2013オリジナルコンサート講評集
<講評者の略号>
I:石黒真知子 O:小村公次 S:佐伯洋 TM:高畠賢 TY:武義和 H:原田義雄 F:藤村記一郎
曲名の最後にあるページ数はオリジナルソングブックの掲載ページです
■概要(うたごえ新聞掲載) 藤村記一郎
今年も昨年とほぼ同じ59曲が発表された。3.11以後ずっと向き合い続けている震災と福島をテーマとした作品が最も多かったが、他にも、労働・平和・いのち・家族・人生・ふるさと・教育、など幅広い作品が集まった。また、若い創り手も増え、作曲や演奏力の向上もあり、聴きごたえのある作品が多くなった。
特に「人という動物」(草村美和 作詞曲)が象徴的だったが、全国創作講習会(5月蔵王)の学びの中で生まれた多くの曲が、その後改作・練り上げ・編曲・演奏活動などを経て立派な作品としてオリコンに集まってきたことは今回の特徴だ。
しかし、厳しく辛い現実を前に、伝えたいことをそのまま言うだけでなく、どう作品化するのか、どこに光を当てるのか、言葉と音楽でどう多くの人の心に届く作品とするのか、創り手(直接の作者だけでなく生み出そうとしている合唱団なども)への重要な課題の指摘もされた発表会であった。
■総評(うたごえ新聞掲載) 藤村記一郎
今年は、18都道府県、3産別からの推薦による59曲が発表された。若者の参加、演奏の充実、聴衆の増加など、創作運動への取り組みの前進と期待の高まりを感じるものだった。創作部員3人による司会進行もテンポよく、昼休憩にも大熊啓プロデュースの新しいCDキャンペーン演奏もあり、全体として活気のある楽しいオリコンとなった。
花に託して少しでも前にすすんでいこうとする被災地の思いを暖かくうたった「花に誘われて」、同じく花の姿から生きる力を描く「水芭蕉」、人間を深く見つめ描こうとした「人という動物」はみな今年の創作講習会の学びの中から生まれた作品だが、そこからずっと練り上げられ良い作品となった。
「母ちゃんと呼べなくなったあの日」「reason for being」なども人間を見つめる視点の深い詩と作曲演奏の質の高さが光った。風刺や洒落の効いた「サンシャイン シスターズ」や「反<学テ>宣言2013」(作者の都合で当日演奏できず)などの役割も貴重だ。若者の辛い現実を描く「雇用ブルース」は、視点が良いだけに簡単に「自分らしく輝ける社会をつくろう」と結論付けないで、と改作への期待も出された。「夢をまく」「ジュゴンは歌う」など愛唱歌への期待も高い。
「フクシマは終わっていない」は議論を呼んだ。今はこのようにしか書けない、歌えない、という厳しい現実がある。一方、その中から、どう生きていく希望や人間としての感動を描くのか。たくさんの言いたいことを「てんこ盛り」にするのではなく、どうそぎ落として聴く人の心に大事なものを伝えるのか、は大変重要だ。
また、作曲や編曲、演奏力の向上によって、聴いていて心地よい形の整った作品も増えてきたが心に残らない、と言われるものもある。詩の求める内容に音楽が応えられていない作品もある。
創り手を育て創作運動を旺盛にしつつ、詩づくりについては特に学び高め合うことが求められている、そんなことを実感したコンサートだった。
■講評にあたって 武 義和
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よりよい作品にするために、また次の作品つくりのために、少しでもお手伝いができればと思って書きました。多少辛口の評もありますが、その意図を汲み取っていただき、失礼はお赦しください。
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Aの作品で伝えたいことを、同じ内容についてはBの作品のほうで書いていることもありますので、できれば他の評もあわせてお読みください。
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譜例(別紙)はあくまで研究のご参考に、であり、これが良いと言うものではありません。
■個別評
1 フリーダム <おひさまえがお>P.108
I:保育園の一日が目に浮かぶような、楽しいリアリティーのある歌詞です。シンプルで言葉のキレがいいです。先生の姿も「さけんでる」の一言で目に浮かぶように伝わります。
O:曲は2つの部分からなっているが、前半の生き生きとした音楽がいい。後半の内省的な部分はそれ自体としてはよく表現しているが、トータルとしてややくどくなっているきらいがある。タイトルに照らすと、前半部分を中心にコンパクトにまとめたほうがスッキリすると思われる。
S:なにげないいちにちのなかに、しあわせってあるんだね。印象的な詩で、絵と場面が浮かんできます。楽しく活気ある演奏でした。
TY:暖かくて楽しくて、まとまっているいい歌です。原田さんの音楽とことばへのセンスの良さにあわせ、こどもたちへのやわらかなまなざしがふんだんに感じられる、すてきな作品ですね。
H:出演につきパス
F:日常を楽しく豊かにおしゃれに描いていて素敵です。「なにげない〜」からが特にいいですね。間に挟んだ形になる「初めての保育園〜」の部分、「じだんだふんで」の歌詞がちょっとそぐわないか、と思うことと、「泣いて〜」あたりからちょっと無理して盛り上げた形にしている点、もう少し練ってもよいと思いました。前半の「ぐっすり〜」の部分との対比がくっきり出ると一層構成が引き締まるのでは?
I:福島の子どもたちを招待したサマーキャンプの出来事をモチーフにして書かれています。「大丈夫食べても」という出だしの一言で、深刻な環境で暮らす子どもの姿を表現、聞き手を一気に夏の一日に引き込んでしまいます、うまい! 福島をテーマにした曲が多かった今回、自分の目で見て、体験したことを表現する意義を再認識しました。よくばらないでテーマをしぼったことがよかったです。
O:福島の現状、および子どもたちの置かれている状況を「大丈夫?」と捉える視点について、もう少し整理が必要。つまり主体と客体との距離をそのままにして表現するということについてやや違和感を覚える。曲も「なにも考えず〜」からのマイナー・コードによる表現もパターン化していて、もっと掘り下げる必要があると思われる。
S:遊びとくらしの中で育つ子供への共感が合唱17人の優しい呼びかけとなっている。だいじょうぶだよ、の曲のメッセージが新鮮だ。
TY:作者の見ている風景の確かさと暖かさを、存分に感じられるいい歌です。一行目の4小節が特に良くて「大丈夫食べても」がことばとメロディがぴったりです。ただ、1番に比べ、2番の歌詞とメロディの関係には多少の違和感があるので、「だいじょうぶ?」のことばを2番でもう一度使える詩の工夫を、考えてもいいのかもしれません。「だいじょうぶ?泳いでも」とか。
*音について
1.2行目、5.6行目の音作りは良いのですが、3.4行目はまだまだ推敲の余地がありそうです。「何も考えず、食べていた僕もおもわず」ここが詩の中でどういう位置づけなのかによって、メロディーもコードもリズムも変わってくると思うのです。この部分、幾つかの可能性を考えてみました。(譜例1)
9小節目のように頭から16分音符が突然に現れるのは、かなりショッキングです。この連で一番エネルギーを感じることばは、私は「おもわず」ではないかと感じました。となると、譜例2のように、ここに一番の山を持っていくようなメロディつくりが考えられます。また、譜例の1、2のようにリズムの色々な可能性も吟味してみてください。食べていたのメロディをこのままにするのなら、「なにも」も4拍目の裏から出るほうが自然です。1のように。これは一例ですが、まだまだ良くなる可能性が眠っていますので、チャレンジしてみてください。
H:福島の子供たちのおかれている状況とそれに築いた驚きが新鮮に伝わってくる。「思わず手をとめた」のメロディーをもっと大胆に盛り上げたら「大丈夫だよ」からがぐんと広がりをもつように思う。
F:福島を描くとき、こんなふうに身近な発見から歌にしているところがいいと思います。曲も、起承転結が鮮やかで「大丈夫だよ〜」からの優しさ、温かさあふれるメロディが素晴らしいと思います。
3 カオル<福島に微笑を>P.34
I:はじめの8小節「福島の町にも青い空がある・・・」さりげない言葉ですが、心に迫ります。声高に話すのではなく淡々と話すことばにむしろ力が潜んでいるのですね。「日本のたましい」「日本の力」が唐突、いささか抽象的で誤解されやすいのではないでしょうか。
O:2と同様に、福島の出来事を表現する際、現象をそのまま歌うということでは「表現」ということにはつながらないということを感じる。この曲の場合、詩の表現にもっと推敲が必要で、詩としての表現に弱さがあり、そのことで曲自体の展開が散漫になっている。
S:切実なモチーフで聴く人を吸い込ませる。説明的でなく焦点を絞ってみては?リアルな現実と“あおいそら”が視覚的に浮かんでくる。
TY:作曲者の言葉どおり、優しい美しいメロディの中からも、訴える現実が染み出てくるような、親しみやすいとても良い歌だと思います。合唱にして大勢の人で歌ってみたい曲です。蛇足になりますが、微妙に冗長な感じを受けるのは、Bb調が続くからだと思います。詩の長さを考えると、BbとGmの間だけではなく、他の調に少し移行した後に、もう一度「ふくしまの地にも♪〜」が再現されるアイディアはいかがでしょうか。たとえばですが、「祈りを」のあと、Fコードを足場に「持ち続けけんめいにいきぬいている」あたりと、「日本のたましいを」からの9小節はBbm調またはDb調で歌い、Fコードをブリッジに「福島の地にも」でBbに戻るのはいかがでしょうか。
H:詞も曲も演奏も整っていて技量の高さを感じる。ただ、整いすぎて心に残りにくい。心の叫び・熱い思い・新たな発見が欲しい。
F:大阪の方の福島への思いをそのままの形で歌にされたのですが、最初の「福島の地にも〜」のモチーフがとても優しく素晴らしいメロディと色合いなので、ここを基調にして少し詩を編集されたら、もっと印象深い歌にできるのでは、と思います。「除染作業」「風評被害」というような具体的な要望をこのなかで言ってしまうのはもったいないほど、素敵なうたになると思います。また、「日本の魂、日本の心」もちょっと違和感があります。佐藤さんの音楽表現の力が素晴らしいので、ひとつの詩からどう歌に構成していくのか、を練ることが求められてきていると思うのですが、どうでしょうか。
4 ラブ&ピース・フクシマ<あの日から>P.114
I:子どもたちの言葉により、福島が現在かかえる問題を分かりやすく伝えています。まとめ方も上手いです。辛い話ですが4番に救われますね。しかし1〜3どのエピソードも実に重いものばかりで、限られた字数で表現するには、言葉足らずになったり、掘り下げ方が浅くなったりするのは否めません、それぞれを独立させて新たな曲に挑戦することもいいですね。
O:福島の現状をどう表現するかという点で、やはりいくつかの問題を感じる。出来事をそのまま綴るということではなく、その核にあるものを詩として表現する必要がある。そこが弱いために、音楽がそのテキストに音をあてていくという形になっている印象を受ける。
S:子どもの心をくぐって静かに聴かせる曲。「つらいときにはつらいと言っていいんだよ」が印象的。しみじみと共感をふくらませました。
TY:何度聴いても深く考えさせられ、心に迫る歌です。厳しい現実の中に生きる福島の子どもたちに寄り添う、作者の暖かさを感じます。次の作品もぜひ発信してください。
H:語りかけるような言葉が心に入ってくる。3拍子の刻みのせいなのかもしれないが、もう少しデリケートな内面の表現が欲しい。
F:作曲者につき略
5 フクシマ教育のうたごえなごみーず<フクシマは終わっていない>P.116
I:非常にリアルな言葉で現在の福島を伝えています。時としてむき出しの言葉に圧倒されます。福島からの緊急なメッセージとして完成しています。この重いメッセージを私たちはいかに受け止めて自分の物にしていくのか、この作品は、受け手の姿勢を厳しく問う作品でもあります。しかし取り上げているのが多義に及んでいるので、絞った方がいいです。福島発の次作は一筋の光明を見いだせる歌詞をぜひ書いて欲しいです。例えば東京の国会前、各地の関西電力の前では金曜の夕方に未だに多くの市民が「フクシマを忘れるな!」と叫んでいますよ。そんな姿、福島のみなさんに届くといいですね。
O:現地で実際に暮らし仕事をしている側からの発信ではあるが、この詩についてもやはり「表現」という点でさらに推敲が必要であると思う。現状の告発的報告だけではなく、怒りや無念の根底にあるものを書き手の肉声として具体的に表現する必要があるのでは?曲も悲壮感だけではなく、ある意味で音楽的客観視が必要であるように思われる。
S:実感とともに現実のレポートが厳しい現実の中から語られている。嘆きと怒りの底に希望が埋め込まれている。言いたいことがいっぱい詰まっている。削るところがむつかしい。
TY:この歌は、前半の「フクシマは終わっていない、まだ終わらない」、後半の「なくして原発を、フクシマは叫び続ける」の部分を残し、その時々によって歌詞を変えながら、歌い続けていくべき歌だと思います。あきらめないで、くりかえさないで、以下Bb調に行ってからの音楽的な広がりが秀逸です。
H:「福島は終わっていない」の部分から後コーダにいたるまでは多くの人の心をとらえるだろう。2番の後の間奏も切なく心に響いてくる。ただ、前半の言葉の多さは訴える力を薄くしてしまうように思う。
F:リアルな現実を告発する内容だが、淡々と語る前半からの怒りの高まりが、最後の「フクシマは終わっていない」と歌う部分にすべて集約させられた形で表現されていて巧みだと思います。また、最後に転調してうたう「フクシマをあきらめないで〜」というところに、前作では書けなかった切なる願いを込められていて、その美しさには感動します。ただ、そこに行きつくまでがかなり長く、聴かせるにはいろいろと工夫が必要かと思います。今後に期待しています。
I:先に逝った友を思う気持ちがシンプルな歌詞で表現されています。リフレインが効果的です。若干類型的な言葉が気になります、友の顔・姿が浮かぶようなフレーズを加えて下さい。
O:テーマと内容が抽象的かつ一般的表現にとどまっている。描こうとしたその人物の、普通ではないその人独自のものを的確に描き出すことと、それが広く共有・共感できるものとして描く必要がある。曲も、詩の性格からやや散漫な展開になっている。
S:あなたを忘れないではなく「忘れないあなたを」の倒置が自然に説得力を持ってメッセージされました。「あなた」の実像を、輪郭を、鮮明にするひとことがほしい。
TY:広島の方たちにとっては特に、新江さんの存在は大きかったことでしょう。そこから生まれたこの曲にも、そのことが十分に現れています。音楽的に見ると、この曲の課題は「あゆんだみちー」からの4小節にありそうです。この処理にもう一工夫があると、この歌は大化けしそうです。あくまで私見ですが、フェルマータが毎回あって、毎回(しょっちゅう)音楽が止まるのはあまりよくない気がします。また、8分音符だけではなく、気持ち(音楽)の高まりを16分音符で表し、全体のバランスも考えると、たとえば、譜例2のようなアイディアはいかがでしょうか?最後の4番か5番のみ、フェルマータを使用して。
H:歌詞の始まりが同じで親しみやすい。メロディーも自然な流れで盛り上がりもある。もしもみんなで歌うなら、7小節目の(フェルマータ)は度々しない方が良いのではないだろうか。
F:蔵王創作講習会で創られ練り直してこられた作品、簡潔な繰り返しの中から友を思い気持ちが高まってくるいい歌です。 コードですが、3段目2小節目のF/Cはよいのですが、1段目や3段目4小節目のF/Cはなぜそうなのかがよくわかりません。
I:岩見沢の四季をそれぞれたくみに表現しています。とりわけ冬の描写が秀逸です。春の描写もいいです。最後のTPPは・・・のフレーズは蛇足かな。蛇足ですが。私の好きな歌に新沼謙治の「津軽恋女」というのがあります。演歌の作詞家、久仁涼介作です。「津軽には七つの雪がふるとか、こな雪つぶ雪わた雪ざらめ雪みず雪かた雪春待つ氷雪」というフレーズが実に見事です。曲もよく、歌も上手いのですが。四季岩見沢の1番を聞いてこの歌を思い出しました。
O:曲の展開はとてもいい。特に三連符が効果的に使われていて、伸びやかな表現になっている。ただ、詩の内容がラストの「TPPは許さない」に強引に収斂する形になっていて、ちょっと無理がある。もう少し整理する必要があるのでは?
