か5小節目に、このメロディのA´がほしい気がします。9小節の反転はうまいと思います。しかし、13から16は、もう一度考える必要を感じます。この半音のゆれは「気持ち悪い」を表現するためならそれもありですが、ちょっと歌いにくいです。ぜひ再構築されて、たくさん歌ってほしいと言う願いをこめて。
N:リニアの開発の表と裏をさりげなく歌と詞で歌いあげている。ユニゾンのうた迫力あり。


愛知教職員合唱団きぼう(愛知)    指揮/藤村記一郎 ピアノ/夏目順子
優しい心は数字にできない」 (原詩/小崎真紀子 作詞/愛知教職員合唱団きぼう 作曲/藤村記一郎)

F:創作に関わった作品ですので、コメント控えます。
H:歌い易いなじみ易いメロディラインで安心して聞けます。歌詞には共感する部分が多いです。半音上げたことによって曲が生き生きしました。「信じること〜」かrの部分をもっと盛り上げたいですね。
K:いい詞ですね。曲もよくまとまっています。が、この8分の6の流れはこの詞にどうしても必要なリズムなのか?先生達のもっている「やりきれなさやいらだち」は、このステキな流れでいいのかな?詞の言いたがっていることと音のながれとの間にすこし違和感をかんじますが。「この詞に、どうしても必要なリズムや音 を追求するねばりをわすれたら」単なるメロディメイカーだ、とおもいますが…。
Sa:一、二は納得しながら同館しました。三は突然理想の展開で満点までつけてしまっていますが、それで仲間の教職員はどう思うのでしょうか。そして最後に「信じる事〜夢を語ること」という連が出てきますが、一〜三とどのように響きあっているのでしょうか。もう一つ、私には響いてきません。同感はしますが、響いてこないのです。
Su:学校関係の人たちだけに、「学校の現場」が主題になっています。「優しい心は数字にできない」ということは大切な観点だと思います。現在の教育現場と子どもたちのおかれている状況は、よくとりこまれていると思います。やさしい気持ちがこもっていて、未来が少し明るくなった気持ちになりました。
T:詩の伝えようとしていることに深く共感します。いい詩ですね。8分の6のメロディは、軽やかで覚えやすい、親しみやすいのですが、大切なことばが次々と流れて行ってしまう気もしました。聴きながら、歌いながら、詩を反芻する時間も必要かと考えると、4拍子にして、16分音符をつかい、歌の部分と休符の部分を半々くらいの歌にすると、沈黙の部分でそのことばをかみ締めることができるのではないか、と勝手ながら考えてみました。蛇足失礼。|みえるせいかをだせとい|う、、、、、、、、、、、、、|こどもとあぞぶじかんをけず|り、、、、、、、|  こんな感じで。
N:「数字にできない」というフレーズから学ぶことの意味、大切さを訴えているのがよく分かる。Chorusの全員がユニゾンで力強く歌いきっているのが素敵です。


名古屋青年合唱団うたの学校98期(愛知)   指揮/脇谷直樹 ピアノ/尾関記久子
ひ・み・つ 〜秘密保護法反対のうた〜」 (原詩/伊藤さち子 作詞・作曲/伊藤さち子・金沢貞子・勝初美・
和田一成・里村英人・斉藤義治・浜島康弘)