S:よく練り上げられた曲と演奏だ。男性の声がしっかりしていて響きを豊かにしている。誇り自慢の曲想をもっと押し出してもいいのでは?
TY:メロディとことばとの関係やコードの動きが自然で、歌つくりに手馴れた感じを受けます。味わいのあるいい歌ですね。最後にTPPを持ってくるのには、賛否が分かれそうですが、私は「どちらもあり」だと思います。なくても一つの歌としてまとまっています。
H:郷土の景色や愛がよく表現され整えられた曲に仕上がっていると思う。ただ、生きる喜怒哀楽や誇りなど胸に迫るものが欲しい。最後の結論が唐突に感じるのはそのためではないだろうか。
F:オシャレで歌いやすいご当地ソングです。行政にも市民にも広がると思います。「TPP〜」はここで言わないほうが、と思いますが、どうでしょう。
<空を海をいのちを>P.6
I:無駄のない言葉で、しっかり構成され、よくまとまった作品です。「残そうこの海・・・渡そうこの空・・・」案外手ずれのした言葉なのですが、この作品にはこの言葉の必然性があるので、生きて説得力があります。
O:第1メロディがややパターン化してはいるものの、合唱曲としてとてもよくまとまっていて、曲の展開も自然で男声と女声の対比も巧み。伴奏譜にもうひと工夫あると、曲の展開がより自然にひろがりを持つことができるようになると思われる。
「空」のアクセントにやや違和感を覚える。
S:50人を超える声のハーモニーが深いふるさとへの愛を伝えてくれる。「残そう」「渡そう」の重層が胸を打つ。
TY:自作でもあるので、書きにくいのですが、いい歌ができました。トロイカ合唱団の皆さんの熱意、願い、怒りが結実した結果だと思います。美しい町をいつまでも子どもたちに残せるように、ぜひ歌い続けてください。函館だけではなく、全国の人たちに、それぞれの地名を入れて歌ってほしいと願います。
H:出だしの問いかけが印象的。その後の歌詞がやや一般的にも思えるが、これはこれとして整理されよく練られた曲だと思う。演奏も力演。
F:最初の問いかけと次の決意、そして最後の呼びかけという3つの部分が印象的に構成され、想いが深く歌われていて素晴らしいと思います。演奏もこの歌にかける思いがしっかりと伝わるものでした。全国各地で、それぞれにこうした歌作りがすすめられることがフクシマにつながるのだと思います。
<花に誘われて>P.10
I:花に復興への思いを託した秀作ですね。もの言わぬものに言葉にも勝る大きな力があることを、平易な言い回しでうまく表現しています。花をキーワードにしたのが成功していると思います。
O:詩も素敵で、その詩句にふくらみがあり、暮らしを営む人びとの温かい息づかいが伝わってくるものがある。音楽もそのほっこりとしたあたたかみを気負うことなく伝えていて素敵。特に17小節目の「ほ・ろ・り」「ひ・と・り」をスタッカートで歌うように作曲してあるところが非常に効果的で印象深いものがある。さらに25小節以降の展開が豊かな広がりを感じさせていて深く胸に響くものがある。とても素敵な曲。
S:あたたかな詩とそれに見合ったやさしさをひきだす曲。「すこしだけまえへ」が印象的で鮮やかです。
TY:曲もいいですが、いい演奏でしたね。歌詞を元の詩から「少しだけ前へ」と修正したことが、この曲をより身近なものにしている気がします。曲を分析すると、3つの部分ともGの音を中心としたメロディで、ともするとメリハリがなくなるのですが、この歌はそれぞれリズムが違っていて主張があり、全体がまとまって、うまくできています。歌つくりのセンスのよさを感じます。
H:人の暖かさがしみじみと伝わってくるやさしさにあふれた曲。最後の部分「花は笑顔」から後は何度繰り返してもその度に広がりと強さをもつ生命力をもった歌だと思う。何度も演奏を重ねられる度に深まって行く曲ではないだろうか。
F:蔵王創作講習会でも好評だった曲、日常の中での発見、感動を切り取って素敵な歌が生まれました。いいアレンジでさらに思いが深く表現されたと思います。最後のほう、「花に誘われ」の部分、「花は笑顔」と同じ音、同じコードですが、「れ」の小節をA♭、次をFmとしてアレンジしたほうがより広がりが出るのでは、と思いました。
8 緒方一夫と仲間たち<僕の願いをかなえてください>P.122
I:作者の初夢どおりの柔らかな優しい言葉の歌です。ただひっかかる言葉、こだわる言葉(キーワード)が希薄なので聞き手の中に残りにくいです。小学生の僕の姿をはっきりさせる工夫をされるとよいと思います。
O:詩の内容が願望と結びついたもので、それ自体としては詩の表現としては悪くないのだが、その願望が「かくありたい」ということよりは「かくあるべし」ということに終始していて、その人ならではのリアリティに欠ける。曲もそうした「かくあるべし」という既定された内容に沿ったものになっていて単調な響きで終わっている。
S:「あおいうみのなかでねむっています」「ガラスのわたのゆきがふり」の鮮やかな描写が胸に沁む。「いますぐ〜」への飛躍にすぐにつながるのか、むつかしいところだ。
TY:いい歌ができたと思います。メロディと歌の作り方が自然であるばかりでなく、胸に迫るものがあります。ガラスのわたの、からが特にいいですね。若干気になった2箇所、一つ目は3拍子になるところ、ここは普通に、1拍休んでふるさとーと歌うほうがいいかなと思います。ずっと4拍子の中で急に3拍子になるので、体の中にあるリズム感覚が刺激されて、「おや?」と思ってしまうのです。2つ目は終わり方なのですが、私はマイナーで終わりたいなと思いました。
H:いろんな視点で歌うことの大切さを気づかせてもらった。
F:原発ゆえに捜索することもできなかった、こういう犠牲者が数多くいるのですね。この夢に現れた小学生の思いを表すのに、最初と最後の「原発をなくしてください」という言葉はかえってないほうが訴える力を持つのではないか、と思います。言わなくても十分すぎるくらい伝わってくる内容だと思いますが、どうでしょうか。また、その部分につけられたEm,Am,Em,B7という繰り返しも今のままでは単調になってもったいないなあという気がしてしまいます。この中間部をもっと描きこんでひとつの作品にしてみたいと、ぼくは思いました。
I:深遠で、考えさせる歌詞です。テーマにじっくり取り組んで完成させた作品で、完成度が高いです。この地球上の生物の一つとしての人間の傲慢さを戒める歌詞はシンプルで分かりやすく、聞き手にストレートに届きます。
O:“人とは何か”というテーマに対して、ごく一般的なコトバで語っていて、詩の表現として一般論に終始した内容になっている。そのため、音楽も短調の定型で語るかたちに終始している。テーマに対して、詩の書き手も曲の書き手も、“私はこう思う”というその人自身が生きてきたなかで感じたものをもっと率直に表現していく必要があるのではないか。
S:ユニークな切り口だ。大地、風邪のうた、いのちのさけび、とうみのいかり。演奏、フィニッシュの声のひびきが深く聴く側に説得力をもって届いた。
TY:5月に蒔かれた小さな種が夏の間にぐんぐん成長し、優れた作品ができあがりましたね。伴奏や合唱アレンジもすばらしいです。3番にあたる部分の音楽的な発展も、とても良くできています。もう一度聴いてみたい歌です。蛇足ですが、3番のそのあとすぐに、ヒトとーと行くアイディアもありそうです。間奏がここもすてきなので、甲乙付けがたいですが、この間奏の音素材の上に、ヒトとー♪のメロディが載る構成もありそうですね。そんなことまで考えさせてくれる作品だと思います。
H:とても神秘的な響き。深いところで人間社会の「繁栄」に警鐘を鳴らしている。アレンジも素晴らしい。ピアノの間奏に引き込まれる。3番で合唱が展開したときに主線と言葉が感じにくくなるのは、演奏の問題なのか、それともアレンジでカバーできるのだろうか。
F:蔵王創作講習会で発想し、広がりと深さと格調のある素晴らしい作品に仕上がりました。映画のタイトルバックにもなりそうなイメージの広がる曲です。ピアノ伴奏やアレンジも素晴らしく、練り上げてこられた努力に拍手です。
10 荒川のうた合唱団<両神山>P.38
I:「坂道を登ると・・・・両神山があらわれた」という出だしは印象深く、聞き手をあたかも登山者のようなここちにさせてくれます。ビジュアルな歌詞で引っ張っています。とりわけ女性合唱の部分の歌詞は美しい描写が効果的です。秀逸な作品です。あえて指摘するなら、両神山の雄大さを表現する語彙がいささか乏しいように感じます。「山肌が迫ってくるとてつもない迫力で迫ってくる」では淋しいです。余談ですが、明治時代の唱歌「箱根八里」は漢文調でかたいですが、箱根山の雄大さを上手に表現していると思います。
O:描写的旋律と合唱曲としての声部展開が巧みではあるが、詩そのものが両神山から何をどう感じたのかが具体的に伝わってこないもどかしさがある。そのため、曲としてのリアリティがごく一般的なものになっていて残念。
S:地元では「両神やま」(楽譜題名)と呼ばれているのでしょうか。練られた曲と演奏に骨太さを感じた。いわゆる紹介でなく、情景と畏敬の重層が聴く人を飽きさせない。
TY:記念すべき100曲目にふさわしい大作です。全体を通して、両神山のスケールの大きさが音を通して目に浮かぶようです。特に48小節からの音楽的な広がり、また、66小節からのことばと音の関係がとてもよくできていると思いました。♪の連桁(つなぎかた)に工夫がありますが、普通に書いたほうが見やすいですし、スラーでつなげば作者の意図もわかるのではないかと思います。
H:一つのテーマにこだわり続けるのはすごい。山好きの人には共感できる曲なのであろう。フレーズがちょっと判りにくいので曲の展開が感じにくかった。
F:最初から練習番号Dまでは山の風景が歩きながら鮮やかに浮かび上がってきます。ただ、Eからその進行が止まってしまったように展開がはっきり見えなくなるのが残念です。
I:ウラウラ、サワサワ、モクモク等の意識して使ったオノマトペが効果的ですね。シンプルな歌詞ですがタイトルに込められた「望郷」の念を真っ直ぐに伝えます。最後のさびの部分が切ないですね。「音もなく放射能は今日も降り注ぐ」は言葉の余韻とメロディーに落差があるような気がしました、聞いていて落着かなかったです。
O:カントリー・ミュージック風のテイストにあふれた曲自体、重いテーマを歌う表現方法としてはよく工夫されていて、悪くはない。むしろこうしたアプローチのほうが、現実の深刻さをしっかりと伝えるという点で意味があるように思われる。フレーズ冒頭の1拍目を三連符で記譜してあるが、演奏を聴くと三連符で細かく記譜するよりも、もう少し幅をもたせた音符で書いたほうが良いのではないか。つまり1音符1語というように割り振る必要は必ずしもないように思います。
S:鋭い批評性。ひきしまった演奏。「いまはクワを持つこともない」に焦点をみた。
TY:何度も聴いてみましたが、最初よりも聴けば聴くほど味わいが増し、作者の思い、願いや怒りが伝わってくるいい歌だと思います。4番までの歌詞もうまくメロディにはまって、よくできています。おともなくからの4小節は特に胸に響きます。もう一度聴いてみたい曲の一つです。記譜ですが、3連符と付点と分けていますが、特別なこだわりがなければ、どちらかに統一されてもいいのではないでしょうか?
H:深刻なテーマを軽いタッチで、しかもわびしさ・切なさがじんわり伝わってくる味わいのある曲だ。音もなく降り続く放射能への怒りをこめて歌いたいところだが「放射能は」のフレーズが下がってしまう。そこに何か物足りなさを感じてしまう。
F:楽譜を見てゆったりとした曲調を想像しましたが、意外と早めでした。それもいいかも、という感じです。「ウラウラ」「ポロポロ」など普通の言葉では表しきれない感情を、様々な擬音で表現されているところに、この曲の味わいが出ていますね。とても好きな曲です。「あの山の向こうへ雲は流れていく」という最後のフレーズが泣けてきます。
I:これまで支えてくれた感謝の気持ちが全編に満ちた歌詞ですね。ただ残念なのは、類型的な歌詞が多く、友の姿が見えてこないです。リアリティーのある歌詞が欲しいです。「野の花亭」というお店は素敵な空間でしょうね、その話も盛り込んで欲しいです。
O:曲は前半の抒情的な旋律(A)がとても自然で良いのだが、中間部(何も出来ない/私だけど〜)の短調で歌われる旋律(B)部分がやや類型的な旋律になっていて惜しい。“みんなの笑顔〜”らの旋律(A’)がややくどく聞こえてしまうのは、このB以降の音楽展開に必然性がないためだと思われる。したがって、詩の構成をもう少し整理する必要があると思われる。
S:出会いの中にある人と人とのあたたかさが演奏によくあらわれている。「みんなの心にとどき」は「みんなの心にとどく」と言い切ってもいいかも。「やさしい友」の実像がくっきりする工夫もあれば・・・。しっかりとした磨かれた演奏に聴き入った。ありがとう!
TY:友への心からの感謝の気持ちが、歌の中からしっかり感じられました。構成なども良くまとまっていると思います。ことばとメロディがぴったりですし、ちょっとしゃれたピアノ伴奏も美しいですね。
H:詞も曲もよくまとめられていると思うのだが、まとまりすぎて一般的になって、残念ながらいろんな情景やエピソードがあまり浮かんでこない。
F:「ありがとう」という心のこもった大変美しい曲。典型的な起承転結のまとまった形でうまくできています。解説に書いてあるコメントの内容を入れたらもっと曲の印象が豊かになると思いました。
I:印象深いタイトルですね、効果的です。沖縄に配備されたオスプレイを6枚羽のトンボに例えたのですね、上手い! しかしもう少しオスプレイだと解るようになフレーズがあったほうが親切だと思います。聞き手にもしっかり伝わると思います。
O:“6枚の羽根のトンボ”からこれがオスプレイを指していることは容易に理解できるが、詩の展開がおきまりのパターンで、最後には“赦すな”に帰結するというのがいかにも安易に感じられる。曲も変ロ短調で、これも二部形式の定型パターンであり、音楽で訴える内容の“いま、どうしても”という必然性が十分に伝わってこない。定型パターンを突き破るものが欲しい。
S:「異形のとんぼ」の暗喩が示す不気味さが伝わってきた。整った深い演奏の中に力づよさがある。
TY:いい歌だと思います。3回目に初めて、異形のトンボが意味することがわかりました。(環境汚染がテーマかと最初は思いました。)最初に語ってから演奏する場合は別として、少しだけ補足の説明が要るかもしれないですね。最後の、許すな、で音が切れるところが斬新で印象的です。音楽的には、たとえば「いのち」の部分を3部で歌う場合、男声がメロディとBbの音で、女声がGbのほうがいいかもしれません。テーマが大きいのですが、ややあっさりと終わる印象があり、最後の「この子らにこそ」や、「空を」は、2回3回と繰り返したいと思いました。
H:勝手ながら意外性を感じる題名だけに奇抜な展開を期待してしまったのだが、今までによく使われてきた作風なのでちょっと残念。ただ、このようなタイムリーな題材にチャレンジし続けることは大事だと思う。4小節ごとに一つのフレーズを成しているようなのだけれど後半の「いのちうばうつばさを」だけが3小節しかないのが少し違和感を感じてしまう。
F:オスプレイへの告発は、このタイトルからよくあらわされています。特に「ゆるすな」と断じているところがいいです。「いのちうばうつばさを」の部分だけ定型からはずし、3小節で安定しないまま次に入るところがよく工夫されていると思います。
14 郡山市民劇場 ひまなスターズ<関西が好き 日本が好き>P.106
I:オール関西の良さ、楽しさを書ききろうという意欲が歌詞に表れています。しかし欲張りすぎの気がします。もう少し地域を狭くして、掘り下げたほうがいいと思います。お国ことばで表現するのもいいと思います。1〜3番の流れからすると、4番はいささか唐突です、結論の飛躍がありすぎだと思います。
O:関西の名所、名物、芸能等を織り込んだ詩ではあるが、そのことと、最後のフレーズで“「君が代」は唄えない/
だけど日本が好き”という詩句が深く結びついて納得できるような展開になっていない。したがって、曲の展開も単調で残念。
S:逆説的に悪政への抵抗をしている。しみじみとした訴え。軽めのコミック的な曲も合うかもしれない。
TY:ことばと音楽が調和して、音楽もまとまって良くできていると思います。歌いやすいですね。詩と全体の構成は再考の余地があるかと思います。3番までで終わるのであるならば、それはそれで関西賛歌としていいと思うのですが、4番で乱開発や政治、君が代のテーマが出てくるのであるのならば、真正面からもっと深く掘り下げないと逆効果になる危険があります。聴いた人が、君が代が歌えないけど、まあそれはそれとして、のように安易に捉えることのないように。せめてことばを逆にして、「日本は好きだけど君が代は歌えない」と終わるほうがいいと私は思います。
H:親しみやすいメロディー。詞の組み合わせもバランスよく、落としどころがツボを得ている。「君が代はうたえない だけど日本が好き」のところでは胸のすく思いがする。演奏上でやや理解しがたいメロディーもあったりするが、それを超えて共感できる歌である。
F:関西売り込みの詩のイメージからするともう少し明るくテンポのあるメロディをつけたらと思います。4番はちょっとこの歌で一緒に歌うのはもったいない、と思います。言わなくてもわかります。「君が代はうたえないけど、日本は好き」というキーワードでまた別の歌を創ったほうがよいのではないでしょうか。イントロに笠木透さんの「あの日の授業」の最後の部分を持ってきているのは4番への伏線ですか?
I:震災の苦しみの中から立ち上がる方々の姿を書き、必ずふるさとに帰ろうとエールを送る歌詞、コンパクトにうまくまとめています。しかし印象が残りにくいです。子どもたち、漁師さんの声、姿をもう少し掘り下げて書いて欲しいです。さびの部分に説得力が増します。
O:伝えようとするものはなんとなくわかるが、それがごく一般的な詩句による表現に終わっていて、もどかしさが残る。曲もそうした詩句から飛翔する響きというものが感じられない。もっと具体的に、そして鋭角的に表現したいこと、伝えたいことを練り上げていく必要があると思います。
S:人への愛着を深く演奏にこめてありました。よくまとまってメッセージが伝わる作品でした。
TY:歌いやすくて、よくまとまったいい歌です。大切なテーマであり、作者のまなざしの方向にも共感します。ただ、あなたとその日を迎えたい「私」が、今ひとつ具体的によく見えない気がします。音楽的には、「しまぁったけれど」の「っ」の処理の仕方は難しいですね。工夫の余地があるかもしれません。私もこのことばのメロディ付けを幾つか考えてみました。
(譜例3)どちらがいいかはわかりませんが、ご参考までに。
H:1.2.3番を通して終わりの4小節がやや安易に感じてしまう。震災や原発の被害に向き合うとき、十人十色様々な思いが交錯するだろう。ゆえに作り手は苦しみもがきながら言葉、メロディーを絞り出していることだろう。不十分さを抱えながらも作り続けることが大切なのだろう。
F:立ち上がろうとする決意、思い溢れる曲です。メロディをさらに吟味し練り上げたら深みがもっとでてくると思います。特に各コーラスの4段目になる最後の部分ですね。
16 古希のあとで<ネバーギブアップ>P.124
I:合唱団の名前に恥じない、シンプルで味のある歌詞ですね。こんな素敵なテーマソングがあれば歌うことが楽しくなりますね。特に1番が好きです。「ならば今生泣くまいぞ」の言葉は男らしくていいです。1、2番と3、4番はニュアンスが若干違うので気になりますが。
O:歌にしろ詩にしろ、ひとつの事象なり現象なり行動なりを、そのまま表現するということもひとつの方法論ではあるが、それが表現行為として意味を持つためには、やはり作者の視点と主張というものが明確に表明されていることが必要だと思います。それがこの歌からは十分に感じ取れない。
S:人生の歩みが刻み込まれて力強く迫力のある演奏でした。「いつも元気に生きていこう」にむかってテーマが盛り上げられている。
TY:古希とは思えない、元気あふれるすてきな演奏でした。今生は「根性」にも聞こえますし、一生は「一緒」にも通じていますね。詩にぴったりのメロディで、よくできていると思いますが、もう一行、あと4小節ぐらいあって、もう少しだけ変化があるほうが、と思うのは欲張りでしょうか?12小節の終りには反復記号を。
H:覚えやすくみんなで声をあわせやすい曲だろう。ただ、あまり根性のない筆者には「ならば根性」という部分で何か抵抗を感じる。1番は良しとしても2番で「根性で歌うんか?」とつっこみを入れたくなってしまう。
F:単純なつくりで覚えやすく元気が出る歌です。「古希」は通過点で、ここからまた元気にすたーとするぞ、という意欲にあふれていて素晴らしいですね。「一生」は楽譜通りうたえば「一生」と聞こえますが、演奏されているようになると「一緒」にきこえてきますね。また、2段目と3段目が同じドの音から始まっていますが、2段目は♭ラから始まったほうが3段目の爆発力が生かされるような気がします。
17 ときどきシンガーソングライター道家桂<反「学テ」宣言2013>P.89
(エントリーされていましたが、ご家庭の事情により急きょ参加演奏できなくなりました。)
I:ご本人の歌が聞けなくて残念でした。活字で歌詞を追っているだけでも面白いです。道家さんの歌では以前「君が代」を生徒が「蒸して食べるんですか」と聞いている個所に大笑いしました。現場で生身の生徒に接している先生にしか書けない話を、独特のユーモアでさらりと書くセンスの良さ。脱帽です。
O:こうした替え歌というのは、もっと試みられて良いと思います。「関白宣言」の替え歌として、詩の内容が痛烈で、それに可笑しみもあって、とても面白い。最後の「そうだそうだ」とか「やめさせよう」という詩句が、全体の流れからするとやや類型的に響くのが惜しい。
H:我々の知らない現状がリアルに描かれているので、歌で聞けなくて残念
F:ぼくの教職員合唱団でもうたってみようと思いました。こういう洒落た歌がたくさん欲しいですね。できたら間奏部分のメロディも、おもしろい繰り返しのキーワードを考えて、笑わせられないか、などと考えてしまいます。
18 港新婦人コスモスコーラス<仲間っていいもんだ>P.47
I:ユーモアのセンスに富んで、いきいきとして楽しい歌です。1番は小気味のよい居直りが頼もしいです。その後の展開も上手です。3番の「・・・わたしたちにはのみこめる」がわかりにくいので別の表現を再考することお勧めします。
O:曲としては「仲間っていいもんだ」の元気あふれる響きのほうがシンプルだがよくまとまっている。「平和のランナー」はメロディラインがやや不自然なところと、終止形になりそうでならないところがあって、音楽的にややアンバランスなところが散見される。元気はつらつとした演奏ではあるが、そうしたところをもう少し整理すると、もっと伝わるものがふくらんでいくと思う。
S:コスモスコーラスの年輪が滑らかな演奏です。言葉がしっかりと伝わる。
TM:サークルのテーマソングなんですね。みなさんが楽しく活動されている様子が目に浮かびます。「いろんな人生集まれば大きな力を発揮する」こんなすごいことをさらっと言っているところがいいです。最後の「ね!」がやさしくてまたいいですね。
TY:詩も良く考えられていて、印象的ないい歌です。終わり方が特にいいですね。アレンジ・伴奏にも拍手です。
H:自分たちの思いをぎっしり詰め込んだ歌はとても魅力があふれている。メドレーになっていたので一曲ずつをもっとゆっくり聞いてみたい。
F:「へ調もト調も絶好調!」というので“決まり”ですね。すばらしい!楽しいコーラスのテーマソングです。最初の「コスモスコーラス」を自分のコーラスの名前にすれば結構あてはまるところは多いのでは?
<平和のランナー>P.48
I:平和のバトンを次の世代に手渡そうという主旨の歌詞です。わかりやすく、上手くまとめています。「地球がよごされ・・・」の部分、いささか類型的な表現に陥っています。もう少し掘り下げた言葉があるといいですね。
O:上記記載
S:背景にある活動が浮かんできます。歌う楽しさのバックボーンが伝わってきます。
TM:タイトルから受けるイメージと歌詞の内容にちょっとギャップを感じます。いわゆる「平和」と「環境問題」がだぶってぼやけてしまっているような感じです。絞り込んだ方がよかったかも知れませんね。詩はうまくメロディにのっていると思います。
TY:皆さんの歩みや願いが凝縮された歌ですね。「でも」からの音楽の変化と広がりも効果的です。唯一つ、「子どもたちが震えてる」の部分は再吟味をされるといいかもしれません。もっと印象的で歌いやすいメロディ・和音が眠っている可能性があります。
H:上に記述
F:気品があり、優しさと強さを持ついい歌ですね。アレンジもいいです。「ララー」のところにはまた何か入るのでしょう。期待しています。
19 合唱団北星<ありがとう>P.50
I:今回のオリジナルコンサートで、はっきり正面から憲法9条を歌ったのはこの作品だけだと思います。9条をテーマにした歌の更なる創作が今求められているのだと思いました。キーワード「戦争を知らない それは幸せ」、インパクトのある言葉で一気に引き込みます。よくまとまった作品です。
O:旋律は抒情的でとても素敵だが、ひとつの主題からなっているため変化に乏しく、何度か同じ動機が繰り返されるたびにマンネリ化していく弱点がある。二部形式のBに相当する主題があると、曲自体がぐっと引き締まると思われる。リフレインの詩句「ありがとう/9条/それは誇り」がそれまでの詩句の結論として書かれているだが、やや強引というか、観念的で、詩としての表現をパターン化したものにしている印象がある。
S:ひきしまった構成の詩。うたいあげる平和への希求に説得力がある。
TM:タイトルがいいですね。9条への感謝をかみしめながら聞くことができました。1番2番3番とも2行目の歌詞が効いていると思います。
TY:この歌は今回のオリコンの中でも、特別に印象深い歌でした。テーマがいいことはもちろんですが、前半の歌詞とメロディ・休符の関係がすばらしいのです。「休符が歌っている」のです。ただ、「そっとあなたが」まではすばらしいのですが、「そばにいてくれるから」からあとは「惜しい!」と思いました。ここでCに完結してしまうと、「戦争を知らずに僕らは歩める」ことのなんとも大きな喜びが伝わらないのです。失礼と思いながら書きますが、「ありがとう九条」に向かって、もっと心を揺さぶり、発展していくメロディがないでしょうか? 少し直すと、ずっと歌い継がれていく歌になりそうな気がします。
H:歌詞の中にワンポイント身近な人の気配などをイメージできる言葉が入るともっと親しみやすい歌になるのではないだろうか。
F:印象的な出だしのモチーフ「戦争を知らない それは幸せ」と、さりげなく言い切るところがいいですね。九条が「そばにいてくれる」という言い方も好きです。構成で言うと「そばにいてくれるから」で終わらずに、その次の部分をヤマにするような持って行き方にしたらと思ったのですが、どうでしょう?