F:年代を問わず歌える楽しいフレーズ「ひいみつひみつ・・」がヒットですね。
H:わらべ歌のような歌い出しで、声色をうまく使いました。「どうして、どうして」とその答えとなる部分「私は言いたい〜」に続く部分をくっきり浮ぼりにできるように発音や発声に工夫がほしいです。
K:とても面白い。歌詞もそれなりに工夫が有り、どんどん使い込んで完成させてほしい。ただ、この種の歌は、演奏の工夫が無いと,聴き手に伝わらない。「そこまでが創作だ」と 執念をもってほしい。例えばだが、「わたしはいいたい」を繰り返してうたい、そのあとの大事な言葉を、もっとはっきりゆっくり歌いきる…など考えられないか。(細かい音符でサッ、とつづけてしまうのは歌い手も聴き手も、気持ちが、ナットクしないのでは?)
Sa:「秘密を流せば罰せられる」という言葉がないと他の言葉も生きてこないと思うのですが。「罰せられる」のでおちおち話せない…。面白い言葉の発想とテーマがあるので、言葉をもう少し組み立てて再構成を望みたいのですが…。
Su:これは面白かったです。「秘密保護法反対」に役立てたいです。劇作家の別役実さんも、もう20年も前に「ヒミツ・ヒミツ・ヒミツ・それはヒミツ」と劇中歌をつくられていました。まさに、今日の状況をいいあてていたのです。この曲も「ひみつ・ひみつ それはひみつ/なにがひみつ それもひみつ」とくりかえして展開していきます。うまい風刺は効果的な作用をしていきます。「私は言いたい秘密の法律いらないと」まさにそのとおりです。舞台では、もっと明るく、うたいとばしてほしいと感じてしまいました。
T:歌の入り方がとても印象的ですばらしいと思います。歌いやすくて、でも新鮮で力がある。3行目のわからないの後、私は言いたいの間に1小節か2小節の休符がほしい気がしました。私は言いたいを、仕切りなおしてきっぱりといいたいので。いい歌です。
N:「ひみつ〜」のフレーズが数え歌のように効果的です。国民の知る権利をユーモアと皮肉でさりげなく歌っている。ユニゾンの強さを感じる。


名古屋尾張東部のうたごえ(愛知)       指揮/藤村記一郎 ピアノ/尾関記久子 ギター/藤村記一郎
コマルソング〜お囃子つき〜」 (作詞・作曲/藤村記一郎)

F:自作につきコメントありません。
H:おもしろい!重い課題を上手に歌詞にして曲をつけてあり印象的です。若者にもわかり易いでしょう。評点◎
K:着想は買う、おもしろい。が、演奏者と聴き手に一体感がうまれるような仕掛けがほしい。音楽として沈んでゆく感じがつらい。今のままでは、アイディア倒れの感も。たたみかけるテンポだけでなく、途中で落ち着いて言葉を伝えきれるようなテンポの設計、と、3連音符または8分音符で追い込んでいるので、最後のフレーズで『コマルから、おいだそう!』など、スッカと歌いきるような工夫ができるともおもうが…。いま一歩改善を!
Sa:コマルとヒドイetcの連呼がもう少しコミカルに言葉の内容も、面白くなりませんでしょうか。中身はストレートで、だからコマルの連呼になっていると思うのですが、面白く伝わる響き合いとしては物足りないのですが…。
Su:作者がソロでうたったいましたが、うまいものですね。感心しました。正攻法の歌詞で、現代の政治状況を批判してことを評価したいと思いました。「コマル コマル コマル…」、本当に困ることばかりです。それだけに、これだけ声高に叫びをあげると、それなりの説得力をもって迫ってくるものがあります。これも、藤村さんの魂がこめられた舞台だからこその感動だったように思います。広島の山上さんの「戦争やめろ!」とおなじような効果があったと感じました。
T:タイトルは小丸ですが、大丸か二重丸の歌ですね。いい歌です。歌いやすいし、覚えやすく聴きやすい。藤村さんの世界が満開の気がします。ぜひたくさん歌いましょう。
N:困る〜のエコー効果が面白い。毎日の生活のペーソスをうまくリズムに乗せて歌っている。


愛知のうたごえ(愛知)  ピアノ/藤村記一郎 ギター/脇谷直樹
まいどり〜む」 (原詩/藤山幸男 作詞・作曲/藤山幸男・金丸理津子・藤村記一郎・和田一成・岩淵七子・小村公次)