20 私鉄池袋ターミナル合唱団<いつまでも(職場の若者たちに)>P.51
I:職場から発信される歌が減少傾向にあるので、貴重な作品です。先輩が若い仲間に注ぐあたたかなまなざしに貫かれた好感度高い作品です。瑞々しい若者の姿も上手く表現されていますね。最近あまり聞かれなく聞かなくなった「労働者の連帯」を平易な言葉で真っ直ぐに伝えてくれます。
O:音楽の作りでみると、3つの動機(旋律の単位)からなっているが、最初(A)が8小節、次(B)が4小節、3番目(C)が8小節という構成になっていて、やはりBの部分がもっと豊かにふくらんでいくともっと良くなるのにと思われる。このうちCはリフレインに相当するが、これがややくどい印象。こうした音楽展開がややアンバランスになった原因は、やはり詩の構成と展開にあると思われる。職場の歌らしい内容を歌っているだけに惜しい。
S:相手を明瞭に描いて、演奏が生き生きとしている。職場の若者をとらえるまなざしがすがすがしい。「わかちあい」の部分は、曲に工夫があっても・・・。走りぬける感じ。
TM:明るくテンポよくうたわれていましたが、そのことがちょっとアダになって歌詞が聞き取りにくかったです。16分音符のアウフタクト(つまりフレーズの頭)が聞き取りにくいのでうた全体の意味を一度聞いただけではなかなか分かりづらくなってしまっているのが残念です。ロシア歌曲ドナエフスキーの「鉄路」をイメージさせる軽快なピアノ伴奏は素敵でした。
TY:曲も詩も良くまとまっていて、双方の関係も自然で、歌つくりに手馴れた感じを受けました。ご参考までにですが、コードで、Cm、Dm(D7)なども使われると、音楽がもう少し豊かになると思います。たとえば、さわやか→Cm なえが→F7 かわすそ→Dm のように。いいかどうかは別ですが。前半の歌詞がやや多すぎる気もするので、すこしそぎ落とす作業も必要かもしれません。
H:職場の若い仲間たちへの愛情を感じるさわやかな歌。職場の明るいうたごえらしい好感が持てる。
F:指定のテンポより速くしたのは時間の関係ですか?ちょっとせかせかとしてしまい、歌詞がうまく伝えられなかったのが惜しいですね。また、4段目をヤマにもってきていますが、5段目との関係がもったいないと思いました。5段目も4段目と同じイメージで繰り返しのようにしたら、最後が広がり、すてきな職場ソングになると思うのですが。
21 チャレンジャーズ<reason for being>P.52
I:生きる意味を何度もといかける歌詞、抽象的なので「ぼく」が人間であるのか、それ以外のものなのか判断しにくいです。「ぼく」を原子力と考えると落ち着くのですが。きれいで洗練された言葉です、でも意識の表面をさらっていく風のような印象を否めません、もうひとつ踏み込んだ表現がほしいと思います。
O:曲の作りはとても慣れたものがあり、聴かせるものがある。それだけに、詩が問いかけるものが既に答えとなって用意されているのを聴く、といった印象を覚える。つまり、「こうなるんだろうなぁ」という展開が、その通りに歌われていく、ということ。それはそれでとても高度な技法ではあるが、そうした予定調和的な表現からちょっとはずれた歌というものになると、さらに面白くなったと思われる。
S:自己の存在といのちへのいとおしみが深く静かなメッセージとなっている。ひとりの少年の目と心を通して心の姿が浮かんでくる。
TM:いい演奏でした。合唱のアレンジも素敵です。冒頭の歌詞にドキッとさせられます。「僕が生まれたあの日 君は何を願ったの・・・」ここでいう「君」というのは、「僕」の両親のことなのでしょうか。聞き手にじっくりと内容を考えさせる詩です。まさに「アナタノ答エハ」ですね。
TY:印象深い歌で、伴奏部分も含め、よくできていると思いました。「ぼく」が誰なのか、単に「I」なのか、何か他のものをさしているのか、わたしには読み取れないのですが、その意味では?が残る謎の歌でもありました。個人的には同じ作者の「僕らの心の中に」よりも好きです。
H:この曲の作られた背景が何かあるのかな?。抽象的なんだけど身の回りで起こっているいろんなことを想像させてくれる興味をそそられる歌だ。
F:印象的なタイトルと歌ですね。「ぼく」は誰で「きみ」は誰なのか。それを言わないことでミステリアスに聞こえますが、「いじめ」「DV」「ブラック企業」「原発」など想像します。
I:清涼感に満ちた歌詞で生きて行く苦悩を表現しています。言葉にリアリティーが不足しているので伝わりにくいです。なんか巻貝の中をぐるぐるまわっているような印象と言えばいいのか(この文章も抽象的ですね・・・)。でも最後には未来に向かう姿が見えてきます、一条の光を感じます。余談ですが、グループの名前ににちなみ全員がジーンズで登場されるのかなと期待していましたよ。
O:何を表現したいのか、何を伝えたいのかがどうもはっきりしない。それは詩の書き手自身のなかではっきりしていない結果でもあるように思われる。したがって、曲自体はある程度定型パターンでコトバを音にすることはできるとしても、音楽として伝わってくるものが弱い、という印象。
S:希望がもりあがってくる。自然との交流が澄んでいる。
TM:青年たちの今と将来への葛藤を希望に変えて行こうとする勇気が素直にうたに載って心の中にしみわたってきます。時間的な制約を気にしていただいたのだと思いますが、1番も聞きたかったです。アレンジも魅力的です。青年の大合唱で聞いてみたいなあ。
TY:歌もいい歌ですが、演奏も良かったです。美しく流れるようなメロディに、生きたことばがうまく載っています。十分に一つの歌として完成していると思いますが、逆にまとまりすぎていて、印象が薄くなる危険もあるのかもしれません。長い曲ですし、全体のバランスを考えても、「なぜという二文字のことば、こんなにも惨めな僕らが」の辺りは、別の音の色(素材)がほしい気もしました。(速度を落とすとか、調をマイナーにするとか。)音楽の力が豊かにあるのですから、美しいメロディの中でも、どこか音楽的なチャレンジがあるといいのかもしれません。
H:詞も曲もそれなりにまとまっているのだけれど「誰を励ましたいのか」「どんな言葉が彼の彼女の心をとらえるのか」それが見えてこないもどかしさを感じる。
F:「未来の記憶」という当たり前でないキーワードを軸に、確かなもの、生きる意味、をつかもうという青年の心の在り様が美しく描かれています。「reason for being」同様、不思議な魅力を持っています。演奏も魅力的でした。
23 うたで覚えるロシア語講座「ドゥルージバ」<3.11悲劇からの歩み>P.58
I:ユーラシア協会は多面的な活動をしてみえるのですね、驚きました。改めて東日本大地震と福島原発事故の真実を世
界に発信することの大切さを教えられました。歌詞は短歌を思わせるセンテンスで、上手にまとめています。短い言葉
は鋭く切り込む力がありますが、その分深まりに欠けることもあります。
O:詩が出来事をそのままコトバで綴った状態であり、詩的イマジネーションに欠ける。そのため、音楽もロシア民謡のパターンを踏襲した形で展開されていて、ふくらんでいかない。当日の演奏もかなり音程が悪く、残念な結果となった。
S:重いテーマを言葉に置き換える。背景にたくさんの映像が浮かんでくる。「耐えに耐え 絆を信じ歩みを前へ」に共感。一節から三節の現実。四節・五節の意思へと発展。ここにパワーを感じる。
TM:短歌五首に作曲をされたのでしょうか。その関係かなあとも思いますが、うたを聞いただけではわかりづらい言い方になっている個所があります。M9(えむきゅう)、親子裂き(おやこさき)、人牛被曝(ひとうしひばく)など。詠まれた方とのディスカッションが可能ならどこに向かって誰に向かってうたうのかを話し合うことなどもいいかもしれません。4番の「耐えに耐え」などは私は言いたくないフレーズです。
TY:力強い演奏でした。日ソ協会祝賀会での演奏にふさわしい曲だったと思います。音楽として考えると、「M9の巨大な地震」などを歌詞に入れずに、他のことばで置き換える方法もあると思いました。時折出てくるDのbは、A#の方が良いでしょう。
H:このテーマでの創作の難しさを感じる。はるか過去の出来事を現在未来に伝えるのではない。現在起こっていることで「誰に何を伝え歌うのか?」まだまだ試行が必要だろう。
F:ユーラシア協会らしいロシア的なスケールの大きなつくりだと思いました。短歌の凝縮された言葉の一言一言につけるメロディは、やはり凝縮されたものが望まれますが、よく考えられていると思いました。前半の格調の高さが4番以降の後半にどう発展させるかが難しいですね。
I:被災した東北によせる思いを真摯に表現されています。春の様子がいささか類型的なのが気になりました。故郷の春に対する思いをもう少し書き込んで欲しいです、例えば野山で摘み草をした記憶、せせらぎの音等でしょうか。前半の深まりで、後半の決意に説得力が生まれます。
O:タイトルに込められた思いというのは理解できるが、それが概念的な表現にとどまっていて、もうひとつ具体性に欠ける。そのため、「春はまだ遠い」から「だから
私は歩む」へと展開するところに観念的飛躍を感じる。音楽もそれまでのハ長調から「でも あの日から」の部分でハ短調とし、「だから〜」から変ホ長調として展開するという紋切型であるのが残念。
S:前半の情景にみずみずしさがあって誘い込まれる。「三月」の持つ重い意味をさりげない自然、身近なたたずまいから描写。「・・・ます」の敬体に込められた感慨。「ふるさとに 春はまだ遠い」と力んでいない。後半の「でも」「だから」は要注意。連発すると理屈が前にでる。曲に託してもよいのではないか。
TM:短調部分からのD.C.が緊張を解かせてくれます。ただ私は短調部分も気負わず淡々とうたわれる方が心に染みいるのではないかと思います。
TY:作者の思い・願いに共感します。福島に美しい春がやってくる日を、心からわたしも願います。C→Cmへの転調もうまくできていると思います。「はるーはるー」を、同じ形で短調にするのも効果的です。前半、繰り返しのあとなど、前とは別の和音(色)を使われるのも一つのアイディアかと思いました。いぬふぐり→Em はる→Am など。
H:優しい表現で深い思いを秘めたところにこの歌の魅力を感じる。だからこそ中ほどの短調になる導入部分があまり大上段に構えない方がより思いが伝わるのではないだろうか。
F:ほんとうの春の到来を願いながらも、まだまだ遠い春。形にとらわれない自由なつくりでした。1〜3段がすべて「ソ」で終わっていますが、2段目を終止形にすることで、3段目の「はる〜」の部分が新鮮に響くと思います。どうでしょう?
I:子どもの視点で原発事故の深い苦悩を表現して成功しています。子どものリアルな言葉には説得力がありますね。「おばけよりこわい」うまい! 1番〜3番へと場面の展開もとても上手で、秀逸な作品です。余談ですが、愛知県の真宗大谷派の若い坊さんが福島二本松の子どもたちの言葉に作曲した「テツナギマーチ」という歌があります。(マスクしなさい 外にはコワイばい菌がいる)という歌詞があります。この歌に共通するものがありますね。
O:詩も曲もはつらつとした表現が感じられる歌。重い現実を歌っているが、その重さを跳ね返すパワーが感じられる。特に「ダメダメダメダメ」の部分が詩としても新鮮で、曲としても非常に効果的な響きを生み出している。惜しいのは、A−B−A’の展開でA’が独立した楽句のような印象を与えること。おそらく間奏のピアノパートがそうした印象を強めているように思われる。そうした部分を持ちながらも、全体としてとても素敵な歌で、好感が持てる。
S:子どもの内心の視点で原発事故の理不尽を語る。「どんな顔してるの」「お化けより怖いんだって」に実感のある切り取りがある。子どものねがいをフイルターに「ダイッキライ」に結んでいる。このように言い切るか、それとも疑問やとまどいに結ぶか。そこは迷いどころ。三節までの感情の重層に切実感がある。
TM:子供の素直な気持ちが詩に表れていますね。「いつ帰るかな りょうちゃんにあいたいな」原因はお父さんの転勤じゃなくて放射能なんですよね。こんな悲しいことはありません。でも変に暗くならずに、11小節目でF-Fmというコード進行で「おやっ」と思わせるところなど、なかなかにくい作りだと思います。
TY:2年前から気になっていた愛久澤さんの詩に、いい歌がついてよかったなあと思いました。たくさん歌ってほしいと思います。終わり方(18小節、21、22小節)が特によくできていると思います。10小節〜13小節もいいですね。初めて聴く人のことを考えると、次々にことばが出てくるので、ダメダメダメのあと1小節間を置いて、ピアノがこのメロディを弾き、一呼吸してから放射能に入る方法もあるのかなと思います。
H:曲も詞も子ども視点でうまく作られているのだけれど、大人の理屈に支配されているようで何か納まりが悪い。
F:子どもの率直な言葉のテンポと曲のイメージがぴったりと合い、特に「ダメダメダメ」「キライダキライダ」「だいっキライ」な ど、とってもうまいです。また、仲良しの子が避難して行ってしまうさびしさ、なども描かれ、ほんとに子どもたちに歌ってもらえたら、なんて思いました。
26 うたごえサークル青梅麦笛<母ちゃんと呼べなくなったあの日>P.62
I:聞いて、涙が出てきました。作者のお母さんによせる思いが胸にしみました。まだ若く元気だったころの母ちゃんの姿の描写は抜群です、生き生きとしています。「おおきなお尻」が随所に効果的です。 じっくり聞かせる秀作です。その後の展開が少し性急な印象を与えます。「坂のうえにある駅」がキーワードになっていますが、わかりにくいです。人生の区切りととらえていいのでしょうか?
O:淡々とした展開の曲で、全体として哀感がただよっているが、いい意味で温かいセンチメンタリズムを感じさせる。曲は短調のある意味紋切り型ではあるが、詩がさまざまな思いを呼び起こすものがあって、そのため聴き入ってしまうものがある。
S:「あかるいこととやさしいえがお」と「かじかんだゆびにいきをふきかけてあたためてくれた」では格段に違います。しっかりと言葉と懐かしみが切実に伝わってきました。
TM:歌詞に集中して聞きました。楽曲としては完成しているとは思いますが、背景や大意がわからないとちょっともどかしさが残ります。聞き手がいろいろな受け取り方をしていい・・・ということもあるかもしれませんが。メロディも素敵な「この坂の上にある駅はまだ見えてこない」もいろんなことを考えてしまいます。
TY:タイトルから始まって、歌が進行すればするほど、短編小節を呼んでいるように、あれこれ情景を想像し、ドキドキしながら聴かせていただきました。よくできた詩にぴったりの、いい歌ができたと思います。「かあちゃんのおしり」や「坂の上の駅」などのことばがよく構成されていて詩もいいですね。行間が語っています。言うまでもないですが、アレンジもすばらしい。
H:いろんなことを思い浮かべさせてくれる優しい歌。心にしみる一曲。
F:今回、この作品も含め青梅麦笛の作品の不思議な魅力に注目しています。その中でもこの曲の母を描く視点が見事です。「この坂の〜」映画を見ているような映像的手法、印象的なメロディライン。タイトルの「母ちゃんと呼べなくなった・・」ことの背景や状況はよくわかりませんが。」
I:スケールのおおきな合唱朗読構成の全曲を聞いてみたいです。日本軍の兵士が中国で捕虜となり、学習する様が簡潔な、骨太の言葉で表現されています。「まなぶことはめざめることだ」というのは現代の教育にも通じる真理ですね。組曲から飛び出して単独に歌われていい曲だと思います。
O:体験や出来事を言葉で綴ったことが、そのまま「詩」となった印象を受ける。そのため、曲はそのテキストを音で綴るということに徹しているという印象を受ける。前奏や間奏、そして伴奏パートは軽快な響きにあふれているが、テキストの制約からか、軽快さだけが印象に残る結果となった。
S:よく声が出ていてひびきに厚みがあります。「学ぶこと」のとらえなおしに発見がありました。真実味と説得力のあるメッセージです。
TM:明快な主張を持った歌詞が、その歌詞を生かす明快なメロディに乗って聴衆に届く演奏でした。台詞も効果的で音楽を支えていました。
TY:本当にそうだなと、何度もうなずきながら聴かせていただきました。このテーマで合唱朗読劇を作るというこの取り組みそのものにも、協賛を致します。
H:教訓に満ちた哲学的な深い詞に比べて曲がそれを感じられず違和感を覚えてしまう。喜びを表現されているのだけれど、もっと大人の喜びではないだろうか。
F:ぼくも撫順の戦犯管理所に行きましたし、テレビドラマもあり、確かにここでの学びは日本での捕虜の扱いとは全く違うものだと思います。「学ぶこと」が人間にとってどんな意味があるのか、いきいきと描かれていて、説得力がありますね。
I:不当解雇撤回争議への不当性と勝利を勝ち取るおもいが、正直な言葉でつづられています。ただ、思いのたけを書き込みすぎると、求心力が乏しくなります。街宣で歌うということならば、柔らかくシンプルな歌詞のほうが聞き手の心に残ります。
O:JALの不当解雇撤回闘争の歌、ということはわかるが、この闘争のどこをどう表現するかという点で、詩の内容が一般的なものにとどまっている印象を受ける。なによりも詩のなかで使われている「夢」「希望」「信頼」「権利」「誇り高く」といった言葉があまりにも一般的すぎる。駅頭宣伝等で歌う歌であるならば、よけいに具体的内容が伝わる言葉が必要と思われる。曲の展開自体は自然だが、テキストの制約から、さらっと響いて終わっている印象を受ける。
S:「仲間と胸はって勝利つかもう」がしっかりと歌い切っておられました。このような決意の歌もこんなにみずみずしく歌えるのに感銘をうけました。
TM:街頭で支援活動をしながらうたっているところを想像するだけで胸が熱くなります。街頭などでうたう歌には歌詞がわかりやすくて印象的なメロディが効果的だと思いますが、そういう意味では「私たちの決意 勝利への決意」は歌詞も聞き取りやすく耳にすっと入ってきます。
TY:この歌を街頭で歌っている姿を想像しながら、聴かせていただきました。いい歌ができたと思います。何度も歌ってほしいと思います。音つくりで一言。前半後半とも上のBb中心にメロディが動き、最高音がいつもDなのですが、この構成を少し変えて、あえて前半はもう少し下で動くとか(たとえば、未来へと動く、は下のBbにいったん着陸し、そのあと上昇)、後半での最高音(たとえば決意)をEbまであげるようにすると、メリハリがでて、訴える力が増すような気もしました。
H:まっすぐな思いが伝わってくる。好みがあるとは思うのだけれど「私たちの決意」に入る前のところを3番と同じように1小節伸ばして歌を盛り上げてはどうだろうか。
F:歯切れ良いことばがうまく無理なくメロディにのり、最後の「私たちの決意〜」の部分とのバランスがよいと思います。ただ、「私たちの決意〜」のメロディには、歌いやすいがちょっと物足りないと思いました。ここにこそ、最高に気持ちの入るメロディが欲しい。また、1番の歌詞、3段目の「惨事は」という言葉に「ACB♭A」というメロディには違和感あります、「DCB♭A」としたほうが2,3番もぴったりとなると思いますが、どうでしょう。
29 南部合唱団<誇りある道>P.70
I:*創作に関わっているので講評はさけます。
O:「勝利への決意」と比べると詩がいくぶん具体的になってはいるが、逆に音楽が悲壮感にあふれたものに終始していて、伝わってくるものがかなり希薄になってしまう。特に当日の演奏がかなり粗いもので、音程もやや不安定だったこともあり、音楽的な訴求力に欠けるものがあった。曲の性格が駅頭での宣伝等で歌うというものでもなく、ステージで演奏する合唱曲としてはやや小ぶりというか、曲の性格がやや不鮮明な印象を受ける。
S:「飛び立とう未来へ」厳しい現実の中からの声がたくましくひびきます。
TM:一番はアルペジオでゆっくり目のテンポでした。私はテンポを変えず強弱とか男声女声で変化をつけたいです。ぐいぐいと胸に迫る行進曲のテンポは1番も3番も変えない方がいいのでは…と思うのですが。後半のメジャーの部分は音の整理が必要かもしれません。短調部分の印象が強いというのもありますが、ちょっと印象としては薄い感じです。
TY:闘争支援のいい歌ができました。「生きがいをもって」からの8小節が特に印象深いです。一般の人が歌うには、上のF#は少しムリがあるかなとも思います。特にこだわりがある場合は別ですが、そうでなければF#は最後の一回(みらいをEからF#に)だけにして、途中は他の音に代えるのはいかがでしょうか。また、E調になってからの「誇りある道を」のメロディ、(掛け合いも含め)は悪くないですが、一番大切なことばですから、もっと良いものはないか、再考の余地はありそうです。そこだけ私も考えてみました。(譜例4)これがいいかどうかは別ですが、ご参考までに。
H:いつも戦いの真っただ中にいる労働者に寄り添った創作活動はすごい。とても厳しい状況なのかもしれないが曲もアレンジもちょっと重いかな
F:JALの闘いにとどまらないたたかいのうたを目指したものだと思います。そんな広がりを感じます。ただ、「偽り倒す」という言葉は歌になるとわかりにくいですね。「偽り(を)倒す」と聞こえるためには?転調後のリズムが前半と変わらないのですが、少し工夫があるといいかもしれません。あとは、音域の工夫、全体の整理をして、歌いやすく覚えやすい歌にしてほしいと思ました。
30 岩手のうたごえ協議会合同<明日いう日がまた続くように>P.12
I: Aの部分の歌詞がとても美しいです、それに続く原発の汚染の被害の有様が淡々と語られていて、むしろ恐怖を感じさせます。明日への希望も声高ではないのですが説得力があります。よくまとまとまった作品です。
O:詩そのものはとても自然で、タイトルに込められた願いが構えることなく伝わってくるものがある。曲も一種のロンド形式になっていて、ロンド主題に相当するAの旋律が明るくたおやかな響きで好感が持てる。挿入主題に相当するB、E、Gの旋律がややパターン化しているのが気になるし、コーダに相当するHでのハーモニーもやはり類型的であるのが惜しまれる。全体としては重いテーマにもかかわらず、人間の営みの温かさが伝わってくる歌になっている。
S:エネルギーのある演奏で「こどもたちのみらいをよごしてはいけない」の訴えと「トンボ・いなほ・こなゆき」などの情景がよくこなれていました。
TM:抒情的なふるさとの風景と現実の風景が交差する印象的な曲です。冒頭春と夏の風景にそれぞれ8小節ずつあてていますが、後半の秋と冬の風景には4小節ずつとなっています。必ずしも揃えなければならないということではありませんが、曲の構成をわかりやすくということでは(アリバイ的に言葉を増やすという作業ではなく)長さを揃えるという作業もあってもよかったかも知れませんね。
TY:歌い継いで行きたい良い歌です。かなりの時間をかけて作られたと思われます。歌詞とメロディの関係、和音の流れ、伴奏など、すべて整えられています。出だしのメロディと51小節〜54小節が私には特に印象的でした。ただ、Bの部分は、Aとは違う音やリズムのほうが良いのではないでしょうか?調は違うとはいえ、八分休符で始まるこの形が、39小節までに続けて18回出てくるのはいかがでしょうか?EやGの部分で初めて現れる音素材を使って、全体の構成を考える方法もあるかと思います。(譜例5)
H:若い人たちがこの問題に真剣に取り組んでいる姿に頼もしさを感じる。是非、いろんな角度から新たな作品が生み出されることを期待したい。
F:高屋さんの曲はいつもとても練り上げられた美しさがあります。この曲のモチーフも季節の自然の描写が美しいメロディで歌われます。一方で、同じモチーフによって、奪われた自然や夢・希望などに対する悲しみや静かな怒りが歌われていて巧みに構成されています。辛い現実をうたう場合、ともするとそれは歌にしないで、と言いたくなることもありますが、この作品の場合、表現を抑えて静かに語っていますので、説得力があります。それだけに、最後のGの部分への期待が高まりますが、それまでの流れるようなメロディとはちがうインパクトのあるもの(いまの作品ももちろんそういうことを意識して書かれていることはよくわかりますが・・・)を聞きたかったと、欲張って思いました。でも、とても力作だと思います。
31 あすとりお<おそい春>P.33
I:シンプルですが完成度の高い歌詞ですね。人知れず立ち、春を待つ花たちに、私たちの姿をかさねて成功しています。「春の寒さ」という個性ある言葉が引きしめています。この作品は「必ず春はくる」というような直截な表現をしないところがいいです。書ききらずに、聞き手のイマジネーションを喚起する表現は大切です。
O:8分の12拍子のリズムで作曲してあるが、このリズムと詩の言葉が持つリズムとが必ずしも一致していないように思われる。「(山の)こみち」「(息を)ころし」「(春の)さむさ」「(深く)ねをは(る)」といった言葉の部分に付けられたリズムにやや違和感を覚える。
S:すきとおった声が、まさに「おそい春」へと胸ふくらむ曲と演奏でした。
TM:作曲者なのですが、一言コメントを。蔵王の講習会で、社会に巣立とうとしている橋さんの息子さんに対する思いなどをその場でお聞きして、その彼にエールを送ろうと思い曲を付けました。演奏も素敵でした。半年後にこうやって素敵なアンサンブルで聞けたことは作り手としては本当にうれしいです。
TY:なかなかの名曲です。長い冬を過ごす、北国に住むものにしか書けない世界のような気がします。春のエネルギーを感じます。類似品がない新鮮さがあります。具体的には、Bbのコードの使い方が面白いですね。
H:詞だけに注目すると趣のある色合いや自然の音を思い浮かべるのだが、曲は、和音転回が強く印象に残ってメロディーと詞があまり聞こえてこない。
F:凛とした花の姿に思いを重ね、背筋の伸びた格調高い歌になっています。「水芭蕉ひとり」までのきりっとした言い回しがいいですね。次の「〜耐えながら」までを受けて最後にうたう「深く根を張る雪解け水の音」がそこまでを十分受け切れていない気がします。「深く根を張る」がもう少し十分歌われたのちに「雪解け水の音」という部分を、独立して印象的に歌い切る、というような形で・・・などと思ったりしました。
I:先に逝った友への思いがずっしりと伝わります。「愛嬌たっぷりの笑顔」に象徴される友の姿も輪郭がはっきりしています。良い歌です。
O:追悼歌としての性格からか、「いつも〜」からの部分を除くと旋律の音域が狭い範囲で展開されており、やや地味な印象を受ける。「全て流された街で〜」からの展開は、音楽的にはとても充実した響きではあるが、詩がやや一般的な表現で少々物足りない。実感のこもった演奏が素晴らしかった。
S:男声合唱のちから強さ。「きみ」を思う心が率直明快に伝えられていました。天国の「きみ」にむかって歌われているように、心揺さぶられました。労働現場の一端が場面として挿入されてもいいかも。
TM:思いがいっぱい詰まった歌ですね。高橋団長の人柄が偲ばれます。「泥の中から希望を 押しつぶされた言葉を 忘れていた歌を 拾い集め探し始めたばかりなのに」という言葉が胸に迫ります。個人的趣味の範囲のことになって恐縮ですが、曲調にもう少し泥臭さがほしかったなあと思います。
TY:団長さんの追悼にふさわしい、いい歌ができたと思います。この歌と共に、皆さんの心の中に高橋さんは生き続けるだろうと思います。きっと喜んでおられることでしょう。
H:熱い思いが伝わってくる歌
F:歌が抜群にうまい佐々木さんの「佐々木節」全開の情感豊かな歌でした。亡くなった仲間へおくる言葉が大変具体的で辛さも決意も内容をよく伝えていると思います。できたら、もう少し骨太な雰囲気で・・・などと期待も高まります。