F:関わった作品につきコメントありません。
H:前作同様、重い現実を明るくわかり易く訴えた曲です。詩に合わせた声色やリズムの取り方もあるでしょう。曲は良いので、表現者に一工夫望みます。
K:やや一般的な詞だが、どこかに素朴な味が有り、どうしても吹っ切るうたを作りたいという熱意が、熱っぽい曲に仕上がった。まだ、演奏の工夫はこれからだろうが、みんなでワメクだけの熱演だけでなく、大事な歌詞をソロにしたり、ほんとに苦しいピアニッシモのフレーズをはさんだり、聴き手に伝える努力を考えてほしい。だけど、エンデイング・4番の詞が「ラララ…」になるのは、どうして?せめて、間の手のセリフに「なんで?」「どうしてこうなるの?」など、問いかけ、茶化してみては?(この歌のタッチは、悪のり、?悪がって伝えるしか無い…だよね! わたしはきらいじゃないけど…)
Sa:細かいところ、もっと念入りに各ともっと面白くコミカルに伝わってくるのでは。たとえば「入社したら三十七万円」の「可」は文字ではすぐイメージできますが「カ」という声では反応できません。「WAO!」とか、もっと大げさに。あと、「協力社員というけれど」のところ、協力社員というのは夜勤に残業、休日出勤はしてはいけないのですか。してもkいいのであれば「協力社員にさせられて」こき使われるイメージにした方がよく伝わってくるのですが…。「つまり非正規」も「やっぱり非正規か」の方が会社の甘くない対応が伝わってくる。芝居風に朗読して、空いての言葉もいれて、真実の面白さを伝えて下さい。
Su:トヨタ労働者うたう会の取材のなかからうまれた創作曲です。就職活動の実態をとりあげたものですが、期間従業員の募集広告と採用の実態の違いなどが、ユーモラスな視点からとりあげあれています。「新聞広告にだまされた/オレの時間を返せ」という実態の告白に説得力を感じました。「普通に暮らしたい/普通に恋がしたい」あたりまえのことです。あたりまえのことがあたりまえでない世も中がおかしいのです。「神様 仏様 キリスト様」に助けを求めてもだめなんですよ、と、いいたいですね。男性のソロが中心でしたが、よっかたです。
T:厳しい現実を明るく笑い歌い飛ばそうというこういう取り組みは好きです。さびからの展開もいいですね。仲間由紀恵やキリストさままで登場したのには爆笑でした。
N:働く者の夢と現実を皮肉たっぷりに言葉たくみに歌い上げている。働くものの悲哀の中ひらき直ったたくましさもチラホラと……。うたが明るくて朗らかなのが救われる感じです。


中央合唱団(東京)    指揮/服部安宏 ピアノ/新井知子
OSPRY SONG 〜コマーシャルだよ オスプレイ!」 (作詞・作曲・編曲/Myou Myou)

F:オスプレイに限らず、こうしたギャグや風刺がもっとつくられるといいですね。今後も楽しい作品創りだしてください。
H:パロディというのでしょうか。前フリえお客様をグッと掴みましたね。ハーモニーもよくパフォーマンスも楽しかったです。まじめにダメダメと訴えるよりもズシンと心に響くこともあります。
K:ながれは、よくなったが、大事なせりふがきちっととどかない。でも、最近不作なこの分野 がんばってください。あとひとつ、ふたつないとステージの間 もたないよ!
Sa:オスプレイはアメリカのロッキード社製と思ったのですが、莫大な開発費のわりにはあまり売れない中、日本がお得意でもう十数機、発注しているはずですので、その暗い取り入れたらもっと面白くなると思います。
Su:東京のうたごえ祭典でも発表されていました。タイトルに風刺精神がこめられていて面白いとおもいました。CM風の前フリのせりふも面白い、「沖縄限定商品の本土向け特別放出品」という「オスプレイ」の売り込みです。いいところに目をつけたものと思いました。歌詞のもうも、「オスプレイ オスプレイ 買ってください」と繰り返すことによって、リズム感をつくりだしていた。「一機わずかに 六十三億二千七百とび六万円 安いよ」というあたりはなかなか巧みです。あとは、もう少し先鋭的な文句が出てきてもほしいと思ったのです。
T:東京でも書きましたが、アイディア賞です。良くできています。相変わらず轟さん以外のかたの演技が今ひとつでしたが(失礼・笑)。3行目からの音楽的挑戦は評価しますが、演奏が難しいですね。打楽器とかサックスとかギターなども入れて演奏したいです。
N:TVのコマーシャル風の皮肉たっぷりの風刺のうた。思わず苦笑いです。しかし笑ってはいられない不安が頭をもたげる。うたのコント、ブラック風味?