I:新しい命に対する思いが全編を通してほとばしっています。その思いはタイトルに象徴されています。手放しの生命賛歌と感動は聞き手も嬉しくなるものですね。
O:自作詩を歌うという点で、実感のこもった演奏。曲も自然な展開で実感にあふれた旋律となっており、よくまとまっている。こうなると、この詩のもうひとつ踏み込んだ思いというものが語られ歌われていても良いのではないかという思いに包まれる。
S:愛情といつくしみがあふれる歌です。誕生へのよろこびがひろがります。澄んだ声がテーマにぴったりです。
TM:少し前に「孫」という演歌が流行りましたが、このテーマは孫を持つ人にとっては普遍なものなのでしょうね。「ひびき渡る〜」は心に残るとても印象的なメロディです。
TY:いい歌ですね。それに演奏がすばらしいです。父になった遠い日のことを思い出しながら、聴かせていただきました。
H:詞の中身から感じるのはほのぼのとやわらかく暖かいあかちゃん。しかし曲は度々ドラマチックに表現され過ぎてその柔らかさが伝わってこない。盛り上げようとするほどに同じような山が度々作られ、それが意に反して印象を薄れさせてしまうのではないだろうか。
F:いのちの喜び、いのちの力強さ、そのいのちをいとおしく思う気持ちを高らかに思いたっぷりに創られ歌われていて感動です。3つの部分からできていますが、最初のモチーフが自然で美しいので、2つ目のモチーフを使わず、最初のメロディを繰り返す形でその詩につけて、そこから「響き渡る〜」と最も感動的な部分へと入っていったら、全体がシンプルになり最後の部分がかなり生きてくるのではないか、と思いました。かとうさんのソロも素晴らしく、とても感動的な内容なで、みんなが歌えるような普遍性もありますから、そんなソングになれば、と思いました。
34 福原やす子<うた>P.26
I:作者と歌の出会いを感動を込めて書きあげています。抽象的、類型的な表現が気になります。
O:歌による自分史という印象。自分史から踏み出し、広く語りかけ問いかけるという「表現」にしていくために、もっと詩の構成を整理する必要があるように思われる。曲はそうした詩の性格もあって、テキストを見事に歌にしてはいるが、やはり未整理の部分を反映して、旋律がややくどくなっている箇所が散見される。
S:歌唱力と歌の表情がゆたかに「ただひたすらに」会場にひびきました。
TM:自分が今こうして歌っていられることへの感謝のうたでしょうか。詩がメロディに乗って身体の中にしみわたってくる感じです。
TY:余談ですが、どうして宮城(東北)の歌つくりの方々は、こんなに歌もうまいのでしょうか?佐々木さんもかとうさんも、そして福原さんも。この「うた」もいい歌ですね。「わたし」の思いを綴られた詩も、とても良くできていると思いました。
H:曲の盛り上がりが多くて全体がやや平板に感じてしまう。ここ一番に到る前の我慢が鍵になるのではないだろうか。
F:カンツォーネかミュージカルナンバーのような曲。自分の人生と歌への思いを巧みな作曲にのせて高らかに歌い上げていました。歌のうまい作者にぴったりの作品です。
I:瑞みずしさのあふれる歌詞です。「いつもはきにもとめない・・・・ぼくらをかけめぐる」オリジナリティーあふれる歌詞に引き込まれます。
O:曲のつくりがとても見事。ポップスの定型パターンを踏んではいるが、サビの部分がそれに流されないで独自の味を出しているところがいい。こうなると、詩の展開がややシンプルで、内容もごく一般的な表現にとどまっているところが惜しい。
S:メリハリのある、言葉のはっきりした歌唱。楽しんで歌っている。若者のエネルギーに圧倒されます。
TM:詩の着想がいいですね。使われた言葉もとても魅力的。「僕らの血潮は十数秒で ぼくらをかけめぐる」「まっさらの愛が次々に生まれ 今はじめてうたわれる歌がある」なんて新鮮で躍動感に満ちているのだろう。小林さんの素敵な曲に加え、みなさんの新鮮な演奏も素敵でした。
TY:爽やかで生き生きした良い歌ができましたね。私は、3から4の部分が一番のお気に入りです。演奏もすてきでしたが、一番大切な歌詞が聞き取れない、他の声部に消されてしまう箇所がありました。
H:エネルギッシュでとてもさわやかな印象。とくに「ぼくはさっきのぼくではない」というところが詞も音楽も新鮮で好感が持てる。
F:この集団の持ち味を十分に生かした詩と曲で、詩のもつ新鮮なエネルギーを瑞々しい作曲に仕上げていました。演奏もなかなかのもので、全国に広がるのではないでしょうか。
I:山元町の復興を願う感謝と希望を込めたメッセージソングです。「この町で」「生きてゆく」「もういちど」何度もリフレインされてテーマを深めていきます。この歌にこめた作者の意図は充分につたわります。今回災害復興をテーマとした曲が多く、その中で東北の自然を表現するのに「ひかる田んぼ」「小川のながれ」のような類型的な表現がよく見られました、もう一工夫欲しいなと思います。
O:旋律がとてものびやかな展開で親しみやすいものがあるが、サビに相当する「この町で〜」からの旋律がややくどくなっているのが惜しい。これは詩がそれまでのかなり具体的に「山元町」を描いた部分から、やや飛躍した形で「この町で/生きてゆく」というフレーズに結びつけているためと思われる。津波に襲われた町の再生を願う気持ちがさらに説得力あるものにするために、もうひと工夫必要と思われる。
S:張りのある歌唱と曲の力が元気を押してくれます。4行〜6行の節のある詩にしてもよいのでは、との魂力を感じました。
TM:地元の皆さんが創りうたうことがこんなにもエネルギーと説得力を持つ作品になるのだなあとあらためて感動しています。詩もよく吟味されたのでしょうね。「耳をすませば波の音が聞こえる」などは皆さんの決意がうかがえます。合唱編曲もよく練られていると思います。さいごのアカペラも聞く者をぐっと引きよせます。感動しました。
TY:初めて聴かせていただいた仙台でのうたごえの会の時から、ひときわ印象深い歌でした。「この町で」の部分(たとえば27小節、31小節、68小節など)は四部にせずにユニゾンでいいのかとも思いました。間奏部分の音つくりもすてきですね。最後のユニゾンも効果的です。ぜひ歌い続けてください。
H:故郷への厚い思いが「この町で生きている この町で生きてゆく」の繰り返しで強い思いとして伝わってくる。
F:ぼくの知っているバイオリニストも山元町とつながり支援コンサートなどをしています。町を愛し、みんなでこうした歌作りがされていることにまず大変感動します。そのうえに、歌がとてもいいです。「この町で生きていく」のゆったりとした魅力的なモチーフが素敵で、そこを軸に全体がよくまとまっていて歌いやすい歌に仕上がっていますね。合唱編曲の楽譜は、、24〜26小節はコードからすると改作したほうが良いと思います。また、62小節からの発展、転調もなかなかいいですが、65小節のコードはA7sus4でなく、Am かFでしょう。また、83小節目からのバスの長く伸ばす音はずっとFがよいと思います。細かいことを書きましたが、とっても素敵な曲であることは間違いないです。
I:一瞬で八月の夕方に聞き手を連れて行ってくれる、秀逸な歌詞です。ひぐらしの声は切なさがただよいます。カナカナ・・・というひぐらしの声をメロディーで表現するのも、歌うのも難しいなと思いました。
O:「カナカナカナカナ〜」のところが面白い。曲自体はある種のシンプルさが徹底していて、そのために、この「カナカナ〜」が効果を発揮しているが、詩の内容はもっと踏み込んだ表現が欲しい。
S:カナカナの響きが今も胸にくりかえされます。いのちとして生きることへの慈しみが心を耕してくれます。情景が浮かぶ世界ですね。
TM:蔵王の講習会で生まれたうたが、より練り込まれてオリコンに持ち込まれました。今回のオリコンの特徴ですね。この歌も小林さんのアレンジで進化しての登場ですね。悲しげな曲調がひぐらしの鳴き声となって響きました。
TY:この詩はいい詩ですね。その詩にふさわしいメロディがつきました。カナカナの部分が特に秀逸で印象的です。
H:心の悲しさが切なく伝わってくる抒情にあふれた曲。「カナカナ‥」がちょっと長くてくどく感じてしまった。
F:蔵王創作講習会で佐々木淑子さんの印象的な詩に、映画のテーマソングのような佐々木伸介さんの叙情的なメロディがつき、練られて発表されました。一番の聞かせどころはやはり「カナカナ・・」ですが、その前の部分からの延長上という感じで、もうひとつここが、グッと心をつかむなにかを持ったら最高ですね。
I:今回のオリコン唯一の若年労働者をテーマにした曲でした。若い人が歌っていたのでより切実さが伝わりました。前半の雇用をめぐる厳しい状況から、一転して「後半の大丈夫・・・輝かしい社会をつくろうよ、」という飛躍が唐突です。まだまだ厳しい情勢、一歩前進しても三歩くらい後退しなければいけない時代です。前半の歌詞に心寄せていた人が引いてしまうかも。きれいな結論をあせって書く必要はないです。
O:前半のソロ部分、詩も曲もとても良い。特に詩の内容が(歌う曲としてもう少し詩句を整理する必要があると思うが−例えば「課外活動もがんばってきた」の「も」を取り、7−7のリズムにそろえるとか)とても率直で、時代と社会をよく映し出した内容になっている。ところが合唱の部分になると、とたんに楽天的な響きで、「大丈夫、あなたはわるくない」と、根拠のない肯定フレーズになってしまう。これではせっかく現実を反映した前半部分のストレートな訴えが弱まってしまう。この点が大きな問題点。
S:「だいじょうぶ、あなたはわるくない」当事者責任、自己否定感に襲われる若者への励ましに満ちています。若い人が歌う当事者性が胸を揺さぶります。
TM:ソロのお二人の歌は心に響きました。私事で恐縮ですが、今春息子と娘を社会に送り出した父親としては、辛く苦しい就活を乗り切った二人がこの歌にダブります。二番の歌詞のようなことが今起こっていないかと気にもなります。ブルースとついているからかどうかはわかりませんが、3段目の「不採用通知〜」のくだりのコードがB♭−Aとなっていますが、素直にG−A7でよかったのではないかと思います。後半部分は講評委員会でもいろいろと意見が出されました。8小節で「かがやける社会を作ろうよ」まで持っていくのはちょっと無理があるかもしれませんね。場合によっては前半の部分に重きを置いて若者たちの状況を伝えるというようなことだけでもいいのかもしれません。改作に期待します。
TY:身近なテーマがいい歌になりました。お二人のソロもすばらしかったです。「不採用通知」のBbのコードがうまいです。大丈夫からの後半ですが、初めて聴いたときは、打ちひしがれている若者の世界から「輝ける社会」までが少し性急すぎる感がしましたが、今録音を繰り返し聴き、それでもいいのかなと思い始めています。
H:身につまされる現実をよく浮き彫りにしている。後半の合唱から突然楽天的になって、やや浅く感じるところもあるが、勇気づけたい思いがあふれていて、これで良いようにも思う。6小節目終わり「やっと受けれた面接しけ『ん』」の和音(D7)はやや違和感を感じる。
F:いま、求められている歌に挑戦でした。ぼくもブラック企業のこと、なんとかして歌えるものを、と思っています。前半をもう少ししんみりさせない形にしてそこでこそリアルな現実を表現してほしいと思います。「だいじょうぶ〜」から先は、大人から安心させることばをかけるのではなく、こうした現実に立ち向かう若者のメッセージを入れたらどうでしょうか。すごく、期待しています。
<歌うことしかできない>P.73
I:人の死に際した、若い作者の真摯な気持ちが全編から伝わります。「あなた」がどんな人だったのか、元気な時の様子を書いて欲しいです。あなたの姿が伝わり、私たちも悲しみを共有できます。
O:別離の歌として、詩はとてもよくまとまっていて、実感のこもった響きが行間から感じ取れる。曲は8分の12拍子で作曲してあるが、このリズムが全体としてややくどい印象をもたらしている。加えてフレーズ冒頭の音程跳躍の幅がかなり広く(6度、5度等)、メロディラインがややギクシャクした印象となっている。それが惜しい。
S:老齢のいのち、最期にむかいつづける人への「もっと何かしてあげたい」の真情がまっすぐに届いてきます。理屈っぽくなく立ち上がっているところに好感。現場の人の動き(労働)も描写されるといいですね。
TM:やさしい詩やさしいメロディの中からも介護や医療の現場の様子がうかがえますね。「うたうことしかできない」なんていうことはなかったはず。お話をしたり、足をさすったり、そばにいてあげるというようなことがあったはず。そしてこんな素敵なうたができたことを誇りに思いましょう。
TY:香りの高い名曲だと思います。私はこの歌大好きです。特に「あなたがわらうただそれだけで」の部分の色あい、そしてなんと言っても、「なにも、なにもなにもできない〜」の部分が最高です。ただ、「もっと」が、「もおと」に聞こえてしまうので、(私も苦労していますが)「っ」をどう処理するかが課題かもしれません。「話をしたかった」に「っ」は非常にうまいです。
H:とても優しさにあふれた詞。編曲も素晴らしい。メロディーにあと少し盛り上がりが欲しい。
F:働く介護の現場での思い、亡くなろうとしている人へ寄せる優しさ、辛さがしっかり伝わってきます。曲としてもよくできていて、しみじみと感動を持って聴かせます。「歌うことしかできない」というタイトルで、まさにそう思って書いておられるのですが、想いを寄せられたこの方は、こんなふうに思ってもらえて大変幸せですね。最後は「歌うことしかできない」と否定形で終わらないほうがいいでしょう。
I:原作をもとに作詞をした作品。花に託した故郷への思いが伝わってきます、心に届く秀作です。花にこだわって書いたのは成功です。表現するものが多いと求心力が希薄になります。私も10月末に福島、南相馬、飯館村、浪江町を訪問しましたが、この歌詞のとおりでした。田んぼにはセイタカアワダチソウが咲き乱れ、陸に上がった船がまるで黄色い海に浮かんでいるようでした。
O:曲の展開が平板で、もっと起伏のある旋律展開にしていく必要があると思われる。タイトルで表明した内容が、もっと率直な歌い手側の思いとして詩も曲も表明していく必要があるのでは?
S:スミレのはな、はるしおんのはなに託したフクシマへの愛を伝えてくれます。少人数ですが、目を閉じると大きなスケールに吸い込まれます。「フクシマ」と片仮名にした題名にも意味があるに違いありません。
TM:花に託して、切々と淡々とフクシマの春をうたう。心に響きますね。最後の「ゆれている 人も緑も 私のフクシマ 思う」にちょっとドキッとするのは、深読みしすぎでしょうか。
TY:この歌のテーマや詩には深い余韻があって、とても良いのですが、まだ曲が(演奏も)熟成していない感じで、少々残念でした。たとえば「セイタカアワダチソウ」を歌にするのはとても難しいです。(逆に考えると、うまく歌になれば面白い)長すぎるのですね。全体の構成をもう一度吟味し、曲を練り直すと、もっといい歌になりそうです。
H:詞にこめられた思いがあふれている。ただ、フレーズがわかりにくい。曲・詞共にもう少し短く1番・2番‥と整理してはどうだろうか。
F:蔵王創作講習会からいろんないい歌が生まれていました。人のいなくなった地にセイタカアワダチソウがゆれる、そんな福島に思いをはせて歌われるこの歌の内容と曲がぴったりと合っていて、そのまま素直に心にすうっと入ってきます。
I:「新富座」に大きなエールをおくる歌です、テーマがいいです。小さな映画館が町の人々に愛され、誇りになっていることが伝わります。タイトルもいいです、上手い。しかし、まじめに新富座の歴史を語るだけでは少しもの足りませんね、上映された映画の話などを加えてほしいです、映画「ニューシネマパラダイス」に漂うような雰囲気が感じられたら最高です。
O:リフレインに「夢の続きをみて行きたい」とあるが、ではその「夢」とは何か、がこの曲のなかで具体的に語られていたら、歌としてもっとリアルに迫ってくると思う。詩そのものがやはりごく一般的な表層を語っているだけなので、曲もそのコトバに音を付けただけ、という印象であるのが残念。
S:文化が廃れていく、かけがえのない新富座。存続という前向きな人とのつながりが土壌となって生まれた実感のこもった創作です。ねがいのあるところに文化がある、運動のあるところに歌が生まれる。
TM:こんな歌が日本中にたくさんできるともっと文化を身近に感じられるのかもしれませんね。「芝居小屋から〜」と「伊勢の小さな〜」と「祖母の思いを〜」が同じメロディで動くのは少し単調な感じがします。「伊勢の小さな〜」は別のメロディで動いてはどうでしょう。ギターコードとハーモニーのチェックを。
TY:この歌のように、テーマや目的がはっきりしているのはいいことですね。支配人さん喜ばれたことでしょう。最後の「夢のつづきを」は、一度だけではなく、2回、3回と繰り返したい気もしました。譜例6 あくまで「たとえば」ですが。
H:地域の文化を支えてきた古い劇場に寄せる愛を感じる。一度訪れてみたくなる。曲のまとまりと言う点で終わりの4小節「今日も文化を届けます」のフレーズを繰り返して歌ってみてはどうだろうか。
F:この小さな映画館「新富座」の応援歌は、日本中のこうした映画館全体への応援歌でもありますから、まずこの歌をつくられたことに大きなエールをおくります。解説のコメントがとってもいいですね。曲は、まず、「伊勢の〜」を「守り続け〜」と同じ出だしのメロディにしたり、「辛い戦争〜」のところは、同じ部分をもう一度繰り返す形にして、その前の部分とのバランスをよくしたほうが落ち着くと思います。映画館のひとつの歴史を語っていくドラマチックな内容ですから、聞かせる歌作りは大事だと思います。最後の「劇場は町からの預かりもの」というキーワードも、前半のサビのメロディを生かそうとしていますが、途中から変わってしまいます。同じメロディを生かす形で改作したほうがひとつの曲としてのまとまりが出るのでは、と思います。ぼくなら、こうしたいというのはあるのですが、・・・。
I:瑞々しい歌詞です。きらりと光る言葉がちりばめられています「しかくいかべをこころにかいて」「ほしもなでて」等、しかしいささか冗漫です。聞き手に何を伝えたいのかを明確にすることが大切です。
O:曲の展開がダラダラとしていて、メリハリがない。原因はA,B,Cという3つの主題が8分音符を主体とした似通ったものになっているためで、もっとコントラストを付けていく必要がある。これは作曲の側の課題でもあるが、もう一面としては、やはりこの詩が表現しようとしているものが、あいまいなところにも責任があると思う。
S:人生を「ぼく」の目でさわやかに前向きにとらえ、「かぜ」に託したちいさな哲学に共感しました。励まされました。
TM:アコ伴奏が効いていますね。デュエットもいいですが合唱でも聞いてみたい曲です。「ぼくの言葉が 君に届けば 何かが変わるかな」ということは、そこに何かを変えたい君がいるということですよね。共感します。
TY:面白い雰囲気の歌だなと、感心しながら聴いていました。特に53、54小節、「僕らも風に、ただようままに」のメロディが好きです。17小節18小節の部分だけが2部になるのですが、なぜここだけなのか疑問は残ります。他にも2人で歌う部分があってもいいのではないでしょうか?
H:演奏を聞いただけでは歌詞もメロディーもよくわからなかった。詞も曲もこんなに優しい思いのあふれた歌なのだから、その思いをもっと伝わるように歌ってほしい。”
F:新鮮な衝撃、という感じです。アコだけでのデュエット、飾らない魅力、メロディと詩のオリジナリティがあり、惹きつけられます。テレビドラマの挿入歌かテーマソングのような雰囲気もありますね。全体の構成ですが、「うつむき〜」のAメロと、「飼育小屋〜」のBメロに、さらに「風は〜」のCメロ(これが印象的なサビ)でできていますが、ちょっとまとまりきらない感じです。あいまいな雰囲気がいいのかもしれませんが、Bメロを使わず、AメロのままBメロ部分もいって、そのあとで「風は〜」といけば、最後はとっても新鮮なイメージになると思うのですが、どうでしょう?
42 しゅ♪しゅ♪&さかちゃん<水芭蕉>P.101
I:生きる決意、思いを水芭蕉の気高い白い姿にたくして、シンプルに上手にまとめています。「両手をあわせて祈る天使」水芭蕉の姿を見事に表現しています。
O:当日の演奏で、ピアノ伴奏の音量が歌い手よりもはるかに大きかったため、ややうるさく感じられたが、曲自体はとても良い。詩はもう少し整理が必要なところもあるが、「もっと〜生きて行きたいから」というフレーズが、歌い手の主張としてストレートに伝わってくる曲のつくりになっていて、シンプルだが味のある歌になっている。
S:安定した曲にゆっくりと味わうことができます。姿と動きが印象的に浮かんでいきます。曲と詩の相性がいいですね。
TM:水芭蕉のイメージが曲調にぴったりですね。9小節目からのサビへの導入の6小節が、印象的なサビの「もっとやさしく〜」の部分に、もっと高まりながら、もっとわくわくしながらつながっていきたい気がします。
TY:3行目の水芭蕉の繰り返しのメロディが特に印象的です。全体の構成を見ると、前半が同じような音型で、少し「もさもさ」している感じがしていましたが、「もっとやさしく生きてゆきたい」の準備と考えれば、悪くはない気がしてきました。ただ、「からー」で4拍伸ばす音の和音がDなのはどうでしょうか?やや平板になるので、他の可能性もあるかもしれません。
H:しっとりと心にしみる歌。後半の盛り上がり「もっとやさしく生きて行きたいから」のところはすぐに下がらずにもうちょっと盛り上がったままで聞いていたいと思う
F:静かな凛とした雰囲気の情景を、そのままに静かに歌い上げています。中間部の「あなたの心の優しさを私に下さい」がやや行き場を失い迷っていますので、もったいない、と感じます。ずっとEmやEの音の付近をさまよっていますので、単調に聞こえるのでしょう。
43 サンシャイン シスターズと仲間達<サンシャイン シスターズ>P.96
I:ユーモアのセンス抜群の傑作です。これぞ大阪のエスプリ! 三人姉妹が書いたので実にリアルです。「少ない年金工夫して・・・・」の連がとりわけ面白いです。時代の風をしっかりつかんでいます。矢沢の永ちゃんが女性にも受けるのを初めて知りました(おっさんや、にいちゃんが追っかけてるとばかり思ってました)。次作を期待してます。
O:曲も詩も実感と諷刺と自嘲が見事に融合していて、痛快な味の快作。演奏も、特にピアノ伴奏の見事なサポートがあって、聴いていて楽しい舞台になっていた。こうしたスタイルの歌がもっとたくさん生まれても良いと思う。
S:弾むリズム、踊り。活気あふれる歌唱。楽しく歌う姿。三姉妹に拍手。
TM:好きです、この感じ。作詞がサンシャインシスターズなんですね。3人の会話の中からこの詩が生まれた場面を想像するだけで楽しくなってきます。この歌にとどまらず、世の中のいろんなデタラメなことを大阪のおばちゃんののりと突っ込みでうたい飛ばしていってほしいです。来年もみたいなあ。
TY:今ひとつ練習不足な感じもしましたが、楽しい演奏でした。メロディがしゃれていてすてきですが、歌詞も良くできています。
H:詞も曲も歌も面白い!楽しくて最高!
F:「遅咲きでデビューの三姉妹」ブラボーです。詩も曲も演奏も傑作です。「涙は笑顔の光る道」「みんな私色の財産」「わくわく恋して どきどき愛して」などの表現と演じる楽しさがあいまって、エンターテインメントとしても大成功。どんどん創り歌ってほしいと期待しています。
44 和泉市職労うたごえサークルひこうき雲<人として>P.102
I:シンプルで力強い歌詞です。大阪市職労原告55人の憤りが伝わってきます。「ぎりぎり」という表現が少し落ち着かなかったのですが、歌を聞くと気になりませんでした。多くの言葉を尽くすよりも、ぎりぎりのと一言で表現したほうがよく分かります。
O:闘いのなかで生まれた曲として、ストレートに迫ってくるものがある。詩の前半部分の旋律がとてもいい。サビにあたる部分の「人としててゆずれないものがある」が、これは当日の演奏にもよるが、もう少し変化のある旋律になっていると、さらに印象が強くなると思われる。つまり、この曲全体が8分音符を主体とした旋律に終始しており、音価の拡大や音域の広がりをつけていく必要もあるのではないか。
S:力強い情感に魅了されました。くり返しが重層的に情感を高めてゆきます。
TM:短いフレーズにもかかわらず、いろんな光景が目に浮かびます。詩の力がすごいとあらためて思わされます。同時に共感とともに一緒に歌いたいと思わせるメロディ。演奏が終わった時、ぐっと握っていた拳をほどき、連帯の拍手を贈りました。
TY:歌いやすく自然で、よくできているいい歌だと思います。演奏も良かった。高田音楽の魅力が溢れていて心に残るメロディですね。
H:飾らない真っ直ぐな言葉が心に深く伝わってくる。思をこめて歌える素晴らしい歌F:We
shall overcome とだぶらせて、広がりのある発想があります。決してこぶしを振り上げるのではなく、暖かく市民と共に大きな協同をつくるための手をつなぐ歌になっていると思います。ほんとの強さを表していますね。
45 バカボンズ&花ふるバンド&大阪府庁うたごえ&東大阪市役所うたごえサークル<For You>P.94
I:軽快なリズムの楽しい歌ですね。このようなノリの曲には、引っ掛かりのある言葉、こだわる言葉はなじまないのかもしれませんね。人と人のつながりの中で育んできたものを、単純なフレーズを繰り返し効果的に伝えています。
O:さまざまな楽器も加わって、賑やかな演奏の舞台となった曲。この曲で一番印象に残るのはリフレインの「人と知り合い/人と語りあい〜」のところ。元気にあふれた曲。そこまでの音楽が、やや一筆書きのような、区切りの弱いメロディラインになっていたのが惜しまれる。
S:間奏が演奏をぶ厚くしていますね。市民の中にうたごえがさらに愛される活動が、この曲の迫力を支えているのでしょうね。結成40周年の年輪が演奏に込められていました。
TM:ずーっと歌い続けてきたことの集大成がこの歌なんだということがよくわかります。楽しくてあったかくて元気が出ますね。ジャズの演奏も素敵でした。
TY:歌に華があり、伸びやかで爽やかで、人を引き込む力のあるいい歌です。間奏も工夫されていて楽しい演奏でした。もう一度聴きたい、私も歌いたい歌です。
H:明るく陽気で優しく心を包んでくれる素敵な曲。くりかえし(※)に入る前の伸ばし方がちょっとひっかかるのだけれど‥。
F:楽しいバンドとヒットメドレーでいっそう盛り上がりました。人と人のつながりが生きる原点、いい歌だと思います。ただ、1の「時の流れ〜」ではじまるメロディに、すぐ2の「歩けなく〜」のメロディがきて次に3にまた違う動きがきて、ちょっとまとまりがなくもったいない、と思います。4の「人と知り合い〜」からが一番いいところなので、そこまでできるだけ1のモチーフを大事にした構成にすると散漫な感じがなくなり、ひきしまってくるのではないでしょうか。
I:清涼感ある歌詞です。この町とは、私たちがそれぞれに暮らす町なのかもしれないですね。そんなイマジネーションをかきたてる歌詞です。「なにもない町」と謙遜しないで、町の姿を書いて欲しいです。
O:フォークソングのスタイルによる合唱での演奏はかなり迫力があった。曲自体はそうしたスタイルの特徴を活かした、軽快で率直な呼びかけにあふれているが、詩の内容がきわめて一般的で、どこの町でもいいわけで、歌い手や作り手の個性的な表情が見えてこない。「この町が好き」という詩句が根拠のない断定になっているわけで、もっと具体的な内容を表現する必要があると思われる。
S:軽快で「子どもたちが人間らしく生きていくために」。主権在民。声のひびきがやさしく会場に満ちました。「わたしたちの町をつくろう」ひろがりのあるテーマですね。
TM:たのしい!洗練された演奏と歌唱ですぐ一緒に口ずさみたくなる歌ですね。間奏もいいですね。イベントなんかでは短いおしゃべりも入れられそうですね。
TY:よくまとまっていて、親しみやすいいい歌ですね。歌も演奏もすばらしいです。ただ、このテーマは各地にたくさんあるので、もっと大阪の「わたしのまち」ならではのものが登場してもいいのかな、とも思いました。
H:軽快でさわやかな曲。歌詞がやや一般的な印象。
F:歌いやすくまとまりのある素敵な曲です。愛唱され続けている理由がわかります。
47 愛知子どもの幸せと平和を願う合唱団+親と子のみどりの杜合唱団<あのふるさとを>P.78
I:こわれてしまった故郷によせる痛切な思いを表現した、とても分かりやすく、共感できる歌詞ですね。ミュージカルの劇中歌として存在感のある作品です。
O:ノンちゃん役の好演もあり、印象の強い舞台となった曲。ミュージカルのなかの1曲で、ソロと合唱との組み合わせで展開されており、立体的な構造を感じさせる。テキストが叙述的なスタイルであるため、曲自体もそれに沿った形になっているが、もう少し余韻を感じさせる部分があっても良かったように思われた。こうした曲はやはり舞台で全体を通して聴いてみる必要があると思う。
S:つよいメッセージが歌唱の磨かれた演奏。子どもの直接語法に共感しました。
TM:難しいテーマを大人も子供も共感できる舞台に作られた皆さんに敬意を表します。公演成功おめでとうございます。女の子のソロ、とても素敵でした。
TY:前半の描写、後半51小節からの美しいメロディ、76小節からは、それが今は届かない場所に行ってしまっていることの悲しみと訴え、すべての部分が丁寧に、音楽的にも良く作られていて、すばらしい作品だと思います。子どもたちの演奏もとても良かったです。ブラボーです。
H:「降るような星空」と展開していくところが素晴らしい。
F:作者につき略
48 愛知子どもの幸せと平和を願う合唱団+親と子のみどりの杜合唱団<いちばん大切なもの>P.84
I:エンディングテーマのこの作品は、単独でも歌い広まる力を備えた完成度の高い作品です。シンプルであるが故に大切なことをしっかり伝えてくれる作です。2番の「おふろで歌う父さんのへたな歌が好きです」は泣かせます。福島の原発事故の問題を、スピーディーに分かりやすく伝えてくれる。何より出演者が楽しく演奏しているのは受けての側も楽しくなります。ミュージカル仕立てという一つの可能性を示唆していると思います。
O:フジムラ・アレグロというべき軽快なリズムに乗って展開される曲だが、その軽快さのなかに詩のなかみがやや埋没しているような印象を受ける。「あるふるさとを」でも書いたように、ミュージカルの中の曲は、やはり本来的にはその舞台全体を通して聴く必要があるわけだが、こうしたリズミカルな曲の場合、演奏する側がそのリズムの心地よさに安住しないことが必要ではないか。
S:勢いのある曲に全身から歌う圧倒的な歌の持つ力を感じました。
TM:この演奏を聴いただけでいちばん大切なものを守るためにはやっぱり原発はいらないよね、ということが想像できます。うたっている皆さんの表情や姿勢も十分な説得力がありました。今私はこのミュージカルを観たいという思いに駆られています。
TY:あたりまえのことがどれだけ幸せだったのかを、心に深く刻まされる歌です。よくできています。このミュージカルをぜひ見たいと思います。
H:明るくて軽快で良いのだけれど、内容や詞を考えたとき、ピアノ伴奏のリズムがあまりに楽天的過ぎはしないだろうか。
F:作者につき略
49 脇谷直樹+愛知のうたごえ<明日の天気を話すように>P.77
I:作詞者本人のため講評なし
O:日常の暮らしという視点から浮かび上がるかけがえのないものが、優しく語られている詩だが、前半の曲の展開がややくどい。サビの部分の旋律展開はとても自然で、特にコーラスの響きとあいまって豊かな広がりを感じさせるが、リフレインの旋律が同音反復的動機になっていてやや平板。この部分がもっと印象的なエンディングになると、曲全体がぐっと引き締まると思われる。
S:平凡な暮らしの中にある人の心と心の触れあい、ふりかぶったスローガンよりも優しく強いもの。静かな身近な、ついつい忘れがちなことへの新鮮な切り口を見ました。すばらしい歌唱。
TM:明日の天気をはなすように淡々とした曲調を意識されたのだと思いますが、逆にそのことが異質な雰囲気を感じさせる結果になってしまっています。サビの「だから話そうよ〜話そうよ」素敵なメロディなのに、最後の「明日の天気を(F)話すよう(C#)に」でソングでなくなってしまっているような気がします。
TY:独特の余韻の残る作品で、私も参考になりました。F→C#→Cの動きがなかなかすてきですね。2カッコからの突然のEbの登場もおもしろいです。「あたりまえ」という歌詞なのに、音はあたりまえではないのですね。終わり方も印象深いです。
H:後半の「だから話そうよ」からがとてもステキだ。終わりの方「あたりまえの暮らしの中で」のところ、もっと普通っぽくても良いのではないか。今使われている和音とメロディーで行きたいならその後にもっと奇抜な展開が欲しい。
F:前半の詩を読むと、ぼくが感じるメロディはもう少し動きの少ないものです。「だから・・・」からはこの曲にぴったりだと思います。タイトルでもある「明日の天気を話すように」のコード、工夫しています。動きが少ない分、いろんなことを感じさせるような含みのある表現になっています。
I:素直で生命力のあふれる歌詞です。よくまとまった秀逸な作品です。1、2番と展開して3番でどんなきれいな花が咲くかと思ったら、キュウリがなったという意外性が新鮮でした。どんな種なのかふれたらもっと楽しくなりそうですね。(例:ゴマみたいに黒くてちっちゃい。鼻息で飛ばされそう 等)
O:曲がとてもシンプルで、とても味があっていい歌。特に冒頭の「種をいっぱい/まきました」の旋律がいい。詩が童謡のような優しさとワクワク感があって、それを曲が見事に描き出していて、とてもいい。こうした曲の作りをもっと参考にする必要があると思われる。
S:まっすぐにテーマにむかう「種」。希望と可能性に寄せる。ここには「待つ」時間がある。
TM:楽しいです。男声が「出てきた〜」と出てくるところ、「やったあ!!」の歓声なんかもいいですね。「ワクワク」「そわそわ」「ルンルンルン」は本当に気持ちを表していますよね。効果的なフレーズだと思います。
TY:かわいらしくて、すてきな歌ができましたね。メロディのつけ方も、ことばにぴったりです。休みなく「でてきたー」とすぐに出てくるところは、芽が顔を出した感じが良く現れています。芽が出てきたキューリの種がどんどん伸びて行く歌も、今度はぜひ作ってください。伴奏・アレンジもすてきでした。
H:親しみやすい軽い歌だが生命を感じさせてくれる歌。「出てきた 出てきた」と言うフレーズと言葉が面白い。
F:明るくリズミカルな歌いだしは素敵です。1回目のワクワク、ソワソワ、ルンルンといった擬音に対するメロディはこの曲の中のチャーミングなポイントになる部分なので、楽しくなる工夫があるといいですね。また、「かおだした」から「でてきたよ」の始まりが大変窮屈につながっていることは、とってももったいないと思います。「かおだした」で余裕のある終止形にもっていって、あらためて「でてきたよ」から印象的なサビの部分として盛り上げるか、なにか工夫がいると思います。二回目に出てくるワクワク、・・・なども間延びしてしまっているので、このできた段階ではもうワクワクではなく、違った言葉のほうがいいのでは、と思います。いかがでしょうか?
I:年輪を刻んできた人でなければ書けない、味のある歌詞です。「ほどほどなんとか生きてきた」サラリと心憎い歌詞です。3番「たとえ曲がった〜前が見えればそれでいい」の部分は若干歌詞がわかりづらいです。「夜道で曲がっていて行く手をはばんでいたら前は見えんぞ」と理屈屋の私は考えてしまいます。
O:曲のスタイルが演歌風で、そのパターンを踏襲して曲が展開されているが、こうなると詩の内容が説得力のなるものかどうかがカギとなる。その点、タイトルにある「人間すてたもんじゃない」がややこじつけ感を感じさせる詩の内容であるのが残念である。
S:「今日の自分に出会う」-素敵な言葉に”発見”“共感”しました。ちっとも威高ぶらず人生を照射する姿勢に熟年の味をみました。
TM:この雰囲気大好きです。「「たかが歌さ」とうそぶいて そっと涙をかくし 昨日の重石をときはなつ」このフレーズにはしびれます。演歌調の歌のこぶしの回し具合など、合唱にするときになかなか大変ですよね。歌詞付けなんかも大変だったりしますが、1番と2番がちょっとメロディが違ったり歌詞割りが違ったりするのはこの種の歌の場合あることなので、注釈を付けたりしておくといいと思います。最後の「いくつかの風をこえて 今日の自分に出会う」泣けます!
TY:いいテーマでいい雰囲気の歌で、パーツを取り出すとどこも魅力的なのですが、全体を見ると今ひとつ印象が薄いのはなぜなのだろうかと考えてみました。たとえば、最初の「いくつかの」「いくつかの」「きょうの」のメロディが3回とも同じ音で、同じ和音なのはどうでしょうか?たとえばこんなことも考えられるかと思いました。(譜例7)
H:人生を感じさせてくれる味わいのある歌。3小節目・4小節目に少し変化が欲しい。
F:年の功、味わい深い歌でした。出だしがなかなか粋です。歌のタイトルである「人間すてたもんじゃない」という最後の部分がほんとはクライマックスになってほしいと思いましたので、もう少し詩とメロディの関係を整理するともっと詩の中身がストレートに入ってくる歌になると思います。
52 名古屋青年合唱団うたの学校86期有志<夕焼け錦>P.87
I:情緒に富んだ歌詞です。シンプルな言葉で豊饒な世界を表現しています。1番の最後、「星があちこち浮いていた」うまい!の一言です。真っ赤っか、という言葉も味がある言葉ですね。
O:“ゆうひがまっかっか”のリズムと旋律が素敵。これが事実上リフレインの役割を果たしており、そのあとの旋律を余韻深い響きに誘っている。旋律は5音音階ふうに展開されていて、哀感一辺倒でないのがいい。印象深い曲。
S:4行詩「夕焼け錦」は時間(夕刻)と情景を的確に切り取っています。くり返しがわずらわしくなく情感を高めています。
TM:縦書きの歌詞を見るだけでが夕焼けとともに歌が迫ってくるようです。それと「硝子」とか「叢雲」とか「軈て」など普段あまり使わない漢字が使われているところもなんかノスタルジックなものを感じさせますね。
TY:遠い昔の子どもだった時代を思い出すような、薫り高い詩にぴったりの、しっとりしたメロディがついている良い作品だと思いました。よくまとまっています。
H:日本的な情緒、わびさびを感じさせてくれるよく練られた曲。中山晋平の作品を思わせる。「まっかっか」のところが特に印象的。
F:いい歌ですね。知りませんでした。美しい光景と懐かしい旋律、フレーズの処理などプロ並みの出来栄えだと思います。広くみなさんに歌ってもらえるような唱歌になると思います。1つの楽譜で1〜3番まで書いた形にして前奏なども簡単に書いたら見やすくなって広がるのではないでしょうか?
53 名古屋青年合唱団+愛知のうたごえ<ジュゴンは歌う>P.85
I: simple is bestのお手本のような歌詞です。分かりやすく、力強い歌詞でひきつけられます。作詞の永井さんは北海道にお住いの方と聞きました、まさに海はつながり、ただひとつの地球に思いを寄せた歌です。
O:イントロで歌われるリフレインのパッセージがシンプルでとてもいい。メインの旋律の音域が比較的狭い範囲で展開されていて、もう少し広がりのある旋律になっていたほうがよいのでは、と思われた。詩はシンプルで明快で、よく伝わってくるものがある。
S:「美らうみ」の節までのジュゴンの姿態が浮かぶ。「返せ沖縄」を思い出しました。闘いを励ます愛唱歌ですね。
TM:同じフレーズが何度も繰り返されることはともすると飽きてくるのですが、この歌は広がりになってくる心地よさがあります。その広がりが共感に変わりまたさらに広がりを作ります。肩組んでうたいたい歌ですね。(そういえば最近肩組んでうたうことがなくなったなあ)
TY:歌の意味と主張がはっきりしていて、一回聴いたら忘れられないような印象深い歌です。後半の繰り返しの部分は覚えやすいですし、広くあちこちで歌いたいですね。
H:主張のはっきりしたわかりやすい歌。
F:作者につき略
54 名古屋青年合唱団+愛知のうたごえ+原田義雄<夢をまく>P.88
I:作詞者本人のため講評なし
O:リズミカルで元気あふれる歌。曲本体も素敵だが、Sing
Out での前奏と後奏が大きな盛り上がりを創りだしていて素晴らしい曲の力を感じさせた。
S:「いろとりどりにひらきますように」-この「いろとりどり」に好感をもちます。どれも同じ色、同調化しないと不安、という傾向がありますからね。弾むメロディ、明るい声々、まさに「いろとりどり」です。
TM:詩のイメージと曲がぴったりの名曲です。すぐ口ずさめそうな歌ですね。最後の「いろとりどりに〜」の「りに〜」のところがちょっと覚えづらいでしょうか。もうちょっと上の音域でもよかったかなあと思いますが趣味の範囲です。愛知祭典の大合唱が楽しみです。
TY:歌いやすくて、品があって、力があって、希望に溢れている良い歌です。最高音がC#ですが、一箇所、たとえば「大きく」とか、「いろとりどり」のあたりで、EかD#まで上がってもいいような気がします。蛇足ですが。
H:出演につきパス
F:シンプルでリズムのある歌詞が、生き生きとした力のある歌を引き出したと思います。ヒットメーカーのお二人らしい作品でした。
55 山口直子<絵手紙物語>P.122
I:好感度の高い作品です。しかしいささか説明的なのが気になります(2、3番の出だしの部分等)。聞き手の頭の中に幾枚もの絵手紙が広がっていくことをイメージして欲しいです、えっ、わかりにくい?「花や果物」と書くのではなく「つやつやのナスビ」「今朝咲いた朝顔」など具体的イメージを深められる表現にすることです。心の扉が全開することなどは書かなくて伝わります。聞き手のイマジネーションの力を信頼してください。
O:旋律の展開がとても自然で、当日の演奏もなかなかよく、印象に残った曲。特にサビの部分の旋律の最初のフレーズが大きな広がりを感じさせるもので、とてもいいが、そのあとがややしぼんでしまう。これは詩の展開がやや狭く、「絵手紙」につながるものが十分に表現されてないからだと思われる。
S:「たまねぎ」「花や果物」などモノが語る。「それは私の心に出し続けた絵手紙」と抽象的でなく、一、二、三、と発展してゆく。構成の妙を感じました。
TM:あったかいメロディが耳に届き、次に詩に集中してみる。すると「描き始めたたまねぎ」とか「心の扉がちょっと開いて母の言葉が届いた」、そして「ゆっくりご覧ください私の絵手紙」で結ばれる。飾らない言葉が心地よく身体に入ってきます。
TY:よくまとまっているだけではなく、訴える力と気品のあるいい歌です。まず、「思いこめて」「描き上げた」のメロディの繰り返しがうまい!と思いました。繰り返すことで胸に迫るものが生まれています。贈られた方はきっと喜ばれたことでしょう。
H:筆者は絵手紙のことを詳しく知らないのだけれど、こんな思いで書かれるんだと、よく伝わる歌だった。F:優しく心のこもったメロディで全体の構成もよくできています。「母の・・」からのメロディが特に印象深くうまくできていますので、最後にもう一度そこをききたいと思いました。